ウチサカさんのトレイル案内。[若くして世界を制した天性の山岳ランナー・近江竜之介を京都に訪ねて。]

本誌『ターザン』の連載『Tarzan Trails』では、トレイルラニングの楽しさを伝えるべく、毎号おすすめのコースとGPSデータを公開中。今回は番外編。5歳にして地元・京都の山々を走り始め、数々の世界大会に挑戦。現在は〈サロモン〉契約アスリートを務める、プロ山岳ランナーの近江竜之介さんを紹介します。

text: Tsuneo Uchisaka photo: Sho Fujimaki trail runner: Omi ryunosuke

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ウチサカさんってこんな人

いつもはコースガイドやレース報告をしているけど、今回はアスリートの紹介、京都出身の近江竜之介さんです。

Profile

近江竜之介(おうみ・りゅうのすけ)/プロトレイルランナー。2001年生まれ、京都市出身。5歳にして大会で勝つためにトレーニングとして山を走る。24年スペイン・カタルーニャのバガに1年間暮らし、25年から〈サロモン・インターナショナル・ランニング・チーム〉メンバーとして活躍。26年春からフランス・ピレネーへ移住予定。

『富士登山競走』を2023年と24年に2連覇、それも21歳と22歳という若さで、と聞けばどんな人かおわかりでしょう。さらに若く16歳でイタリアの『ユース・スカイランニング世界選手権U17』優勝と聞けばもっとびっくりです。

さて、日本ではあまりピンと来ないけどヨーロッパのトレイルラニングは、地域のクラブチームがその育成に大きな役割を果たしています。野球のリトルリーグや、サッカーのジュニア/ユースと同じふう。欧州の山岳地域では子供たちが毎日のように山を走り、大会に出ています。

そしてクラブの頂点にあるのがプロのワークスチーム。〈ホカ〉〈サロモン〉〈アディダス〉〈アシックス〉などのシューズブランドが主で、世界中からエリート中のエリート選手を集めています。もちろんメジャー大会でいい成績をおさめ、ブランドをアピールしてもらいたいから。

近江さんは2025年から〈サロモン〉のグローバルの選手としてフランス本社と契約しています。野球でいえば同じプロでもNPBではなくMLBの〈ドジャース〉に入団したようなもの、サッカーならJリーグではなく〈レアル・マドリード〉に移籍したようなもの、そのくらいすごいこと。

たとえば、冬、春、夏の3回、世界中からチームメンバー(20名ほど)が集まって、育成・強化のキャンプが行われています。

「サロモンはフランスの会社なので『ツール・ド・フランス』(世界最大の自転車レース)のチーム作りに似ています。強化のためにコーチや栄養士、シェフなどを『ツール・ド・フランス』から引き抜いていますし、僕にも専属のコーチをつけてくれました」と近江さん。

「本社のワークスチーム」、正式名称は〈サロモン・インターナショナル・ランニング・チーム〉。手を挙げれば誰でも契約してもらえるわけではありません。近江さんは2024年に1年間スペインの山岳地に滞在してトレラン武者修行を行っていて、5月に『スペイン/トランスブルカニアVK』『スペイン/ゼガマVK』のふたつで優勝。この戦績を手に〈サロモン〉の扉を叩き、招き入れてもらったというわけです。

「勝ちたくて」山を走ったのは5歳から。

ランとバイクのSNS「ストラバ」のセグメント「愛宕山参道」で 最速記録「29分12秒」を持っている。

近江さんは最初からすごい。5歳から(父親に連れられて)近所の嵐山や愛宕山を走っています。しかも「幼稚園に持久走大会があって、毎年それに優勝したくて、だから山を走っていました」と。5歳で「勝ちたくて」「山を走る」です。

初めてのトレランレースは小3、『大阪ダイヤモンドトレール』登山の部。年齢的に「トレイルラン」種目には出場できず、保護者(父親)と一緒に「登山」種目に出て「走った」のです。竜之介少年は30kmをおよそ5時間で走破しました。

小さい頃から桁外れな近江さん、今年4月、またも移住を計画しています。ピレネーのフォンロムー(標高1800m)、ここはフランス国立トレーニングセンターがあって、高地トレーニングのメッカ。ここを拠点に各国の主要大会に出場する予定です。さあ、いったいどんな結果を出してくれるのでしょう?

実家近くの嵐山と愛宕山(比叡山より高い924m)が近江さんの「庭」。勝ちを狙った幼稚園持久走大会の公園も麓にある。