バク転にリンゴ潰し、始球式で快投。憧れの技を今こそ習得!

誰もが一度は「やってみたい」と思う、あんな技やこんな技。思い立った今が始めどき。その道のプロたちに、会得のコツと必要なトレーニングを教わりました。

取材・文/松浦達也 撮影/木村心保 ヘア&メイク/村田真弓(五十嵐亮太さん)

初出『Tarzan』No.917・2026年1月5日発売

東急・護身術・バスケ・リンゴ潰し・バク転などの画像を組み合わせた

始球式で18.44mを投げきりたい。

五十嵐亮太(いがらし・りょうた)/1979年生まれ、北海道出身。MAX158km/hを公式戦で3球連続記録した快速右腕。日米通算906試合に登板し、日本一5回、最優秀救援投手など。NPB&MLBの経験を機知に富んだ解説に。

五十嵐亮太

「明日始球式よろしく」と頼まれても二つ返事で引き受ける。そんな投球ができる大人になりたい。

「正しいカラダの使い方を覚えれば、誰でも18.44m、糸を引くようなボールを投げることができます。誰でもです」と快速右腕の五十嵐亮太さんは断言する。

そのために必要なのは「連動する全身の動きをいかにロスなく指先からボールに伝達できるか」。

  1. 腕を加速させるスペースを作る
  2. カラダを動かす軸を安定させる
  3. カラダのしなり、捻転、体重移動を連動させてリリースする瞬間に指先で爆発させる。

分解すると難しそうにも聞こえるが「要は投げ釣りの釣り竿のようにカラダを使うイメージ。正しいカラダの使い方ができれば、男性なら120km、女性でも90kmは堅い。届かせることばかり考えるとフォームも球の軌道も格好悪くなる。格好いいフォームなら、必ずいいボールが投げられます」。

イメージすれば結果はついてくる。「まずは形から」で大正解。

握り方を学ぶ!

ボールの握り方の画像

すべては正しい握りから。ボールが1回転したとき、軸に対して縫い目が4回通る4シームの握りが基本。縫い目に人差し指と中指の指先をかける。指の間隔は指1本分が目安。

正しいフォームを学ぶ!

1.カラダは横向き90度

1.カラダは横向き90度

始動の姿勢は全身を横向き90度に。投球動作の後半でカラダを回転させる余地を確保する。投球動作の前半はこの角度をキープ。カラダを開かない。

2.軸足に体重を置く

2.軸足に体重を置く

軸足は拇趾球を中心に足裏全体に全体重を乗せ、左足は内側に絞るようにベルトラインより上まで上げる。内腿から頭まで一本の軸を通すイメージ。

3.まだカラダは開かない

3.まだカラダは開かない

軸足の重心を落としながら、前方へ体重移動を開始。あくまで体軸は垂直に。カラダは横向き90度をキープし、左手も開かず、体軸バランスを取る。

4.下半身から捻転

4.下半身から捻転

投げる方向に足を踏み出し、着地と同時に利き手をトップの位置へ。下半身は軸足を蹴るように体重移動し、上半身の軸は垂直を保ち、意識は前へ。

5.全身を釣り竿化

5.全身を釣り竿化

前足に体重を乗せ、一瞬遅れて垂直軸を保った上半身を振り出す。下半身→上半身→腕→指先までが一体となった釣り竿を前方に振るイメージ。

6.指先で球を切る

5.指先で球を切る

縫い目にかけた指先を、下にピッと切るように肘から先まで振り切る。カラダが左に流れないよう、体軸は踏み出した足の内側の上に立てる意識で。

NG

軸足内側に体重が乗っていない、不安定な立ち上がり

軸足内側に体重が乗っていない、不安定な立ち上がり。左足も上がり切っておらず、股関節のパワーが使えない。

上半身の開きが早く、体軸が上を向き始めた

軸足に体重が乗っていないのに、「届かせたい」という意識が強すぎる。上半身の開きが早く、体軸が上を向き始めた。

体重移動と捻転がないまま、上体が完全に上を向いて開いている

体重移動と捻転がないまま、上体が完全に上を向いて開いている。エネルギーが直線的にホーム方向に向かっていない。

下半身→上半身→指先までの連動がないまま、手を前に出す手投げになっている

下半身→上半身→指先までの連動がないまま、手を前に出す手投げになっている。どう見ても格好いいとは言えない形。

トレーニングを学ぶ!

