肩がグイグイ動く!肩甲骨を目覚めさせる4ステップ。

肩甲骨は背中側にあって意識しづらいからこそ、可動性と安定性が失われると、肩こりや動作不良をもたらす。状態を把握するチェックと4つのエクササイズで、本来の滑らかな動きを取り戻そう!

取材・文/井上健二 撮影/園山友基 スタイリスト/豊島 猛 ヘア&メイク/村田真弓 トレーニング指導・監修/友岡和彦(クリードパフォーマンス パフォーマンスディレクター)

初出『Tarzan』No.915・2025年11月20日発売

肩甲骨を動かすトレーニングしている女性
教えてくれた人

友岡和彦(ともおか・かずひこ)/1971年生まれ。クリードパフォーマンス取締役・パフォーマンスディレクター。1999年から10シーズン、MLB3球団でストレングス&コンディショニングコーチを務めた。

肩こりの慢性化は、肩甲骨ケアから。

肘や膝といったオープンな関節と異なり、肩甲骨と股関節の存在を意識する機会は少ない。肩甲骨は背中側にあるし、股関節は鼠径部の奥にあり、居場所さえいまいちよくわからないからだ。

手足がスムーズに動かない、肩こりや腰痛が慢性化しているといった自覚があるなら、肩甲骨も股関節も機能不全を起こしている。そこで必要なのは、肩甲骨と股関節のリアルを“見える化”して、それを踏まえた修正エクササイズに取り組むこと。

「肩甲骨が作る肩関節も股関節も、安定性と可動性の両立が大切です。そのうえで負担なく思い通りに動かせるモーターコントロール(運動制御)を身につけることが、エクササイズの大きな目標となります」(パフォーマンスコーチの友岡和彦さん)

肩甲骨と股関節は密接に連携しているから、どちらか一方ではなく両者はセットで改善すべき。まず“見える化”として、続くステップで肩甲骨と股関節の機能を評価する「確認」を行う。肩甲骨も股関節も多様に動くけれど、それぞれ代表的な2つの動きに絞ってチェックしてみたい。

あわせて読みたい
『日常動作が軽くなる!股関節を目覚めさせる4ステップ。』

その結果に応じて「緩める」→「広げる」→「動かす」→「まとめる」という4ステップのエクササイズを実施し、段階的に肩甲骨と股関節を整えていく。すべてこなしたら、全身をひとつにするための「統合」にもトライしよう。

あわせて読みたい
『“共同作業”で滑らかな動きに。肩甲骨&股関節の統合エクササイズ。』

7日間のプログラム
DAY 種目
1 肩甲骨
2 オフ
3 股関節
4 オフ
5 肩甲骨
6 オフ
7 股関節

まずは肩甲骨、股関節を交互に1日1テーマで順番に行う。3週間ほど続けたら「かくにん」に戻り、動きが改善していることを確認してみよう。その後、別々で整えた肩甲骨と股関節をつなげていく「統合」のエクササイズに取り組む。

ステップ0. 肩甲骨の状態を確認する。

エクササイズを始める前に、肩甲骨の現状を把握するために「かくにん」を行い、何に重点を置くかをはっきりさせる。そして4タイプに分け、それぞれやるべきプログラムを明確化する。

チェック1.外旋

外旋

  1. 壁際に両脚を揃えて後ろ向きに立ち、踵、お尻、背中、後頭部を壁につける。左肘を肩の高さで壁につけ、前腕を床と平行にし、手のひらを床に向ける。
外旋

手の甲が壁にピッタリつくまで前腕が上がる。

2.肘のポジションを動かさずに手の甲を壁に近づける。左右を変えて同様に行う。

NG

NG

手の甲がつかない。手首を反らせて無理に手の甲をつける。

NG

腰を反らしたり、肩を上げたりして無理に手の甲をつける。できることはできるが、痛みや違和感がある。

チェック2.屈曲

屈曲

  1. 壁際に両脚を揃えて後ろ向きに立ち、踵、お尻、背中、後頭部を壁につける。
屈曲

親指が壁にピッタリつくまで腕が上がる。

2.両腕を体側に下げて手のひらを太腿に向け、小指を壁に近づける。半円を描くように左腕をまっすぐ上げていく。左右を変えて同様に行う。

NG

NG

親指が壁につくまで上がらない。

NG

腰を反らして無理に親指をつける。できることはできるが、痛みや違和感がある。

あなたにピッタリなメニューはこれだ!

