選び方、脱ぎ履きの仕方…。初心者のためのランシュー入門
ランニング初心者にとってシューズ選びは重要。そこで、今回は初心者が気をつけたいシューズ選びのポイントや、正しい履き方、脱ぎ方、ケア方法、買い替えのタイミングまで知っておきたい基礎知識を解説する。
取材・文/黒田創 イラストレーション/naohiga 取材協力/市川寛人(ステップスポーツ東京本店店長) 編集/阿部優子
初出『Tarzan』No.851・2023年2月22日発売
目次
① 価格にこだわらず機能性で選ぼう
「まだ最初だし、まずは安めのシューズを履いておけばいいんじゃない?」と低価格帯のシューズを選ぶ初心者ランナーも少なくないはず。だけど、それはちょっと待った。
「以前は初心者向けよりも中〜上級者向けシューズの価格帯が高い傾向がありましたが、最近は初心者向けでも安定感をプラスするなどの機能が搭載されたシューズが多く、1万5000〜2万円前後のものが増えています。
価格面を重視するよりも、初心者の自分にとってどんな機能があるといいのか、売られているシューズにどんな機能があるかをお店のスタッフとやりとりしながら選ぶのをおすすめします」(ステップスポーツ東京本店店長の市川寛人さん)
なかにはユーチューブなどでシューズの知識を得るケースもあると思うが、それはあくまで参考程度に。本当に自分に合う一足かどうかは、お店で実物を見たり、試し履きをするなどしっかり吟味したうえで判断して購入したい。
② 厚底なら何でもいいわけじゃない
駅伝やマラソン中継を見るとほとんどのランナーがソールの厚い厚底シューズを履いているし、ショップの棚を見てもほぼ厚底だらけ。とはいえ、とりあえず厚底なら何でもOKでしょ、と選んでしまうのはNG。
「厚底は大きく分けて2種類あります。まずはすごくクッション性があって、中にプレートを入れることで前へ弾むように進めてくれる“ふわふわタイプ”。もうひとつがクッション性はあってもソールの外側は少し硬めで、あまり弾みすぎない安定感のある“しっかりタイプ”。
一般的には厚底というと前者のイメージが強いですが、初心者には“しっかりタイプ”をおすすめします」
初心者はまだ脚力が弱く、フワフワと弾みすぎるシューズだと着地した時に足を捻ったり、走力以上のスピードが出てしまい、少し長い距離を走るとケガをしやすくなるデメリットがある。
その点、着地の衝撃はしっかり吸収しながら、確実に足を支えてくれる“しっかりタイプ”ならばケガのリスクを減らすことができる。初心者のシューズは一にも二にも安定感を重視したい。
「厚底シューズは外見だけだと見分けがつきにくいので、その意味でも知識のあるお店のスタッフに初心者向けかどうか聞いてみてください」
厚底2タイプの特徴
しっかりタイプ | ふわふわタイプ |
---|---|
・クッション性はあるが弾みすぎない。 |
・クッション性と軽さ重視の作り。 ・前に弾む感覚でタイム短縮が狙える。 ・マラソン大会で好記録を目指したい人向き。 |
③ 2足持ちすればメリットいっぱい
ガチのランナーじゃないのにいきなり2足持ち? と驚くなかれ。それなりの理由があるのだ。
「あえてしっかりタイプとふわふわタイプ、異なるタイプの2足を持っておくのもいいでしょう。15〜20分程度、短時間軽めに走る場合はふわふわタイプを履いても足にはそう負担がかかりませんし、ぐいぐい前に進める爽快感を感じられます。
逆にゆっくり長時間走る場合はしっかりタイプを履いて、足をサポートしながら脚力を鍛える。そんな使い分けもオススメです」
また当然ながら、シューズのソールは履くほどに摩耗していくため、2足を目的に応じて交互に履き分けることで劣化を極力防げるというメリットもある。お財布と相談しながらうまくチョイスしよう。
④ サイズ選びと試し履きのポイント
「普段の靴が26cmだからランニングシューズも同じサイズを」。これ、一番やってはいけないこと。
「サイズが合っていないと靴擦れやマメができる原因になり、走るどころではなくなります。シューズを選ぶときは必ずお店で足のサイズを計測し、試し履きしましょう」
ショップに行ったらスタッフに足の長さや幅、甲の高さなどを測ってもらおう。
「たとえば足の長さが26.0cmなら、ランニングシューズは27.0cm、つまりプラス1cmを目安に選ぶのがポイントです。爪先に1cm余裕があると、ほどよくゆとりが生まれ、爪先がシューズの先に当たるのを防げます。普段履いている靴より1cm大きなサイズをチョイスするのもOKです」
ランニングシューズはメーカーによって微妙にサイズ感が異なる。特に足幅でその傾向が顕著なので、特定のメーカーに偏らず何足か試し履きするのをおすすめする。
「同メーカー、同モデルのシューズでも、モデルチェンジをした際にサイズ感が変わることが案外あるので、新調する場合は要注意です。
試し履きするときは足を入れたらまず踵の部分をしっかり合わせ、次に足幅のフィット感や爪先の余り具合をチェックしてください。店内にランニングマシンや軽く走れるスペースを設けているお店ならば、少し走ってみるのもいいでしょう」
⑤ ソックスやインソールはどうする?
