「シューズを常にアップデートして、0.1秒でも1cmでも記録を伸ばす!」陸上・十種競技選手 右代啓祐

text:Kai Tokuhara photo:Yoshio Kato illustration: Shinji Abe

初出『Tarzan』No.805・2021年2月25日発売

職人と話し合ってカスタム。

100m、400m、110mハードル、走幅跳、走高跳、棒高跳、砲丸投、円盤投、やり投、そして1500m。種目をざっと並べただけで、十種競技が“キング・オブ・アスリート”と称される理由がわかる。

右代啓祐選手はその第一人者。196cm・96kgの肉体を武器に34歳となった今もアジアで無敵の強さを誇る“鉄人”は、自身3度目の五輪出場と悲願のメダル獲得を実現するためにシューズ選びにも力を注ぐ。

陸上・十種競技選手 右代啓祐
右代啓祐(うしろ・けいすけ)/1986年、北海道生まれ。国士舘大学で十種競技を始めて4年時に日本選手権初制覇。2012年ロンドン、2016年リオと2大会連続で五輪に出場。リオでは日本選手団の旗手も務めた。

「種目が10もありますから必然的にシューズも増えるのですが、なかでも代表的なのが砲丸投と円盤投用のラバーソールシューズ、スプリント競技用のスパイク、そしてやり投用スパイクの3足です。やり投用であれば少し踵の部分を削って爪先を1mm上げるなど、全てのシューズを〈ミズノ〉の職人さんと話し合いながら細かくカスタムしています。自分のカラダの動きや特性を熟知したうえで、そこにフィットする道具を常に模索し続けています」

世界と渡り合うための道具。

陸上・十種競技選手 右代啓祐
上から砲丸投&円盤投用、スプリント種目用、やり投用の各シューズ。ソールのディテールやパーツの形状はかなり異なるが、白のボディに赤のランバードマークが入った象徴的なデザインで統一。全てのシューズに反発性能の高いカーボンプレートを入れたところも右代選手のこだわり。

理想の一足を追い求める作業を、欧米の選手たちとのフィジカル的ギャップを埋めるための重要なタスクとして捉えている。

「日本人的な考えかもしれませんが(笑)、世界と対等に渡り合うためには純粋に道具でもプラスを積み重ねていかないと。まだまだ“本物の自分”に出会えていないと思っているので、そこに向けて競技力そのものの強化に努めるのはもちろん、同時に0.1秒でも速く走れる、1cmでも高く跳んだり遠くへ投げられるようなシューズ作りをよりいっそう心がけていきたいですね」