スマホの充電は2日に1回。前頭前野に効く「脳トレ」集。
脳のパフォーマンスを高めるには、特別なことをする必要はない。日常のちょっとした行動を脳トレに変える方法を、脳トレの第一人者・川島隆太さんに教えてもらった。
text: Taichi Abe, Hana Funaoka illustration: Bob Foundation edit: Taichi Abe
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教えてくれた人
川島隆太(かわしま・りゅうた)/脳科学カンパニー〈(株)NeU〉取締役CBSO(Chief Brain Science Officer)であり、医学博士。東北大学加齢医学研究所の教授も務める。2005年発売の《脳を鍛える大人のDSトレーニング》を監修し、26年7月には脳トレ第2弾として《Thinkie(シンキィ)》を発表。
朝|一日の始まりから脳を鍛える。
まずは食事をしっかりバランスよく。

脳はカラダの司令塔。だからこそ、摂取した栄養は、優先的に脳へと送られることになる。頭を使う時の基本的なエネルギー源としてはもちろんのこと、トレーニングして脳をバージョンアップする意味でも食事は重要。筋力トレーニングと同様に、エクササイズだけではダメ。食事もしっかりと摂ることが必要になってくる。
午前中からしっかりと脳を働かせ、ビルドアップするためには朝食をしっかり摂ること。頭を回転させるのに大事になるのはブドウ糖などだが、“何かを重点的に”ではなく“バランスよく”を心がけたい。
通勤・通学の電車内では文庫本を読む。
電車に乗るとほとんどの人たちがスマホを見ながら時間を過ごす昨今、「デジタル機器の使用を控えて文庫本を読むだけで、脳のバージョンアップに雲泥の差がつきます」と語る川島さん。
難解な内容の作品を深く考えながらじっくり読むよりも、簡単な内容をなるべく速く読むほうが、前頭前野の情報処理のスピードアップに効果的。
川島さんのおすすめは、ライトノベルをはじめとした気軽に読める作品。さらに、読んだ内容を自分の中でまとめて人に話せる状態にしておくことは、ワーキングメモリの拡張に繫がるのでおすすめ。
目についた数字で10を作ってみる。
看板に書かれた店の電話番号や住所など、歩いていると目に入る街中の数字もトレーニングの一助となる。
例えば、車のナンバープレート。そこに書かれた4桁の数字を使い、足し算・引き算・掛け算・割り算という四則演算を用いて「10」や「1」を作ってみるのも脳のトレーニングとして効果的。
ここでも、心がけるべきは“できるだけ速く”の意識を持って取り組んでみること。“言葉”と同様に難解な問題より、簡単な計算を迅速に行うことが重要。自分にとっての最大限のパフォーマンスを目指すことが大事なのだ。
段取りのよい家事の組み立てを。

掃除、洗濯、食事の準備……平日や休日を問わず、朝はやるべきことがたくさんあるもの。これらを効率よくこなすことも脳のトレーニングとなる。
例えば、先に洗濯機を回しておいて、その間に掃除をしてみる。掃除が終わったら炊飯器のスイッチを入れておき、洗濯物を干し終わったタイミングでご飯が炊けている状態に……といった具合に先を予測して段取りを組むことで前頭前野のワーキングメモリが拡張していく。その後の一日の予定も“効率”に注目しながら組み立ててみるのもおすすめのトレーニング方法。
日中|人との関わりで脳を使う。
人を騙すこともトレーニングに。