ステップ1. 肩甲骨を緩める。

本来なら自由自在な肩甲骨の動きを邪魔している筋肉がある。それをテニスボールと自体重を用いて「緩める」。

骨と関節まわりの筋肉のテンション(筋トーン)を揃えることで、これから行うエクササイズに取り組みやすくなり、効果も一層アップする。

筋肉マップ

筋肉マップ

【小胸筋】
肩と大胸筋の膨らみの間で、硬さを感じるところを重点的にほぐす。

【菱形筋】
肩甲骨と背骨の間で、硬さを感じるところを重点的にほぐす。

【広背筋】
肩甲骨と肋骨の間で、硬さを感じるところを重点的にほぐす。

【 for A・B・C】硬くなると猫背を促しやすい筋肉を緩める。

広背筋リリース1(左右各30秒)

広背筋リリース1

ボールに体重をしっかりかけ続ける。

  1. 右側を下にして床で横になり、広背筋にボールを当てる。右腕を床でまっすぐ伸ばし、手のひらを床につける。左手をお腹の前について姿勢を安定。両膝を軽く曲げ、左脚を軽く引く。頭は背骨の延長線上に保つ。
  2. 体重をかけたまま、左手でコントロールしてボールを前後に軽く動かす。左右を変えて同様に行う。

    広背筋リリース2(左右各30秒)

    広背筋リリース2

    腕の重みと動きを使ってリリースする。

    1. 上体を軽く起こし、左手を胸の前でつく。頭の先に伸ばした右腕の手のひらを天井に向ける。
    2. 右腕を軽く床から浮かせ、できるだけ大きな半円を描くようにお腹の前まで動かし、元に戻す。左右を変えて同様に行う。
    【for A・B・C】肩甲骨を引き寄せる筋肉を復活させる。

    菱形筋リリース1(左右各30秒)

    菱形筋リリース1

    お尻を浮かせると体重がかけやすくなる。

    1. 床で仰向けになり、右側の菱形筋にボールを当てる。両膝を腰幅で曲げて立て、両腕を肩のラインで左右に伸ばし、手のひらを床に向ける。
    2. お尻を浮かせてボールに体重をかける。両足でコントロールしてボールを前後に動かす。左右を変えて同様に行う。
    菱形筋リリース2(左右各30秒)
    菱形筋リリース2

    肩甲骨を動かしながらリリースする。

    1. 右腕の手のひらを天井に向ける。お尻を浮かせてボールに体重をかける。
    2. 右腕を軽く床から浮かせ、できるだけ大きな半円を描くように頭の先まで動かし、元に戻す。左右を変えて同様に行う。
    【for A・B・C】肩を前へ引っ張っている筋肉をオフに。

    小胸筋リリース1(左右各30秒)

    小胸筋リリース1

    背中を丸めず、胸を少し張ったままで行う。

    1. 床でうつ伏せになり、ボールを小胸筋に当てる。左腕を肩のラインでまっすぐ横に伸ばし、手のひらを床に向ける。右肘を曲げ、右手のひらを床につく。両脚を腰幅でまっすぐ伸ばす。
    2. 体重をかけたまま、右手でコントロールしてボールを左右に動かす。左右を変えて同様に行う。

    小胸筋リリース2(左右各30秒)

    小胸筋リリース2

    体重をかけたまま、肩甲骨を動かす。

    1. 左腕を斜め前方へまっすぐ伸ばす。手のひらを床につける。
    2. ボールに体重をかけたまま、できるだけ大きな孤を描くように左腕を体側まで動かし、元に戻る。左右を変えて同様に行う。

    ステップ2.肩甲骨を広げる。

    筋肉の可動域を「ひろげる」。通常のストレッチの大半は受け身(受動的)だが、ここでは自らの意思で主体的に機能的に動ける範囲を広げていく。そのために筋肉をあえて緊張させることで、反対の働きをする筋肉を弛緩させる「相反抑制」をおもに用いる。

    【for A・C】背中の筋肉を緊張させ、猫背を促す胸の筋肉を緩める。

    Tヒップロール(5秒キープ+8秒リラックス×左右交互に2セット)

