
ニセコが人気出るなんて、当たり前じゃん、と思ってた。
DJやイベントのために全国を回る生活を続けていると、その土地の変化を見守る目線になってしまう。北海道なら函館、小樽、札幌、苫小牧、旭川、帯広、それからニセコの隣にある倶知安など、各地に古い友達がいる。
当時は〈Be.〉というクラブに仲間と集まって遊んでいた。平成の終わり頃に店が閉まり、中心的存在だった五味(五味澤淳)君は、そのワンブロック先でパーティができるバーを始めた。新しい溜まり場を作った後に、いつからか五味君は料理の道に進んで、5年前からはニセコ駅前で〈ジャミー〉というスープカレーの店を開いた。ニセコが盛り上がっていくタイミングとリンクして、店は繁盛している。ニセコの西隣にある蘭越町にもずっと可愛がっている弟のような友人がいて、彼は数年前に仲間たちとガイド・カンパニーを立ち上げて、しっかりと軌道に乗せた。

〈Soice & Vibes Jamii〉
ニセコ駅隣にある、スープカレー店。店主の五味澤さんのスープカレー好きが高じてオープンした本格派で、masayaさん曰く「いつ行っても混んでて、ゆっくり話せないくらい。他のメニューも食べたいんだけど、美味しいからついチキンを頼んでしまう(笑)」。他にキーマカレーなども。
北海道虻田郡ニセコ町中央通142-5
https://www.instagram.com/jamii_niseko/

〈SPROUT〉
倶知安駅前からすぐの立地に、2009年にオープンしたカフェ。HP内にある「コーヒーを飲みながら地図を広げ、遊びに出かける作戦会議をする。」というコピーの通り、店内には雪山の途中に立ち寄る外国人で活気に溢れている。扱うコーヒーはすべて自家焙煎で、オルタナティブなショップらしい空気に満ちている。
北海道虻田郡倶知安町北一条西3-10
https://sprout-project.com/
このエリアには、本当に昔からの友だちがいる。彼らは自分たちが活躍する場所を見つけている。もちろん人が増えれば混雑もするし、今までにはなかった嫌なことも起こっているはず。ずっと身近に見ていたら、悪いことばかりじゃないとわかる。倶知安に新しくできた〈LILY HALL〉や〈meetzz〉のオーナーは、他にもいくつか店を展開しているけれど、彼女のコネクションで一流のシェフを倶知安に呼んでいる。今まででは都会に出なければできなかった体験を、ローカルの人たちも足を踏み入れたらすぐにできるわけで、変化はそれを拒まない者にとっては、新しい刺激になっている。
でもね、ニセコがこれくらい人気が出るなんて、「当たり前じゃん」って、ずっと思ってた。この北の地に通うようになってもう25年以上経つけれど、俺は外からの目線でニセコの魅力に気づいていたから。

〈LILY HALL〉
かつて家電量販店だった建物を改装し、音響を完備した〈LILY HALL〉は、カフェ〈meetzz〉の他、シルクスクリーンや刺繍などのカスタムをオーダーできるファクトリー〈MY CUSTOM STUDIO〉の入った複合スペース。展示会やポップアップなど、さまざまなイベントを行うことができる、ニセコの新しいハブに。
北海道虻田郡倶知安町南1条西2-12
https://www.instagram.com/lilyhallniseko/
レコードや機材を担いで山のトップまで登っていた。
ヒラフで〈VECTER GLIDE〉というスキーブランドの試乗会を始めた15年前には、キャンピングカーを借りて、その辺に泊まってバーベキューをしながら、毎朝、山に登っては滑っていた。レコードやターンテーブルを担いでトップまで登って試乗会をし、自分たちもパウダーで遊んで、それぞれの街に帰る。まだホテルなんてほとんどない時代。一年に一度、ヒラフで滑ることが真冬の風物詩だった。