“人を騙す”ことはモラルに反するところではあるものの、脳をトレーニングするという観点においては効果が見られる行為。
「人を騙すという行為は1歳児と2歳児ではできないことが分かっています。また、他の動物に関しても実行不可能です。人間が3歳くらいになってようやく身に付く極めて高度なアクションなのです。相手の反応を見ますからワーキングメモリを使い、前頭葉が活発に動いていることが脳の実験でも分かりました」。
トレーニングとして有効だとはいえ、くれぐれも相手のことを傷つけないようにご注意を。
名詞に関連する動詞や形容詞を考える。
まずは名詞をひとつ思い浮かべる。例えば目の前にある「コーヒー」。この名詞に関連する動詞は「飲む」とか「淹れる」だし、形容詞なら「熱い」とか「苦い」などが考えられる。
この言葉の連想ゲームを行うことで、言葉を作り出す脳のパートと、話し言葉の意味を理解する脳のパートが働くとともに、脳のバージョンアップに大事な前頭前野が働くようになる。
「脳の計測実験でも判明したのですが、使う言語や国籍によらず、この反応が脳内で起きることが分かりました。日本語だけの反応・効果ではありません」。
対面でプレゼンテーションをする。
プレゼンには事前の準備が必要。相手に見せる資料を準備していてもそのまま読み上げるわけにはいかない。どうやって相手に納得してもらい、魅力的な内容に見せるかを想像しながら考えなくてはならない。
プレゼンの現場では、そのために相手の反応や表情を見ながら、フレキシブルに内容や言い回しをアレンジする必要が。
相手に伝える内容を言語化すること、相手の反応を読むという非言語コミュニケーションをとろうとすることは、言葉の意味を理解する役割を担う部分や物を見るパートとともに前頭前野が働くのだ。
ランチはひとりではなく誰かと一緒に。

会社員なら昼休みの時間も限られているし、ランチはスマホの画面を見ながらひとりで摂る、という人も少なくないはず。ただ、脳のトレーニングの観点からすると、誰かと対面で一緒にランチを摂ることを心がけたい。
言葉を考えることは、これまでも解説してきた通り、前頭前野を活性化する良いきっかけ。さらには対面で話をすると身ぶりや手ぶり、表情をヒントにコミュニケーションをとるようになるので、さらに脳は鍛えられる。
一緒に食べる人は、なるべく自分がたくさん発言できる関係性や人数がベスト。
夜|脳を休ませ、守る。
スマホの充電は2日に1回で。

ツールとしての利用に留まらず、何となく長時間の利用をしてしまうと、脳にはネガティブな影響を与えてしまうスマートフォン。
「スマホを持たずに生活するのは難しいかもしれませんね。それなら少しゲーム性を持たせて、充電を2日に1回にして、バッテリーをもたせる生活を送るというトライアルをしてみてはどうでしょうか。漫然と眺めてしまうSNSやウェブサイトを見ずに、必要最低限の連絡だけなら、2日に1回の充電で大丈夫なはずです」
ネガティブな要素を避ける行動もトレーニングのひとつなのだ。
ひと駅前から違ったルートで帰る。
「脳のビルドアップという意味では、少し効果を期待しづらいかもしれませんが、脳の機能低下を防ぐディフェンシブなトレーニングとして、いつもとは違った道で帰ることは有効です」。
毎日使っている降車駅よりひと駅前で降りて風景や自分の方角感をもとにルートを考えて帰宅すると、前頭前野は程よく働く。
ただ、このアクションで特に働きトレーニングされているのは、周りにあるものの場所や位置の関係を伝えるパートである頭頂連合野。文字通り、頭のてっぺんにあり、空間を認知する役割を担っている。
ラジオやポッドキャストの内容をまとめる。
帰宅時や帰宅後にラジオアプリやポッドキャストで音声メディアを楽しむ際も、脳は盛んに動いている。例えば、左右の側頭葉では聞こえた声が何であるかを調べたり、聞いた内容を頭の中で思い浮かべることで後頭葉が働くことが分かっている。
脳のトレーニングという見地においては、さらに実践したいのが聞いた内容を自分の頭の中でまとめること。翌日のランチ時に友達に話すためでもいいし、仕事に役立てるためでもいい。他人に話そうという姿勢で内容をまとめてみると、前頭前野が働くようになるのだ。
すべては“よい睡眠”のために。

脳のトレーニングにおいて、食事が持つ重要性は前述の通りだが、同じく大事なのは睡眠。こちらも筋トレと同じだ。
「よいトレーニングができても睡眠の質や量がいまいちなら、その効果は最大限に発揮されません。よい睡眠をとることに向けた時間の過ごし方もとても大事です」。
例えば、脳を興奮させるカフェインは人によって半減期に6時間以上かかる人もいますから夕方以降は飲まないとか、導眠剤ともいえる物質を脳内に分泌させる日光を昼間に浴びておくなど、睡眠にこだわることは必須事項。