    Tヒップロール

    お尻を床にベッタリつけない(それはお腹から力が抜けている証拠)。T字を作った両膝を揃えたまま、左右に傾ける。

    1. 床で仰向けになり、両膝を曲げて揃えて引き上げる。両腕を肩のラインで真横に伸ばし、手のひらを天井に向ける。尾骶骨を浮かせ、骨盤を後傾させてお腹にしっかり力を入れる。

    Tヒップロール

    2.両膝を揃えたまま左側へ45度くらいまで傾け、右側の肩甲骨を強く床に押し付け、呼吸をしながら5秒(5カウント)キープ。両膝を元に戻し、呼吸をしながら8秒(8カウント)リラックス。左右を変えて同様に行う。

    NG

    NG

    両膝を横に倒すとき、反対側の肩と肩甲骨が床から浮いている。

    NGお腹から力が抜けて腰が反っている。

    【for B・C】胸の筋肉を緩めて、肩甲骨を動きやすくする。

    スパインフロアスライド(5秒キープ+8秒リラックス×2セット)

    スパインフロアスライド

    前腕と肘を床に押し付けて胸の筋肉を緊張。

    1. 床で仰向けになり、両膝を腰幅に開いて曲げて立てる。両肘を肩の真横で90度曲げ、手のひらを天井に向けて胸を開く。お腹に力を入れて腰のアーチを床に押し付ける。
    スパインフロアスライド

    背中の筋肉が緩むと肩甲骨を動かしやすくなる。

    2.息を鼻から吐きながら、前腕と肘を床に押し付けて5秒(5カウント)キープ。バンザイをするように息を吸いながら8秒(8カウント)で両腕を頭上に伸ばし、元に戻す。前腕と肘は床でスライドさせるように動かしていく。

    NG

    NG

    胸椎が硬くて動かないため、腰を反らせて腕を伸ばそうとしている。

    【for B・C】固まりやすい胸郭の可動域を広げていく。

    ハーフニーリング・ソラシックエクステンション(5秒キープ+8秒リラックス×2セット)

    ハーフニーリング・ソラシックエクステンション5

    アンダーグリップ(逆手。手の甲が下を向くやり方)で握る。

    1. 食品ラップの芯などの円筒状のものを肩幅で握り、椅子の座面に両肘をついて膝立ちになる。膝の角度は90度前後。
    ハーフニーリング・ソラシックエクステンション5

    肩甲骨を寄せて胸を大きく開く。

    2.前腕を床と垂直に保ち、左右の拳を近づけるように力を入れて、呼吸をしながら5秒(5カウント)キープ。腕の力を抜き、息を吐きながらお尻を踵に近づけるように胸椎を広げて8秒(8カウント)リラックス。元に戻る。

    NG

    NG

    胸椎が動かせないため、腰を反らせてお尻を下ろしている。

    ステップ3. 肩甲骨を動かす。

    広げた可動域をフルレンジで使い、肩甲骨を思い通りに「うごかす」ように整える。骨と筋肉を安定させておいて、多くの筋肉を協調させながら肩甲骨を制御して動かす「モーターコントロール」の能力を高める。

    【for B・C】肩甲骨を安定させる前鋸筋を刺激する。

    エルボープッシュアップ(3秒キープ×12回×2セット)

    エルボープッシュアップ

    キープしている間、呼吸を止めない。手ではなく肘で床を強くプッシュする。

    1. 床でうつ伏せになり、両肘を肩の真下について上体を軽く起こす。両脚を腰幅で伸ばして爪先を立てる。肩を下げて首を長く保ち、目線を床に向ける。
    2. 肘で床を押して股関節から頭までを一直線に保って呼吸をしながら3秒(3カウント)ホールド。元に戻る。

    NG

    NG

    お腹から力が抜けて腰が反っている。

    NG

    上半身が力んで肩が上がっている。

    【for A・C】胸を反らせて肩甲骨から腕を動かす。

    コブラ(5秒キープ×2セット)

    コブラ

    前半は上体を床につけたままにする。

    1. 床でうつ伏せになり、両腕を肩のラインで真横に伸ばし、手のひらを床に向ける。両脚を腰幅で伸ばして爪先も伸ばす。肩を下げて首を長く保ち、額を床につける。
    コブラ

