伊沢拓司とトッテナム・ホットスパー | そのユニ、どこの? vol.2

ユニフォームには、選手や監督、サポーターが積み重ねてきた歴史と、その地に根付いたカルチャーが詰まっている。この連載では、ひたむきに一つのチームを応援し続ける人々に注目。お気に入りのユニフォームを纏ってもらい、一途な愛を掘り下げます。第2回は、知的エンタメ集団QuizKnockの発起人でクイズプレーヤーの伊沢拓司さんが登場。プレミアリーグに所属するフットボールクラブ、トッテナム・ホットスパーについて語ります。

取材・文/小川陸 撮影/園山友基

  • portrait_pattern1
  • landscape_pattern7
  • landscape_pattern8
  • landscape_pattern2
  • landscape_pattern4
  • portrait_pattern1
Profile

伊沢拓司(いざわたくし)/1994年生まれ。高校時代に「全国高等学校クイズ選手権」で史上初の個人2連覇を達成後、2016年に「楽しいから始まる学び」をコンセプトに掲げたWebメディアQuizKnockを設立。同名のYouTubeチャンネルは登録者数が260万人超え、個人でもタレントとして活躍中。

Tarzan Web
まずは、サッカーを好きになったきっかけからお伺いできればと思います。
伊沢
やっぱり、2002年の日韓ワールドカップが僕としては衝撃でした。当時は小学2年生だったんですけど、選手の名前を覚えるのもプレーを見るのも好きだし、日本全体が盛り上がっている熱狂の中に入っていく感じがすごい楽しくて。それからサッカーを好きになりました。
Tarzan Web
社会現象的にサッカーが身近にある環境だったことが要因なんですね。
伊沢
まさにそんな感じで、日韓大会前後は小学校の友達もみんなサッカーが好きだったので、上手いとか下手とか関係なく、朝一番に校庭でボールを蹴ってから授業を受けていましたね。その頃、レアル・マドリードが東京ドームで開催した有料の公開練習というレアなイベントにも行きましたし、当時のドイツ代表監督だったユルゲン・クリンスマンが自分の通っていたサッカースクールに来てくれて、覚えている限り初めてサッカー選手からサインをもらいました。

埼玉に住んでいたこともあって浦和レッドダイヤモンズの試合も少しだけ観ていて、田中達也や永井雄一郎(ともに元日本代表FW)が活躍していた2006年にJ1初制覇や天皇杯2連覇をしていたのを覚えています。土曜日の朝は、地方局のテレビ埼玉が放送している浦和レッズの応援番組『REDS TV GGR』を観るのが日課でしたね。

Tarzan Web
その後、どのような経緯でトッテナム・ホットスパー(以下スパーズ)を好きになったのでしょうか?
伊沢
きっかけは多く、どれも決定的とは言い難く…クラブを好きになるってそういうことかもしれません。とはいえ、クリンスマンに会っていたことも含め、スパーズを応援するのは天命だったかもしれません。2016年頃に彼が元スパーズの選手だったことを知り(1994/95、97/98シーズンに在籍)、「これは運命かも」とも思いました。

その中で一番を挙げるなら、高校生だった2012〜13年頃にサッカーゲームの『ウイニングイレブン』で遊んでいた時、もともとのクラブロゴがカッコいいチームだし使ってみたところ、強かったというのが大きいですね。当時、両ウィングがアーロン・レノン(世界屈指のスピードで活躍した元イングランド代表MF)とガレス・ベイル(フットボーラー史上最速の最高時速36.9kmも記録した元ウェールズ代表FW)で、ゲームでは足が速ければなんとでもなるので“ゲーム映え”したんです(笑)。それから気になるクラブになったものの、ちゃんと試合をチェックするわけでもなく、ニュースサイトで試合結果を見る程度でした。

