内村航平さんの集中力。秘訣は「徹底した日々のルーティン化」にあった!
集中力を高めるため、現役時代の十数年間にわたり徹底したルーティンを続けていた内村航平さん。数々の大舞台を制した、集中力のコントロール術とは。
text: Soh Kuroda photo: Kenya Abe
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Profile
内村航平(うちむら・こうへい)/1989年生まれ。2008年北京から21年東京までオリンピック4大会で個人総合2連覇を含む7個のメダルを獲得し、世界選手権個人総合では6連覇を達成した体操界のレジェンド。
現役時代の十数年間は毎日同じ時間軸での生活。
内村航平さんが実践する脳にいい習慣。
- 毎日、同じ時間に同じ行動をする。
- 集中力をあえて意識的に切る。
- 自分のことを客観的に理解する。
- スイッチとなる動きを作る。
4大会連続出場のオリンピックで個人、団体で金3個、銀4個を獲得し、「史上最高の体操選手」と呼ばれる内村航平さん。2022年に引退し、今年4月に開校したアカデミーで子どもたちを指導する彼は、第一線で活躍していた当時、どんな方法で脳のパフォーマンスを高めていたのだろう。
「試合で集中力をいかに高めるか。そのことに注力していました。技を繰り出すうえで、判断力や瞬発力も当然必要なんですけど、それらを高めるのは練習の段階で終わっている。なので、集中力さえ切らさなければ絶対に最高の演技ができると思っていましたね」

劇的な大逆転で、男子団体と個人総合で金を獲得したリオ五輪での雄姿。集中力を超えた極限の状態だったとか。photo/Aflo
集中力を高めるべく行っていたことの一つが、毎日同じ時間に同じ行動をするというもの。
「朝起きて練習場へ行き午前練習をして、一度家に戻る。その後、再度練習場へ行き午後練習。終わったら食事をし、風呂に入って寝る。このスケジュールが毎日分単位で同じでした。洗顔や歯磨きの順番も一緒。時計を見なくても無意識に同じ時間軸で行動できていたし、それは遠征先でも基本的に変わりませんでした」
大学生の頃、初めて世界選手権個人で優勝した頃からこの習慣は始まったという。
「どうすれば世界一の状態をキープできるかと考えた時に、毎日同じように過ごしてメンタルを一定に保ち、質の高い練習をすればそう負けることはないだろうと。そこで、いいコンディションだった日にどう過ごしていたかを振り返り、それと同じルーティンで生活しようと決めました」
会食など、断れる誘いは全部断った。週2日の休日は昼まで寝て疲れを取り、午後は体操の動画を見て研究した。さらにはテレビ、ネットにも一切触れなかった。
「休日も、カラダは動かさないけど脳内では体操しているみたいな状態ですね。そんな生活をしばらく続けると練習時の集中力が格段に上がったし、オンとオフの切り替えが自然にできるようになりました。家に帰ればオフモードになるし、体操の動画を見ればオンになる。同じルーティンで生活することで、体操のことを考えた時に勝手に集中モードに入るようになったんです」
逆に、試合が近づくと意識的に集中力を切るようにしたという。
「過集中すると心身が持たないので、そういう時は家でも体操の動画は見ない。体操に触れない時間を作って集中力を切ると、またいざという場面で集中力を一気に上げられるバッファができるんです。試合の日は、予選から決勝に向かう数時間の中で集中力をコントロールできるようにもなりましたね。僕の場合は本番前に顔の前で両手を並べるポーズで集中力を高めていましたが、皆さんの場合もそうしたルーティンがあると集中力のスイッチが入りやすくなると思いますよ」

両手を顔の前で上下に並べるおなじみのポーズ。「最初はカラダの軸がブレないようにと始めたのですが、次第に集中力を高めるためのスイッチに」。
なぜそこまで突き詰めることができたか。それは内村さんが3歳で、体操という生涯を捧げるに値する競技に出合ったからだ。
「特に体操は採点競技なので、自らを客観的に見る癖は子どもの頃からついていたのですが、自分の行いが他人にどう見えるかを脳が理解すると、より日々の行動が洗練される気がします。さらに自分にとって大切な物事が見えてくると、そこに向かう道筋も自然と無駄がなくなる。脳が自然といい方向に向けてくれるというか」

〈UCHIMURA SPORTS ACADEMY〉で子どもたちを指導する内村さん。
自己肯定感への関心が高まる昨今、こうした客観性を身につけると、他人に認められたいというベクトルを自分に向けられるようになるのでは、と内村さん。
「ネットの意見に引っ張られがちな今の時代こそ、脳内をある程度コントロールできる術を会得することで、より自分のことがわかるようになると思うんです」

運動能力と視覚、聴覚を連動させるなど、脳を活性化させるプログラムを組んでいる。「規則正しく、列を作って並ぶことでも彼らの集中力は高まるんです」。

