〈New Balance〉の《フレッシュフォーム トレーナー》| これ、履きたい。

スタイリング・文/小澤匡行 写真/イアン・ランターマン ヘアメイク/曳田萌恵

シューズ《Fresh Foam Trainer》 19,800円、フーディ 14,300円、ショーツ 6,930円、以上ニューバランス、問い合わせ先:ニューバランスジャパンお客様相談室 公式サイト、ロングスリーブフーディ20,900円、ケイル、問い合わせ先: ナイスタイム マウンテン ギャラリー 公式サイトスウェットパンツ 5,445円、ユナイテッドアスレ、問い合わせ先:キャブ 公式サイト、ソックス 5,500円、アンダー、問い合わせ先:アンダー 公式サイト

文・小澤匡行

昨年、初めてハーフマラソンの大会に出場した。今までもメーカーの人やランナーの友人に誘われることはあったが、自分の走力を数字で可視化されると、別の世界が拓けてしまいそうで避けていたところもある。ただ走ることと装うことを、気取りすぎずに楽しむこと。競技性のないランニングという、いわば刺激の少ないスポーツをどこまで究められるか、というのは、もはや僕のライフワークである。もちろん、もっと距離を踏めるようにはなりたいし、速さへの素直な関心はあるのだが、ただでさえストレスフルな日々の生活に負担を加えるタスクになるべきではないと考えている。

〈ニューバランス〉がメインスポンサーに変わって初めての『東京レガシーハーフマラソン』は、そんな迷いというか、レースに対して否定的な考えがいかに偏ったものだったのかと思わせるくらい丁寧なサポートで、いい思い出になった。自分の今のランニングレベルは数値化されてしまったが、「次はもうちょいいけるかな?」と年老いた自分にも成長を予感できるレースではあったのだ。

この日、パリ五輪の男子マラソンで入賞した赤崎暁選手が着用したことで話題になっていた《FuelCell SuperComp Elite v4》を履いて走ったのだが、レース終盤で両脚が攣ってしまった。シリアスランナーが記録を狙うための「FuelCellソール」を、僕には扱うことができなかったのだ。と、いうことで僕の選択肢は、「Fresh Foam Xソール」になった。「Fresh Foam」はとても万能で、クッション性と安定性に優れている。普段履きと兼用するためにこのソールのシューズを選ぶランナーも多いようだ。そんな事情を知ってか、最新の「Fresh Foam Trainer」は”Lifestyle meets Performance”をコンセプトにしたシューズ。アッパーはランニングシューズの定番《1080》をベースにしつつ、2000年代のランニングシューズから着想を得ている。Nのロゴはやや小さめだし、オーバーレイのパーツがY2Kらしく複雑にレイアウトされている。オールデイを想定したデザインだが、それを主張し過ぎないトーナルカラーが、上品なバランスを保っているように思える。ちなみに、最近〈GANNI〉がこのモデルでコラボレーションしているように、まさに前述した「走ることと装うことを一緒に楽しめる」シューズだろう。こういった流れは、メンズよりもウィメンズに可能性がある気がする。

この冬から春にかけて、韓国ブランドの〈CAYL〉のウェアをランニングで使用している。とくに〈GRUBIG〉社のLive Woolというウール素材を使ったフーディが気に入った。メリノウールは日常でもランでも昔から着ていたが、この素材はクールマックスを交撚していて、僕がずっと探し求めていた混紡だった。つまり暖かくて天然の抗菌・消臭機能があり、しかも汗をかいても匂いにくく、素早く乾く。つまり走り始めの寒さと、走り終わった時の暑さ、このどちらも感じにくいのである。この日の撮影も、朝からちょっとした雨が降っていて少し肌寒かったので、スウェットのインに着せてみた。

世の中が便利になればなるほど、世の中は欲張りになるものだ。今回の《Fresh Foam Trainer》も、〈CAYL〉のウールフーディもまさにそれ。ただ、”普段履きにも使えるランニングシューズ”と聞くと、どっちにも特化してない感じが魅力的に映らなかった。しかし最近は、ライフスタイルとランニングの両シーンを満足させてくれる機能やデザインが増えている。日常から走ることへの意識も高くなるし、その需要が高まっているのだと思う。《Fresh Foam Trainer》は、翌月の出張シューズにしたいと思うし、今年も予定している二度目のハーフマラソンにも良さそうである。