ハンドルを握るほど馴染んでいく。《トヨタ ランドクルーザープラド》|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

撮影/伊達直人 文・編集/豊田耕志

初出『Tarzan』No.815・2021年7月21日発売

北海道の大地で育んだランクル愛。憧れから“なくてはならぬ”スタンダードに。

“PROGRESSIVE WORKERS ASSOCIATION”、略して〈PWA〉。日本語で“進歩的な労働者組織”を意味する謎の3文字の正体は、2021年春夏にスタートを切ったばかりのブランドの名前。普遍的なタフさと穿きやすさ、そして手頃な価格帯をモットーにしたパンツを中心に作るファッションブランドだ。

そんな足回りのことを熱心に考えるブランドだけに、そのデザイナー・増田信希さんは日常の“足”にも当然凝っていて、愛車はこのトヨタ ランドクルーザー プラドである。

「実はプラドの前はランドクルーザー80に乗っていまして。僕にとって“足”といえばランドクルーザーなんです。そんな原理主義に至ったのは、僕の故郷、北海道・帯広のせい。というのも、クルマなしでは生活できないこの田舎町では、オン・オフともに走破性に抜群に優れた“ランクル”率がやたらと高かったんです。ファッションや音楽に傾倒した多感な青春時代に師と呼んで慕っていた先輩も当然のようにランクル(60だったなぁ)で、穿き古したデニムのようにボロボロの一台を大事そうに乗っている姿もものすごく格好よかった。その原風景が瞼の裏に焼き付いているので、マイカーを持てる年齢になったときは、迷わずランクルを選択。結婚を機に新しいクルマに乗り替えようとなったときも、これだけは譲れませんでした(笑)」

で、選んだのが、プラド。ランクル70の派生車として84年に登場したワゴンモデル。本格的なオフローダーの本家とは逆に、乗用車的感覚を強化したシティビークルだ。

「東京にちょうどいいスペックだと思うんです。80より燃費も約2倍いいですし、乗り心地も格段に上がっている。それにサイズがまあまあ小さいから、運転が苦手な妻も将来的にハンドルを握れるんじゃないかって。今のところ、全く運転する気配がないんですがね(笑)」

日々の通勤に、年に数回のキャンプ。プラドは毎日穿くパンツのように、その生活に馴染んできた。

「一番のお気に入りは後ろ姿ですね。サブタイヤが装着されたタフな見た目には、ランクルのDNAが息づいていると思うんです。そうそう、荷室も広くて、パンツのサンプルや、キャンプ道具を積み込んでいます。いつでもどこにでも行けるように常に準備万端な状態です」

それこそ帯広まで長距離ドライブを計画中とか。そんなことを普通に考えられるほど、ランクルってのは、やっぱり頼もしい。

TOYOTA LAND CRUISER PRADO

新車価格は、当時で約298万円。増田さんの一台は、1996年から2002年まで販売されたランクル95と呼ばれるモデルをカスタムしたもの。汚れが目立ちにくいベージュをセレクト。

増田さんのランクル95プラドは、ランクルといえばの専門店〈フレックス リノカ 世田谷店〉で購入。当時のままのオリジナルではなくて、レトロなストライプ柄の可愛い乗車シートや丸目ライトなど、所々をいじったカスタム仕様。

ETCが普及する2000年代以前のクルマには大概備わっているコインホルダー。増田さんも当時と同じように10円玉と100円玉をセットしている。

  • 全長4,690×全幅1,820×全高1,915㎜
  • エンジン=2,700cc、水冷直列4気筒DOHC
  • 乗車定員=8名
  • 燃費=長距離で約8km/ℓ、街乗りで約6.5km/ℓ(増田さん調べ)。
Owner

増田信希(〈PWA〉デザイナー)
1989年、北海道生まれ。大学卒業後、繊維商社に就職。毎日穿けるパンツのスタンダードを作りたいと一念発起し、2021年春夏より〈PWA〉をスタート。無類の音楽好きでもある。

Information

〈 WARENFAUS KURAMAE 〉
増田さんの友人が手掛けるファクトリーバッグブランド〈N.I.B〉の直営店。数多くの鞄屋、付属問屋や革屋が軒を連ねる“蔵前”の鞄作りを伝える、うら若き専門店。住所:東京都台東区蔵前4-12-2|地図
TEL:03-3866-1881
営:12時〜18時(火・木・土のみの営業。)