本格的に街が大きく変わると感じたのは、〈綾ニセコ〉ができたタイミングだったと思う。2016年の冬に開業した際に、これは本当にニセコが変わるんだって思った。〈ニセコ東急 グラン・ヒラフ〉のゲレンデに直結したコンシェルジュ付きの施設なんて、俺だって定宿にしたいくらいだもの。その流れは加速している。かつて一生懸命レコードを担いで登ったゴンドラの上にも、〈NEST813〉という素晴らしいレストランができた。春になったら羊蹄山が正面に見えるだろう。大きなスピーカーが備え付けられていて、座席にはかつてゴンドラへと架け替えられる前に俺たちを乗せたリフト「センターフォー」も使われていた。街が変わるように、スキー場だって変わる。

〈綾ニセコ〉
〈ニセコ東急グラン・ヒラフ〉に直結したラグジュアリー・コンドミニアム。夏場には部屋から羊蹄山を正面に見据え、冬場には雪が降る様子を暖かい部屋から堪能できる。写真は、3ベッドルーム。定員6名、最大7名まで宿泊できるため、友人や家族との長期ステイにも。キッチンも完備している。 壁に飾られた絵画は、北海道ゆかりの彫刻家である、国松希根太によるもの。
北海道虻田郡倶知安町ニセコひらふ1条4丁目4番5号
https://www.ayaniseko.com/ja/

〈NEST813〉
〈ニセコ東急 グラン・ヒラフ〉の新しい象徴であるエースゴンドラ山頂にあるレストラン。開放的な空間に、大きなスピーカーを設置している。店内で焼き上げたパンのほか、コーンスープや和牛ローストビーフなど、アクティビティの途中にカロリー補給できるメニューが並ぶ。モーニングからアプレまで楽しめる。813という数字は、標高813mから。かつて活躍した〈センターフォー〉のリフトを使った座席に、ニセコの進化を感じる。
エースゴンドラ山頂駅舎 2F
https://www.grand-hirafu.jp/restaurants/nest813/
俺は変わる前だって知っているけれど、「昔はよかったのに」なんていう気持ちは1ミリもない。その状況を最大限に楽しむことが、自然と遊ぶ生き方だから。
スキーと同じようにずっと続けているサッカーでも、絶対にピッチは選ばない。水溜りがあっても、芝生が剥げていても、全力を出すのがスポーツだから。その思考は、DJでも同じ。音響が悪くても、お客さんが少なくても、その中でベストを尽くすことが、常に楽しさに直結しているから。



〈ALPEN NODE〉
エースゴンドラの山麓駅舎付近に、新たに生まれた音に溢れる空間。DJブースを備えたレストラン&タップルームでは、ランチからアプレ・スキー、バータイムまで、さまざまなシチュエーションで楽しめる。マサヤさん曰く「あまりアルコールを飲まない俺でも、その美味さがわかる」という。オリジナルのクラフトビールも提供し、今後はブリュワリーとしても稼働予定。ショップも併設され、豊かなスノー・ライフを支えてくれる空間に。
エースゴンドラ山麓駅舎付近
https://www.grand-hirafu.jp/restaurants/powderhood/
すべては繋がっているから、良きエネルギーを交換したい。
雪だって同じだよね。気象の問題は、その土地に大きな影響を与えていて、何が正解なのかはわからない。もちろん環境を破壊することはできるだけ避けたいし、少しでも良い未来を常に考えているけれど、雪が減ったおかげで暮らしが楽になっている人たちもたくさんいる。俺が暮らしている長野の村も、かつては豪雪地帯だったところ。この10年で雪が少なくなってきて、それならば住むことができると思って新しい暮らしを始めたくらいだから。どんな世界にいても、どんなシーンに身を置いていても、自分たちの利だけを考えずに生きていけば良いのかな、とは思う。世界中の人たちと音楽やスポーツを通じて仲良くなれば、あいつらとは親の代から仲良しだから、喧嘩もできないなってなるでしょう。そういうマインドの部分で、プラスのエネルギーを与えられる人間でいたい。
小学生の頃に、気象クラブに所属して、ラジオを聴いて天気図を書いたりしていた。その時にテレコネクションというワードを学んだ。すべての環境は繋がっているというような意味だけど、それが俺の活動の原動力になっているんだと思う。繋がりが与えるエネルギーはすごいから。