Tarzan Web
試合を観るようになったのは、いつ頃からですか?
伊沢
J SPORTSが試合を放映していた2015/16シーズンから少しずつ観始めました。前のシーズンからハリー・ケイン(イングランド代表最多得点記録も持つレジェンドストライカー)が活躍し始め、ソン・フンミン(“クラブ史上最高の外国人選手”に挙げられている韓国代表FW)とデレ・アリ(フットボール史を変える才能の持ち主と評された元イングランド代表MF)が加入し、若くして成功したマウリシオ・ポチェッティーノ(元アルゼンチン代表で現在はアメリカ代表監督)が率いるという、かなり勢いのあるチーム構成をしていたので好きになったんです。それで、翌2016/17シーズンから本格的に観るようになり、2018/19シーズンにDAZNのプレミアリーグ全試合配信が決定したタイミングで、スパーズの全試合を観戦するスタンスで応援を始めました。
Tarzan Web
最初からスパーズを応援することを決めていたのか、いくつかクラブの候補がある中から選んだのか…。心を決めた瞬間はありましたか?
伊沢
気になって追っている中で徐々に、です。でも、明確に“ここ”と思ったのは、2016年のEURO(UEFA欧州選手権)でフランス代表のムサ・シソコを見たとき。ちょっと変な選手なんですけど、「中盤で潰せてボールも運べて、めっちゃいいな」と思っていたら、大会後にスパーズへ加入することが決まって、「ムサ・シソコがプレーするスパーズの試合を観てみたいかも」となったのが、がっつりと応援するようになるきっかけでしたね。
Tarzan Web
スパーズを本格的にサポートする前から、EUROをご覧になっていたんですね。
伊沢
もともとサッカーが好きだったこともあるんですが、大学の夏休みで本当に暇だったから(笑)。ただ、ムサ・シソコの加入で本格的にスパーズの試合を観るようになったのに、「なんだこれ。フランス代表のときと違って全然活躍しないじゃん」って(笑)。2年目から活躍しだしたんですけど、1年目はひどいもんでした。

Tarzan Web
では、これまでサポートしてきた中で、最も好きな選手を教えていただけますか?
伊沢
難しい質問ですが、ムサ・デンベレ(元ベルギー代表)という中盤の選手です。2012年にフラム(ロンドン西部・フラム地区をホームタウンとするクラブ)から加入し、ちょっと安定しない時期もあったんですが、2010年代後半のスパーズの中盤を支えたのは間違いなく彼でした。足は遅いんだけれどもヌルヌルと上がれるし、ボールを取られないし、パスも出せる。ハイライトに出てくるタイプではなく、試合を観ていると分かるいぶし銀のうまさがあって。ケヴィン・デ・ブライネ(しばし世界最高のMFに数えられるベルギー代表)は、「フットサルなら、彼は誰からもボールを奪われない」と手放しで称賛していました。

彼は、2018/19シーズンの途中に中国のクラブへ移籍してしまうんですが、同シーズンにスパーズはクラブ史上初のCL(ヨーロッパのクラブが出場する国際大会)決勝で負けてしまいました。その後のインタビューで、ともにプレーしたキーラン・トリッピアー(高精度のクロスと豊富な運動量で貢献する元イングランド代表SB)が、「ムサ・デンベレがいれば優勝できたかもしれない」と口にしていたんです。1人だけ名前を挙げられるほどの特異な存在で、あの頃からのサポーターはみんな大好きだったし、僕自身も彼のことをとても誇らしく感じていましたね。

Tarzan Web
ムサ・デンベレが好きなのは渋いですね。
伊沢
そう言われたくて言ってるんですよ(笑)。当然ケインも、ソンも、アリも、クリスティアン・エリクセン(ゲームメイクに優れたデンマーク代表)も好きなんですけど、当時からのサポーターの方々に同じ質問をしたら、ムサ・デンベレの名前が挙がりがちだと思います。
Tarzan Web
ちなみに、現行のスカッドでお気に入りの選手はいますか?
伊沢
選ぶのは大変ですけど、ペドロ・ポロ(右サイドバックを務めるスペイン代表)ですかね。今のスカッドで怪我をしない選手なんていない中、彼だけはとにかく怪我せず出場し続けてくれていますから。キックの精度が下がる日はありますが、とにかく攻撃のスタッツが良くて。トレント・アレクサンダー=アーノルド(超攻撃的な元イングランド代表SB)に次ぐほどのデータが出ているはずです。ここ2シーズンは守備も頑張れるようになり、熱いプレースタイルだけどイエローカードはもらわず、盛り上げ役としても本当にいい選手だと思います。