    親指を天井に向けると、胸が開きやすい。

    2.両腕を床と平行まで上げてから、半円を描くように体側まで下げる。腕を付け根から外向きに回す外旋をして親指を天井に向けながら、胸(胸椎)を反らせて床から浮かせて5秒(5カウント)キープ。元に戻る。呼吸を止めない。

    NG

    NG

    胸椎の柔軟性が乏しく、両脚が上がっている。

    NG

    胸ではなく首を反らせて無理に胸を床から浮かせている。

    【for A・C】手でサポートしながら胸郭をツイスト。

    リブグラブ(8回×2セット)

    リブグラブ

    お尻を踵に乗せて腰椎の余計な動きをセーブ。

    1. 正座で両膝を肩幅に開く。上体を前傾させて左手を左膝の前方につく。右手を左側の脇腹に置き、肋骨を摑む。頭は背骨の延長線上で、目線を床に向ける。
    リブグラブ

    肩越しに反対の斜め後ろを見るように胸郭を回す。

    2.左手で床を押しながら、胸を開いて右手で胸郭を右側へ大きく捻り、元に戻る。左右を変えて同様に行う。

    NG

    NG

    手で床を押さないから肩が上がり、胸が回らず首だけの動きになっている。

    NG

    お尻が浮くと腰椎が反りやすい。

    ステップ4. 肩甲骨をまとめる。

    最終的な狙いは、肩甲骨を上手に操り、日常動作や運動のパフォーマンスを上げること。ステップ3が肩甲骨というローカルなモーターコントロールなら、グローバル(全身)なモーターコントロール術を学ぶ。

    側面(ラテラルライン)の機能を高める。

    ラテラルステップ&アームリーチ(左右交互に各8回×2セット)

    ラテラルステップ&アームリーチ

    1. 両脚を揃えてまっすぐ立ち、爪先を正面に向ける。肘を曲げ、両手のひらを正面に向けて肩の高さで構える。
    ラテラルステップ&アームリーチ

    弓なりになりカラダ側面全体のストレッチ感を得る。上半身だけの動きにならず、骨盤も連動させる。

    2.右足を右へ半歩踏み出し、右腕を右耳の後ろに伸ばし、右へ骨盤を突き出しながら右腕でリードして上体を左側へ倒し、元に戻す。左右交互に行う。

    NG

    NG

    胸(胸椎)がきちんと張れていないため、上体が真横ではなく前方へ倒れる。

    らせん面(スパイラルライン)の機能を高める。

    ラテラルステップ&ローテーショナルリーチ(左右交互に各6回×2セット)

    ラテラルステップ&ローテーショナルリーチ

    胸(胸郭)をしっかりと回し、らせん面のストレッチ感を得る。

      ラテラルステップ&ローテーショナルリーチ

      下半身と上半身のツイスト(回旋)方向を逆にする。

      1. 両脚を揃えてまっすぐ立ち、爪先を正面に向ける。両腕を体側で下げる。右足を右へ1歩踏み出し、右膝を軽く曲げて体重を乗せたまま、肩の高さまで肩幅で上げた両腕でリードしながら、胸郭を左側へ大きく捻り、元に戻る。下半身は右側へ回旋しやすい姿勢で、上半身を左側へ回旋することで刺激を入れる。左右交互に行う。

      NG

      NG

      両肩が正面から見えて腕だけの動きになっている。

      前面(フロントライン)の機能を高める。

      フォワードステップ&アームリーチ(左右交互に各6回×2セット)

      フォワードステップ&アームリーチ

      1. 両脚を揃えてまっすぐ立ち、爪先を正面に向ける。両腕を肩幅でまっすぐ天井へ伸ばし、手のひらを正面に向ける。
      フォワードステップ&アームリーチ

      えび反りでカラダ前面全体のストレッチ感を得る。左膝を左爪先より前に出さない。

      2.左足を1歩前に踏み出し、上体を床と垂直に保ったまま、両膝が90度曲がるまでしゃがむ。左膝の位置を動かさず、右膝を床に近づけながら、胸を大きく開いて上体を後ろに反らし、元に戻る。左右交互に行う。

      NG

      NG

      膝が爪先より前に出ている。胸を反らさず、腕だけの動きになっている。