オーバーヘッドスクワット|体軸と可動域を作る。

オーバーヘッドスクワット

組んだ手のひらを上に向けて伸ばした、股関節の柔軟性が要求される状態でスクワットを行う。足の幅は肩幅。脛、太腿、背骨に90度ずつ角度をつける。

サイドスクワット|股関節の柔軟と筋力を作る。

サイドスクワット

両手のひらを組んで前に出した状態で、両足それぞれに自重をかけて膝を90度まで曲げたスクワットを行う。筋力をつけながら、股関節の可動域も広げる。

シャドウピッチング|投球フォームのトップを覚える。

シャドウピッチング

両足を肩幅よりも広げて、利き手をトップの位置まで引き上げ、そこから立ち投げシャドウピッチング。上半身と下半身の連動性がより一層体感できる。

一撃必殺を習得したい。

藤原 斉(ふじわら・ひとし)/京都府出身。海上保安庁に20年勤務し、全国警察逮捕術大会3連覇、長官表彰3回受賞。クラヴマガ・ジャパン リードインストラクターとして護身術の普及に尽力する。

藤原 斉

無差別通り魔からぶつかりおじさんまでが横行する現代社会。護身術の達人〈クラヴマガ・ジャパン〉の藤原斉さんに、万一の際の心構えと一撃必殺術を聞いた。

「大切なのはいきなりの危機にも対応できる心身を作ること。そして一撃は危機を避けるための手段と割り切ることです。間違っても戦う手段と考えてはいけません」

いきなりの危機に瀕すると、人は固まってしまうもの。第一段階は“フリーズ”状態からの脱出だ。

「まずは手を前に出して“落ち着いてください”と相手をなだめます。この手で距離も取れますし、自分の平常心を取り戻す時間稼ぎにもなる。避けるふりをして、相手の目を払って怯ませるなどの動作にもつなげられます」

藤原 斉

それでも襲い来る危機から身を守るには、股間蹴りを覚えたい。大切なのは思い切り。下半身を安定させて、確実に当てていこう。

「ピンポイントで当てなくていいんです。蹴り上げた足の甲から脛までのどこかが股間周辺に当たれば、十分痛い。男性はもちろん、女性でもかなり痛いと聞きます。あくまで逃げるための時間稼ぎで、身を守るための一撃です」

三十六計逃げるに如かず。金的は、戦略的撤退のための戦術だ。

アンクルホップ|バランス感覚を調える。

アンクルホップ

縄跳びのイメージで、足首のバネを使って跳ねる。リズミカルに前後、左右、時計回り、反時計回り、三角などのバリエーションで、バランス感覚も。

小刻みダッシュ|いざ!に反応できるスイッチを作る。

小刻みダッシュ

他人からの合図で小刻みなダッシュとストップを繰り返し、カラダのスイッチを入れやすくする。一人でやるならドラマのシーン転換などを活用して。

ダンクシュートを決めてみたい。

中川直之(なかがわ・なおゆき)/1982年生まれ、山口県出身。大学・実業団で計10度の日本一、実業団3冠などを達成。現在〈考えるバスケットの会〉代表としてYouTubeや全国でのクリニックで指導活動中。

中川直之

「ダンクなんて身長次第」と諦めるのは早い。バスケ日本一10回のレジェンド、中川直之さんは「カラダの使い方次第で、ジャンプは劇的に変わります」と断言する。

「日本人はカラダの背面の筋肉の使い方がヘタなんです。なのに前側とつながる“拇趾球”ばかり重視するから高く跳べないんです」

ハムストリングスや腸腰筋など推進力を生む“アクセル筋”を使えるようになることが重要なのだ。

「小指起点の筋肉を意識して、ふくらはぎから背面まで続く筋群を鍛え、使えるようになるとジャンプ力は劇的に向上します」

実はNBAプレイヤーのダンク記録は身長170cm。

小指カーフレイズ|後ろの筋肉を呼び起こす。

小指カーフレイズ

玄関などの段差上段に足の外側(薬指と小指側)を乗せて立つ。中級は逆足を軽く振り、負荷をかける。上級は薬指と小指で体重を支え、踵を上げる。

腸腰筋ストレッチ|腸腰筋を縮めて刺激。

腸腰筋ストレッチ

脚の付け根の横側あたりを指で押しながら足踏みしてインナーマッスルの腸腰筋を確認。付け根から膝を前に90度上げ、横に90度開いて1分間キープ。

リンゴを素手で潰したい。

福島善成(ふくしま・よしなり)/1977年生まれ、熊本県出身。お笑いコンビ〈ガリットチュウ〉のボケ担当。柔道2段、2023年ブラジリアン柔術世界大会優勝、25年欧州選手権制覇。腕相撲は元大関にも勝利。

福島善成

「リンゴを素手で潰す」。意味不明だが何かすごい、この怪力芸は体得できる? 芸能界No1アームレスラー、〈ガリットチュウ〉の福島善成さんは「鍛えれば誰でもできるのでは」と目を光らせる。

「親指を使わない“サムレス”トレーニングが効果的です。つい握る力ばかり鍛えたくなりますが、開く力も鍛えることでバランスが取れ、握力が向上します」

リンゴのような自然な形のものを潰したければ、トレーニング機器頼みでなく自然派がおすすめ。

「潰すコツは一撃ではなく、数回に分けて力を加えること。意外と潰せるかも」というアドバイスに従ってみたら、確かに行けそう!