クイズプレーヤーの伊沢拓司さんがトッテナムホットスパーのユニフォームを着ている写真
Tarzan Web
特に思い出深いシーズンはありますか?
伊沢
やっぱり、CL決勝に進出した2018/19シーズンですね。このシーズンから全試合を観戦できる環境になったので、本当に1試合もリアルタイムを見逃していないし、サポーターズクラブが主催する観戦会にも参加するようになり、“サポーター仲間”ができ始めたので思い出深いです。チームとしては、ポチェッティーノ政権の円熟期で選手たちの陣容が揃いCLには勝ち上がるも、後半戦のアウェイゲームはほどんど勝てず、政権の終わりが見えて歯車が狂い出していたんですよね。サッカークラブの栄枯盛衰をぎゅっと煮詰めたようなシーズンで、応援していても毎試合どうなるか分からないので熱は入りました(笑)。

 

伊沢
CLも決勝に進出したとはいえ、ベスト8のマンチェスター・シティ戦は試合終了間際にゴールを決められて敗退かと思ったらVARで取り消しになり勝ち進み、ベスト4のアヤックス戦はルーカス・モウラ(スピードとテクニックを併せ持った元ブラジル代表MF)の劇的なハットトリックで逆転勝利。決勝のリヴァプール戦は、日本にいたスパーズサポーターの大半が門前仲町に集まり観戦会をしたんですが、開始約20秒でムサ・シソコのハンドからPKで失点するという、本当にドラマチックなシーズンでした。

それに、スパーズを応援する人が増えたシーズンでもあったので、今に繋がっていることも含めて印象深いですね。当時、ベスト4の観戦会は30人ほどしか集まらず、なんならスパーズサポーターの観戦会なのにアヤックスのサポーターが居る、みたいな状況だったんですが、決勝は200人ほどで観戦し、「こんなにも日本にスパーズのサポーターがいたんだ」と。それから5年後の2024年、国立競技場で行われた親善試合では4万人がスタジアムを埋めましたからね。

Tarzan Web
正直、国立競技場を埋められるか懐疑的だったので驚きました。

伊沢
僕も無理だと思っていたので、また来日してもらうためにも限界までお金を注いで7席も押さえたんですよ。当日、友達にユニフォームも渡して連れて行ったら、あの光景が広がっていて「こんなに人が集まるなら変なことしなきゃよかった」って申し訳なくなりました。あの日をきっかけにスパーズのサポーターになってくれた友達もいるし、本当に嬉しかったですね。

Tarzan Web
日常的には、どのように観戦していますか?
伊沢
日本時間だと深夜のことが多いので基本的には家で一人で観戦しています。サッカーのためだけに65型のテレビを買いました。デカいテレビで観るサッカーは最高です(笑)。
Tarzan Web
現地観戦の経験はありますか?
伊沢
本拠地のトッテナム・ホットスパー・スタジアムには行ったことがあるのですが、オフシーズンだったので試合は観れていません。ちょうど応援し始めた頃から仕事が忙しくなり、日本を3日以上離れるのが厳しくて…。6〜7月が僕の仕事の閑散期なのですが、それだとオフシーズンなので、現地観戦の実現が難しいんです。CL決勝の時には仕事で現地へ行くというオファーがあったものの、他の予定と被ってしまい行くことは叶いませんでした…。
Tarzan Web
日本で観戦する場合、仕事や撮影の関係でリアルタイムが難しい場合もあるのではないでしょうか?
伊沢
試合日程が発表された時点で仕事を入れないようになるべく調整しているんですが、たまに試合そのものがズレるので、どうしても観戦できないことはあります。生放送の収録と被ったときは、CM中にこっそり観ていますね(笑)。

地方の仕事が多いこともあり、札幌や仙台、大阪、神戸など行く各地のサポーターズクラブの方々と一緒に観戦することも楽しんでいます。やっぱり、ホテルでスマートフォンやパソコンの小さい画面で観るよりも、筋金入りの皆さんと一緒に見たいですから。それと、ドイツに有名な日本人のサポーターの方がいて、YouTubeも運営されるほど戦術などに詳しいので、最近Discordを繋げて解説してもらいながら観たりもしましたね。