〈toyru〉
マサヤさんが憧れるスキーヤー、高梨穣さんが営む名店は、雪山で遊ぶための、本当に使える「道具」が揃うプロショップ。また、「雪と身体の繋がり」をテーマとしたオリジナルブランド「テシマスキー」も扱っている。「テシマ」とはアイヌ語で「TES=滑る、MA=泳ぐ」の意。ニセコの自然環境を楽しむためのバックカントリー・ガイドや、テレマークスキーのスクールなども行なっている。
北海道虻田郡倶知安町ニセコひらふ一条三丁目1−8
http://www.toyru.com/
もちろんスキーヤーとしては雪が減ってしまったら悲しいけれど、カッコいいスキーヤーは、やっぱり雪を選ばないから。ニセコで長く店をやっている〈toyru〉の高梨穣さんは、俺がかっこいいなと思っている憧れのヒーローの1人。スタイリッシュな滑りと、地元に根ざした生き方と、ニセコには雪の世界のレジェンドたちが暮らしている。彼らも街の変化に対して文句を言うことなんてない。雪の変化に柔軟に対応するのと同じように、街の変化にも対応しつつ、守るべきもの、より良い未来の在り方を啓発しながら、まだまだ自分たちしか知らない雪山の魅力を探求しているから。
俺だってアスリートとして常に上手くなりたいけどね。どれだけ滑っても、「今日の俺の滑りはよかった」なんて、満足できることはないから。子どもの頃からスキーに魅せられて、バックカントリーが滑りたくて、山の地形を把握するために夏の山にも登るようになった。それが高じてクライミング・ジムを立ち上げたくらい、人生の中心にスキーがある。音楽と同じようにスキーに対する探求は終わりがない。
でもね、今は、ただ楽しむ尊さに帰ってきた気がする。もちろんパウダーに興奮する自分もいるけれど、どんな雪だって楽しい。ヒューヒュー言いながら、子どもたちと同じように、全身で喜びを表しながら滑る。思いっきりボーゲンでニコニコしながら滑ってくる子どもたちほど、スキーの本質を表しているスキーヤーはいないから。
シャーベット状のパウダー、“シャウダー”の愉楽。

写真/渡辺洋一「トイル代表 高梨 穣 マザーツリー」
あらゆる面から見て、ニセコは、本当に最高だから。先人たちが整備したバックカントリーに入るためのルールもよくできているし、培われた知識や経験もきちんと伝わっていると思う。ゲレンデだって風向きによって雪が溜まることはあるし、ゴンドラに乗れば、すぐにビッグマウンテンの世界に入っていける。それは、世界中から人が集まるよ。
〈ニセコ東急 グラン・ヒラフ〉のオススメは、海外からやってくるスキーヤーが減っていく春。どんよりとした曇天ではなく、晴天率も高くなって、スキーをしながら雄大な羊蹄山がはっきりと望める。シャーベット状になったパウダーを「シャウダー」って呼んでるけど、これだけの雪がほとんど残ったまま「シャウダー」になるから、春も最高なんだ。その時には、亡くなった友人が立ち上げた「HEIWAX」が大活躍する。春の雪の上を滑るたびに、亡き友を思い出す。これも俺にとっての風物詩。春のスキーは、暖かくて、明るくて、特別な時間だから。ニセコの友人たちもみんな春を楽しみに待ってるよ。

写真/渡辺洋一「羊蹄を望む」

ニセコ東急 グラン・ヒラフ
世界に誇る雪質と、ニセコを形成する4つのスキー場(ニセコユナイテッド)でも最大のスキー場。ナイターで滑れるコースも多く、アフタースキーも充実。ゴールデンウィークまで滑れる春スキーも特におすすめ。
北海道虻田(あぶた)郡倶知安(くっちゃん)町
ニセコひらふ1条2丁目9番1号
https://www.grand-hirafu.jp/
Profile

マサヤ・ファンタジスタ/〈Jazzy sport〉代表。幼少期からスキーに親しむ。レコード店運営やレコード・レーベルを軸としながら、自らDJとしても活動。音楽イベントを通じた山岳スポーツの振興に長年携わっている。現在は、長野県長和町に移り住み、犬たちのレスキュー、保護活動〈JAZZY DOG LIFFE〉も行っている。
https://jazzydog-life.com/