シューズと同じく、ソックスの選び方も大切なポイントだ。
「ソックスは滑り止めがついているランニング用がおすすめです。シューズの試し履きの際もランニングソックスを着用してもらうのがベストですし、お持ちでない場合でも多くのショップには試し履き用のソックスが準備されています」
市川さんのイチ押しは5本指ソックス。通気性に優れていて、指同士が擦れることがないので、長時間走っても靴擦れやマメの発生を防げるのが最大の特徴だ。
もうひとつはインソールについて。
「どのシューズにもメーカー製のインソールが付属していますが、簡易的なものも多く、履いているうちに劣化します。特に偏平足など足に癖がある場合は、履き始めの段階でそれに対応した土踏まずを支える市販のタイプに替えてみるのもいいでしょう。他にもインソールを替えることでクッション性や衝撃吸収性、通気性、推進力を高めるなどさまざまな効果が期待できます」
試してみる価値はありそうだ。
⑥ 正しい手入れで長持ちさせよう
登山やサッカー、野球のように土や泥で汚れるようなケースは少ないけど、それでもちゃんとやってほしいのがメンテナンスである。
「ソールは砂ぼこりなどで結構汚れが溜まるので、長い距離を走ったときなどは必ず使い古しの歯ブラシで汚れをこすり取ってください。特にソールの裏側の細かい溝に土の小さな塊や小石が詰まるケースが多いので、こまめに取り除くことでソールの劣化を防ぐことができます」
アッパーや中の手入れは?
「数か月おきに、紐とインソールを外してアッパーや内部、ソール部分もまとめてブラシやたわしで水洗いしてください。その際に使うのは固形石鹼がおすすめ。石鹼をアッパーに直接塗り込めますし、頑固な汚れも落ちやすいです。
あとはしっかりゆすぎ、軽く水を切ったら中に新聞紙などを入れて爪先を上にして乾かしましょう」
⑦ 脱ぎ方と履き方を知っておこう
何よりもフィット感が重視されるランニングシューズだけに、脱ぎ方や履き方も疎かにしないようにしましょう、と市川さん。
「走った後は疲れているのはわかるのですが、脱ぐ際に紐を結んだ状態で足を抜くのではなく、きちんと爪先の方まで紐をほどいておくのがベストな脱ぎ方。さらに爪先を上にして立てておくと湿気がしっかり抜けてくれるので、次に履くときに気持ちよく履けますよ」
多少面倒でも紐を緩めて脱いでおくことで、履くときもよりフィットさせやすくなるメリットがある。
「履くときはまず踵をフィットさせてください。それから爪先側から順番に紐を締めていく。このときあまりキツく締めてしまうと足の甲の血流が悪くなってしまうので、強さはほどほどに。
そのかわり、最後のひと結びは強めに締めて足首をしっかりホールドすること。これでジョギング中も足が動きにくく、より快適に走れるはずです」
ランニングシューズの脱ぎ方と履き方
⑧ 買い替えのタイミングの見極め方
走るのがどんどん楽しくなり、ジョグの頻度や距離も延びてきた。ふとソールを見ると新品の時よりも結構減っている…。もしかしてこれって、買い替え時ですか!?
「ランニングシューズの交換の目安はいくつかあって、まずソールのサイドの部分にシワが入ってきたタイミングがひとつ。シワはそれだけ多くの衝撃を吸収してきた証拠で、機能的にはかなり衰えているので替え時といえるでしょう」
アッパーの劣化も見逃せない。
「最近のシューズは全体の軽量化のためにかなり薄い素材で作られているケースが多く、ソールが大きく劣化する前にアッパーが破れてしまうことが少なくありません。もちろんこの場合も交換のタイミングです」
ランニングシューズは消耗品としての性格が強く、1シーズンごとに買い替えるランナーもいるほど。劣化したシューズはケガのリスクが高くなるため、「もったいない」と迷うのではなく早めに買い替えよう。