Tarzan Web
スパーズをきっかけに、地方の方々との繋がりができるのは素敵なことですね。
in-d
そうなんです。「しっかり観て盛り上がりたい!」という方々が多いので、観戦環境もとても良いですね。スパーズのサポーターは、フットボールリテラシーが高く、カルチャー理解も深い方が多いなというイメージなので、皆様に教えを請いています。何より、コミュニティが大きくはないからこそ居心地の良いファンダムが出来上がっているのが素敵だと思いますね。
クイズプレーヤーの伊沢拓司さんが愛用するトッテナムホットスパーのユニフォーム
Tarzan Web
観戦会に参加する際、ユニフォームは着て行きますか?
伊沢
基本的には着て行くことが多いですが、地方だと持って行く余裕がないこともあるので普通の服の場合もあります。スパーズの観戦会の特徴のひとつなんですが、日本を一人旅されている海外のサポーターの方も気軽に立ち寄れるようにと、ユニフォームの着用が必須ではないイメージがありますね。
Tarzan Web
日常的にユニフォームを着ることもありますか?
伊沢
普段使いで着るものも数着ありますが、2014/15シーズンからホームユニフォームは胸スポンサーにAIA(アジア保険大手)の赤いロゴが大きく入っていて、着こなしが難しいんですよね。ちなみに、赤が入っていることが許せないサポーターはけっこう多くて(注:100年以上のライバル関係が続くアーセナルのクラブカラーが赤のため)、過去には青か白に変える運動もあったくらい(笑)。

アウェイとサードのユニフォームはAIAのロゴが赤ではないので着やすく、現地のサポーターもアウェイとサードを重視して着ている感じはありますね。2026/27シーズンを最後に胸スポンサーが変わるので、買い方も着方も変わるかもしれないです。

Tarzan Web
ユニフォームはいつから購入されていますか?
伊沢
2017/18シーズンからですね。この時のユニフォームは、オールド仕様のクレストが好きじゃなくて一着しか買いませんでした。次の2018/19シーズンからは、金銭的に余裕ができたもののホームはそんなに好きではなかったのでアウェイとサードを購入し、サードがお気に入りでした。サードがお気に入りでした。今考えると、CL準優勝シーズンだったからホームも買えばよかった…。

スパーズは、拠点とするトッテナム地区が相対的に貧しい地域ということもあり、常に地域のフックアップを考えているクラブなんです。このサードは地元のデザイナーと一緒に作り、ボディにはトッテナム地区の地図がプリントされているんですよ。この背景も含めて、CL決勝に進出したシーズンでもあったので特に思い出深いですし、未だにスタジアムで着ているサポーターは多いですね。

この投稿をInstagramで見る

 

in-d(@ind_otg)がシェアした投稿

Tarzan Web
ユニフォームはシーズンごとに購入するタイプですか?
in-d
シーズンごとに2〜3着を買っています。レトロのレプリカも含めると、30着はあると思います。お布施ですね(笑)。
Tarzan Web
選手の名前入りユニフォームを購入する際は、何を基準としていますか?
伊沢
推しのタオルを買うアイドルファンのように、「これでバックが入れば」という気持ちで、前シーズンに良い印象の残った選手のユニフォームを購入しています。だから、その選手が活躍したシーズンのユニフォームではないのが悲しかったり、ちょっとラグがあるんですけどね(笑)。

今シーズンは、ルーカス・ベリヴァル(2024/25シーズンに18歳で加入した万能型のスウェーデン代表MF)、ジェド・スペンス(攻守の切り替えに定評のあるイングランド代表SB)、ペドロ・ポロに加え、期待を込めて高井幸大選手(今季加入した日本代表CB)。昨シーズンは、ミッキー・ファン・デ・フェン(高身長ながら優れた足元と驚異的なスピードを持つオランダ代表DF)、クリスティアン・ロメロ(アグレッシブな守備の対人戦が売りのアルゼンチン代表CB)、パペ・マタル・サール(豊富な運動量で攻守に貢献するセネガル代表MF)でした。