グーパー運動|前腕の伸筋と屈筋を鍛える。

グーパー運動

親指を握り込まず、「開く」を意識してグーパーを繰り返す。1秒に1〜2回のペースで30回。腕の角度をより上げたパターンも組み込むとより効果的。

ボトルグリップ|上半身全体を鍛える。

ボトルグリップ

ペットボトルもサムレスで持ってさまざまな握り方を繰り返す。ボトルの位置や方向を変え、上半身全体で握り込む意識を持てば効果も倍増する。

マッスルアップができるようになりたい。

池谷幸雄(いけたに・ゆきお)/1970年生まれ、東京都出身。ソウル、バルセロナ五輪で計4個のメダルを獲得。引退後〈池谷幸雄体操倶楽部〉を設立し、世界女王・村上茉愛らを輩出。タレントとしても活躍中。

池谷幸雄さん

筋トレをしてもマッスルアップ(懸垂から体を乗り上げる技)ができない。筋肉なしにはもっとできない。効果的な筋トレとマッスルアップのコツを五輪メダリストの池谷幸雄さんに聞いた。

「まず、角度を変えながらの斜め懸垂。マッスルアップは同じ筋肉でもさまざまな使い方が要求されます。稼働域を大きく使うために反動を出せる高い鉄棒を使う方が成功しやすいですね」

鉄棒への下がり方もひと工夫。順手を奥側に巻くように深く持ち、前後に揺れて勢いを使って上に上がる。ここで斜め後方から旋回する意識で上げると成功しやすい。

「最後に手首をグッと前に入れるように上体を前方へ持っていく」

継続とコツで駆け上がれ!

池谷幸雄

斜め懸垂|肩の角度を変えて負荷を変える。

斜め懸垂

斜め懸垂は角度によって使う筋肉と負荷が変わる。上半身の総合力が問われるので、鉄棒の高さやスピードを変えて、いろいろな角度に取り組みたい。

バク転をきめてみたい。

「いつかはバク転」。誰もが一度は持つ野望だ。しかし真剣に挑む人をほとんど見たことがない。

やるなら今年だ。「加齢が進むとカラダが硬くなって、確実に難しくなっていきます。でもたとえ40〜50代になったとしても、真剣に取り組めば、2026年中に十分実現できます」(池谷さん)

バク転は、1.フィジカル、2.メンタル、3.技術という3つの要素を鍛えなければならない。

特に1.のフィジカルは、筋力と柔軟性がともに必要だ。腹筋や背筋以外にも足腰や肩まわりの筋力が求められる。加えて柔軟性。入念なブリッジで背中や腰、肩を柔らかくする。2.は後方に跳ぶ恐怖心の克服。マットを敷いて、後方に倒れる練習を繰り返す。3.大きく腕を振って遠心力の力を借りる。やるべきことは山積みだ。

だが何より必要なのが指導者とマットなどの環境一式。池谷さんの倶楽部には、バク転用の補助具、バレルローラーまであった。

「ただバク転は補助者が命です!一人では絶対トライしないで」

後ろ向きに跳ぶなら安全第一。それこそが前向きな姿勢なのだ。

55歳、一発勝負でメダリストが決めた!

バク転している池谷幸雄選手

  1. 腕を振り上げ、遠心力を発動する。沈み込み、跳び上がる準備をする。
  2. 思い切りよく、後方に跳び上がる。
  3. ブリッジのように背中を伸ばして、手の着地点を見る。
  4. 手をついたら、腹筋の力で足をグンと後方に振り出し、伸身で着地する。
腕振り3ステップ|予備動作を覚える。

腕振り3ステップ

1・2・3のリズムで垂直にジャンプする。1.両腕を下から前方90度に振り出す。2.かがみ込んで、手を後方に振る。3.上方へ勢いよく腕を振り上げ、ジャンプする。

バックダイブ|背後の恐怖心を取り去る。

バックダイブ

同じく1・2・3のリズムで1.腕を前へ振り出し、2.かがみ込んだら、腕を耳の横まで振り上げる。3.でジャンプせず、カラダを伸ばして後方に倒れ込む。

ブリッジ|筋肉の連動力を高める!その1

ブリッジ

仰向けからお腹を持ち上げ、高いアーチのブリッジを作る。上級者はそこから床を蹴り、腹筋などカラダの前面の筋肉を使って倒立、回転して疑似バク転を完成させる。

壁逆立ち|筋肉の連動力を高める!その2

壁逆立ち

壁を背に立ち、手をつく。壁に対して腹這いになるように足で壁を上る。逆立ちできたら、手で歩くようにカラダを壁に近づけ、全身が壁と平行になるよう直立する。