教えてくれた人
中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)/スポーツモチベーション最高技術責任者、アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP-C)。著書『世界一やせる走り方』はロングセラーに。
ジョグ初心者の壁を越えるランガイダンス
ジョギングが続いたら、誰でも必ず痩せられる。痩せたいなら、ペースも距離も気にせず、走ることをいかに生活に取り入れるかだけ、シンプルに考えればいいのだ。
でも、世の中には、数値目標があった方がやる気が高まるタイプも多い(とくに男性)。そこで、ここではまだジョグ習慣がないビギナーに向け、2か月(8週間)で3kmまたは5km、足を止めずに走り続けるための必勝プログラムを紹介しよう。
監修してくれたのはあの青山学院大学の駅伝チームをサポートするフィジカルトレーナーの中野ジェームズ修一さんだ。まずはプログラムを有効活用するためのポイントを押さえ、記事後半で紹介するプログラムを実践してみよう。
① まずはホームコースを2つ作ろう
走ることはどこでもできるが、ジョガーにはお気に入りのホームコースがあるもの。安全で景色がよく、アップダウンが少なくても走りやすいコースを見つけたら、ネット上の計測サイトなどで距離を確認。
1周で3km、2周で5kmのように、距離がわかると、練習プランが格段に立てやすくなる。緑豊かで、交通事故の心配がなく、清潔なトイレもある公園で走れたら理想的だ。
ホームコースは可能なら2本用意する。1本は短め、もう1本は長めにすると、疲れている日は短めのコースを走り、元気なら長めのコースを選ぶなど、臨機応変に使える。長めのコースのみだと、「今日はしんどいからパス」などと諦める恐れがあるから要注意。
② 2週間続ける。すると習慣にできるようになる
痩せるためにジョグを始めるとしても、最初から体重減少に期待しすぎないこと。走り続ければそのうち痩せるが、食事制限と比べると即効性に乏しいからだ。
水分摂取や便通の状況次第で、走っても逆に体重が一時的に増えることも考えられる。それなのに、「5kmも走ったのに1kgも痩せない!」などと理不尽な憤りを覚えたりすると、走るモチベーションがダダ下がりになるのがオチ。
何事も2週間続くと習慣化されるといわれるが、2週間では痩せないとあらかじめ覚悟。それまでは体重の変化ではなく、決めたプログラムを想定通りにクリアできていることを成功体験として捉えてやる気をアップ。体重を量るのは2か月目に入ってからでいい。
③ スマートウォッチやアプリなどで走りを見える化
体重は2週間ではなかなか落ちないが、2週間走り続けると走力は確実に上向きになる。筋肉を持続的に動かすのに欠かせない酸素を、血液で筋肉に供給するための心肺機能が向上するからだ。
走力アップが自覚できたら、走ることにより前向きになれる。そのために大切なのが、自らの走りを“見える化”すること。
スマートウォッチやランニングウォッチがあれば、ジョグ中のペースや心拍数がリアルタイムでモニタリングできる。同じしんどさなのに、平均ペースが上げられたり、心拍数がより低く抑えられたりしたら、心肺機能が高まっている証拠。スマホにランニングアプリを入れるだけでも、平均ペースや走行距離は手軽にわかる。
adidas Running
〈アディダス〉の無料アプリ。スマホのGPS機能で走行距離、ペース、マップを記録。身長、体重を入力すると消費カロリーも計算できる。WEBサイト
STRAVA
上と同様に走行距離、ペース、マップがわかる無料アプリ。SNS機能充実で、友人とアクティビティを共有し、励まし合いながら走れる。WEBサイト
④ サボる=失敗体験を増やさないために工夫する
走ろうと思ったのに忙しくてサボってしまった…。そんな失敗体験を重ねると、意欲がダウン。ジョグが続かない恐れがある。
それを避けるため、事前に先々のスケジュールを確認し、厳しそうな週は、「この週はジョグをスキップする」と決める。これなら、サボったという罪悪感も失敗体験も生じない。8週間という期限を絶対視せず、途中で1週間スキップしたら1週間、2週間スキップしたら2週間延長すれば済む。
雨などの荒天時は、無理に走らなくて平気。辛い思いをして、走るのが嫌になったら身も蓋もない。荒天は神様からの“休みなさい”という温かいメッセージだと捉え、迷わずスキップ。室内でのストレッチなどでカラダをケアしよう。
⑤ 2か月目は、ウォーキングで締め、体脂肪を燃やす延長戦へ
ジョグとウォーキングを組み合わせると、走るハードルが下がり、継続性もアップする。1か月目は、ウォーミングアップ代わりにウォーキングから始め、途中でジョグへシフトする。でも、走るのに慣れた2か月目はジョグから始め、クールダウン代わりにウォーキングで締める。その方が痩せやすいからだ。
ジョグ後しばらくは、安静時より体脂肪がジワジワ燃え続ける。これはEPOC(運動後過剰酸素消費量)によるもの。
運動後、疲労回復などのために酸素の消費量が増える現象で、増えた酸素で体脂肪の燃焼が続く。2か月目の締めのウォーキングの間は、EPOCで普通に歩くより体脂肪が燃えやすく、一層痩せやすいのである。
⑥ 3km、5km走れるようになったら、週末は距離を延ばす
3km、5kmを歩かずに走れるようになったら、少しずつ距離を延ばすことにもチャレンジ。近い将来、毎回10km前後コンスタントに走れるようになれば、食べても太らない最強の痩せ体質が手に入る。
距離を延ばすタイミングは、何かと忙しい平日ではなく、時間にも心にも余裕がある週末や休日がベスト。ゆっくり長い距離を走るLSD(ロング・スロー・ディスタンス)を取り入れてみよう。
普段よりもペースを落とせば、その分だけ疲れずに長く走れる。ちなみに、どんなスピードで走っても、走る距離が同じならダイエット効果はほぼ同じだ。むしろゆっくり走った方が、酸素が過不足なく筋肉の隅々まで行き渡り、酸素を介して体脂肪が燃えやすい。
誰でもジョガーになれる世界一やさしい練習メニュー
今回用意したのは、3kmと5kmの2コース。ゼロから始め、2か月(8週間)で目標達成しよう。頻度は週3回が基本だ。
3kmコースは、ジョグ未経験者か、BMI25以上の肥満者向け。BMIは、体重(kg)をメートル換算した身長の2乗で割って求める。70kgで165cmなら70÷1.652≒25.7と計算。一方、5kmコースは、ジョグ経験者か、BMI25未満の人向けだ。
速度は気にせず、息が上がらないマイペースをキープ。疲れたら、ジョグの途中でも歩いていい。歩く距離を少しずつ減らし、最終的には最初から最後まで走ろう。
やる気を高めるため、2週間ごとに自分でご褒美を準備。成功体験の見える化で意欲的になろう。ただ減量を阻むグルメ系はNG。