あと、背番号40以上を1〜2着は買いたいと思っています(注:主力級の選手が小さい数字を背負うため、若手には大きい数字を割り振られることが多い)。「この選手の、このシーズンの、このナンバーを持っていますよ」って。観戦会にいらっしゃる60〜70番代のユニフォームを着ている方々を見るとカッコいいんですよね。

Tarzan Web
話を聞く限り、前線の選手のユニフォームをあまり購入されていないようですね。
伊沢
シーズンのトップ3を買うとなると、ここ5年ほどは前線の選手の活躍的に優先度が低くなり買いづらく…。ただ、ケインやソンはさすがにお世話になりすぎたので買いましたし、22/23シーズンのサードのデヤン・クルゼフスキ(緻密なボールタッチと豊富な運動量が武器のスウェーデン代表MF)も持っています。
クイズプレーヤーの伊沢拓司さんが愛用するトッテナムホットスパーのユニフォーム
Tarzan Web
このクルゼフスキのユニフォームはサイン入りですが、どちらで手に入れたのでしょうか?
伊沢
昨年のジャパンツアーの際に直接書いてもらい、デスティニー・ウドジェ(豊富な運動量と攻撃参加が持ち味のイタリア代表SB)にも2023/24シーズンのサードにサインをもらいました。あと、2018-19シーズンのアウェイには、個別でもらった選手以外のサインを書いてもらったのですが、ユースの選手の分もあるので誰がどのサインか、かなり分かりづらい(笑)。これは直接サインをもらえたこと自体が思い出です。
Tarzan Web
本日着用されているのは、いつのモデルのユニフォームですか?
伊沢
1991/92〜93/94シーズンのアウェイユニフォームの復刻モデルです。当時はアンブロがユニフォームを生産していたのですが、今はナイキに変わったこともありブランドロゴが付いておらず、その代わりに“THFC”の背景プリントが足された現代的なデザインになっています。

この頃のスパーズは、1990/91シーズンにFAカップ(イングランドで行われる世界最古のカップ戦)で優勝し、ポール・ガスコイン(イングランド史上最も優れた才能の持ち主の一人に挙げられる元同国代表MF)やゲーリー・リネカー(卓越した得点能力とフェアプレーで知られた元イングランド代表FW)、テディ・シェリンガム(知的な万能型として活躍した元イングランド代表FW)、クリンスマンら選手の陣容は揃っていたものの、リーグ戦は1991/92シーズンが15位、1992/93シーズンが8位、1993/94シーズンが15位、1994/95シーズンが7位と、全く結果の出ない時期で。だからこのユニフォームは現地では人気がないらしいんですが、デザイン性が90年代っぽくて良いし、今のピチッとしたシルエットとは異なるダボダボな余裕感が私服として着やすいんですよね。

Tarzan Web
どちらで購入されたのでしょうか?
伊沢
スパーズの公式オンラインストアです。本当は、アンブロのロゴが入った当時のユニフォームが欲しいんですけど、なかなか状態の良いものやマイサイズがリセールで見つけられず。というのも、現地の人たちは僕よりも身体が大きいので小さいサイズが少なく、仮にあったとしてもビール腹の影響でフロント部分が変に伸びちゃっているのもあったり(笑)。日本の古着屋でも、スパーズのヴィンテージユニフォームを置いているところは全然見たことがないですね。だからこそ、僕としては復刻モデルはありがたいです。
Tarzan Web
背番号が17の理由は?
伊沢
昨シーズンのプレミアリーグの順位が17位だったので(注:クラブ史上最低順位)、戒めの意味を込めてですね(笑)。
Tarzan Web
他に狙っているヴィンテージユニフォームや復刻モデルはありますか?
伊沢
1994/95シーズンのセカンドは、紫と青でカッコ良くてスタジアムで着ている人も多いんです。ヒューレット・パッカードが胸スポンサーを務めている時代も好きで、ロゴ自体がカッコ良いので白いホームでも私服として全然イケるし、1997/98シーズンのアウェイが欲しいですね。
Tarzan Web
さて、今季より監督に就任したトーマス・フランクの手腕が注目されていますが、伊沢さん的にはいかがですか?
伊沢
僕は支持派で、まだ戦力を見極めている感じがします(取材時、10戦5勝2分3敗)。ずっと同じシステムで戦っていたと思ったら最近はビルドアップの形を変えるなど、戦術を柔軟に変容していくタイプで、若い選手が多いため好不調の波はありつつも、それをうまく乗りこなしてくれそうな兄貴分かなと。

