「SailGPは“海のF1”。スピードと 自然の脅威に打ち勝つウェアが必要です」(セーリング選手・笠谷勇希)

text: Kai Tokuhara photo: Yuichi Sugita illustration: Shinji Abe

初出『Tarzan』No.777・2019年11月28日発売

ヨットレースといえば五輪のセーリング競技や1851年から4年に一度開催されている(五輪やサッカーW杯よりも古い)伝統のアメリカズカップが最高峰の舞台として有名だが、2019年から6か国対抗による新たなチャンピオンシップ『SailGP』が開始。その初年度をオーストラリアに次ぐ総合2位で終えた日本チームのクルーの一人が笠谷勇希選手だ。

笠谷勇希(かさたに・ゆうき)
笠谷勇希(かさたに・ゆうき)/1989年、大阪府生まれ。一橋大学ボート部出身。ソフトバンク・チームジャパンで第35回アメリカズカップに出場した後、今年からSailGP日本チームのクルーとして活躍中。

ヨットレースにおけるギアというとライフベストなどが思い浮かぶが、彼はこの〈ザイク〉というオーストラリアメーカーのウェットスーツとウィンドブレーカーを特に重要視している。

セーリング選手・笠谷勇希
2004年アテネ五輪直前に設立された〈ザイク〉は今や多くの五輪アスリートやトップセーラーたちが愛用。ウェットスーツは厚みがありながらも軽く、肌なじみが非常にソフト。ウィンドブレーカーは少しの水の浸入も許さないよう首元にタイトなコンプレッション素材を用いているのが特徴。

「6チーム統一規格となるSailGPの船《F50》は、“空飛ぶヨット”と呼ばれるように最大スピードが50ノット(92・6km/h)出ます。F1のようなモータースポーツやエクストリームスポーツにも似たエキサイティングさが見どころで、より風や海水に強く晒されるためしっかりとした安全対策が求められます。その点でこの両アイテムは最も欠かせないギアといえます」

保温性、防水性など、あらゆる機能が他よりも優れていると実感しているそうだ。

「まずウェットスーツは生地に厚みがあるので強い風や水しぶきを受けても温かく、それでいて軽いので競技中のストレスが一切ないんです。悪天候時に上に重ねるウィンドブレーカーも、どんなに雨風が強くても完全に水を弾いてくれます。どちらも海上でハードに戦ううえでのパートナー。この日の丸の付いたウェアたちとともに、来季こそは世界一をめざしたいですね」