先日、2人の選手が敗戦後に握手をしようと手を差し出したフランクを無視する事態が発生し、サポーターは全員がドキドキしていましたけど、次の試合でその選手たちが活躍したら会見で、「あのパフォーマンスをしてくれるなら、全然無視してもらっていいけど」とジョークを飛ばして事後処理するなど、選手とのコミュニケーションや会見が上手いですね。全部喋ってしまうジェンナーロ・ガットゥーゾ(時折、選手批判とも捉えられる発言をするイタリア代表監督)の真逆というか(笑)。

Tarzan Web
今季のプレミアリーグの順位予想はいかがですか?
伊沢
1位って言いたいし言わなきゃいけないんですけど、トーマス・フランク体制の1年目なので現実的にはCL圏内の4位以上を目指してほしいです。システムの都合上、CLの選手登録状態がガラッと良くなり戦えるスカッドを揃えられるのが来季からで(注:CLに出場する場合、育成選手や非育成選手の登録数に制限がある)、そもそもCL圏内に入らないと選手編成もかなり厳しくなってきます。なので、来季を勝負のシーズンとして今季はその挑戦権を手に入れること。

そして、アーセナルの優勝を阻止するのが我々のやるべきこと。おそらく全サポーターが心の底から思っていて、CL圏内かアーセナルの優勝阻止するかの2択は、後者を取る人が多いんじゃないですかね(笑)。今季はだいぶ優勝しそうなので、本当に危機感があるんです。他のクラブが倒れていく今、ダービーだけは勝ってなんとしても優勝を阻止せねばと。俺たちしかアーセナルを止められないという覚悟でやります(笑)。

Tarzan Web
最後に、トッテナム・ホットスパーの魅力とは?
伊沢
まずは、応援していて安心感がある。長期的な行末を誤ることはないソリッドな経営が僕は好きです。今年から経営陣が変わってしまったので先がわからない部分もあり、気持ちが離れるかもと思っていたら全然そんなことはなく、クラブに息づいてきたカルチャーや先進的な姿勢、選手の獲得時に素行面を重視する点など、応援していて嫌な気分になることが試合結果以外にないのがすごく良いところ。

ピッチ上では完全なる未知が起こり、どのチームにも勝って、どのチームにも負ける。経営判断もとても難しい。でも、会社として最低限守るべきラインはあるので、ピッチ上のアップダウンを前提として、それでも応援し続けたいと思えるチーム運営の健全性が、社会人が応援するうえで安心できるクラブだと思っています。

最近の試合も、2-0で勝っているのに足裏タックルの一発レッドで退場者を出し、その後にPKを外すも4-0で勝つという、「これだからスパーズを応援してんだよな」という内容でした(笑)。安定なんていう言葉は、この10年全く見たことがない。ピッチ上のハラハラと経営の安心感、この変な両輪が魅力ですね。

クラブ情報

トッテナム・ホットスパー

創設年:1882年
本拠地:イングランド・ノースロンドン
愛称:スパーズ

1882年にノースロンドン・トッテナム地区にある教会に所属していた学生が、前進となるホットスパーFCを結成。ホットスパーは、同地域を拠点としていた貴族を祖先に持つ騎士の名前から名付けられたと言われており、1884年に地区名も冠した現在のトッテナム・ホットスパーに改称。チームカラーはホワイトのシャツとネイビーのパンツで、1898年から現在まで伝統的に受け継がれている。1901年にクラブ初タイトルとなるFAカップ優勝を果たし、1950/51シーズンに初めてリーグ制覇。その後、国内外で何度かタイトルを制するも、1977-78シーズンには2部に降格するなど長らく冬の時代を迎え、“無冠の強豪”と皮肉られていた。しかし、2024/25シーズンにヨーロッパリーグで優勝し、17年ぶりの主要タイトルを獲得している。