内なる静けさと向き合うために走るアーティスト、ジェフ・マクフェトリッジが、〈ルルレモン〉で表現したこと。

カナダ・バンクーバーで創業した高機能アスレチックウェアブランド、〈ルルレモン(lululemon)〉と、アーティストで、ランナーでもあるジェフ・マクフェトリッジ(Geoff McFetridge)のコラボレーションが実現。ミニマルなランニングウェアと日常向けのウェア、アクセサリーで構成されたカプセルコレクションが発売中だ。グラフィックデザインを出発点に、絵画やドローイング、テキスタイルデザイン、アニメーションから映画まで多岐にわたる表現を試みてきたジェフ。ミニマルな線や図形、文字を用いた作品で知られる彼が、今回のコレクションで掲げたテーマは「Amplify the Quiet=静けさを深める」。このコレクションに込めた想いと走ることについて訊いた。

text: Aika Kawada

東京のローカルランナーを招いたイベントを開催。代々木公園にあるトレイルを5kmほど走って交流。

イベントでは、本コレクションのために描き下ろした数々の作品も展示。

アーティストとして活動しながら走り、自然や人との関わりを楽しむ。

――普段はどのくらいのペースで走られているのですか?
ジェフ・マクフェトリッジ(以下G)
週に5〜6日走っています。距離的には1日あたり4マイルから長い時で15マイル。15マイル以上(20km以上)の長い距離を走るのはすごく珍しいことで、普段は大体5kmから7kmくらい走っています。
――日本に親しみがあるとのことですが、東京でも走られたりするのでしょうか?
G
今回の滞在中も3回走りました。皇居の周りとか代々木公園の周辺を走りましたね。実はアリゾナで開催されるレース「Saddles 50 Miler」への出場を控えていて、トレーニング中なんです。目標があって、プッシュしていくのは良いことですよね。
――スキーやサーフィンもされますが、ランニングを始めたのはなぜ?
G
長らくカナダに住んでいて、自然の中で育ちました。 両親からマラソンに出たらどうかと言われて、その影響で走るようになりました。中学生の時には、真剣にクロスカントリーランニングをしていました。その後、LAに移ってからもランニングを続けていました。みんな、スケートボードをしていたけど、僕の場合はスケートもランニングも続けました。ランニング界隈の友達は1人だけで、一緒に走っていました。

イベントで展示の説明をするジェフ。彼のクリエーションを支えたり、刺激してきたアイテムたちをデスクに並べて。

マーカーや定規、マスキングテープに加えて、虫除けシート、自らのスケッチも。

マラソン大会のビブスも登場。

――スポーツや運動が、ご自身の創作活動にどのような良い作用がありますか?
G
世界のいろんなところに行くこともできるし、日々の暮らしの一環として、さらに人と出会うきっかけや社交の場として、人生に素晴らしい経験や繋がりを与えてくれています。
――ランニングギアやシューズへのこだわりはありますか?
G
いろんなシューズを試してきましたが、クッション性があるぶ厚い靴より、ベアフットサンダルやシンプルな靴が好きですね。足裏に路面からのフィードバックを得られるシューズが好きです。この手のソールだと、走りながら路面へのアプローチや走り方、注意など考えなくてはいけないことが増えます。脳が活性化される感覚があって好きですね。ウェアについては、何よりフィット感が重要ですね。

カナダを拠点にするブランドとのクリエイティブな協業について。

――今回のコレクション名「Ability to Acquire」に込めた思いや意味について改めて教えていただけますか?
G
“ 自分自身の中に静けさを見つけ出す”という意味です。外界のノイズや喧騒は制御できませんが、自分をコントロールしながら、内なる静けさを増やしていくこはできる。それを意味しています。

ランニングショーツ、タイツ、ベスト、ジャケットなど。〈ルルレモン〉が自社開発したテクニカル素材Nulux™の滑らかさはクセになる。

――サークル状に人々が走っているイラストの意味を教えてください。
G
走っている人間がだんだん自然と一体化して溶けていき、また人間として現れる様子を表しています。これは私的な体験を描いているんです。ある種の自然界への感謝についての表現でもあります。
――その没入体験は、スキーやサーフィンなど他のスポーツにもあるものですか?
G
もちろん他のスポーツでもありますよ。スケートボードやサーフィン、サイクリングでも集中力を高めて没入状態に入り、我を忘れるような感覚があります。ランニングにおいては、超長距離でなくて、短距離でも感じられることです。4マイル走るだけでも、10分間没入して、また帰ってくることもあるんですよ。
――ルルレモンと初めてパートナーシップを組んだ、決め手は何だったのでしょうか?
G
ヨガブランドとしての背景や急成長している点、独自のコミュニティがあることが魅力でした。僕のようなパーソナルな作品をつくるアーティストにとっては、一緒に仕事をするのことで、意味のあるコラボレーションができると考えました。
――ルルレモンはカナダのブランドですが、ジェフさんもカナダ育ちですよね?
G
はい、バンクーバーの店舗との個人的な繋がりもあります。カナダのブランドとコラボはレアなので、とても嬉しかったです。また、プロダクトのクオリティの高さにもとても感銘を受けました。特に、メンズウェアのシンプルシティと耐久性は素晴らしいです。
ジェフが書いた絵型と、コレクションに寄せて書いたポエム。

ジェフが書いた絵型と、コレクションに寄せて書いたポエム。

――コレクションはカーキブラウンがベースになっていますが、この色については?
G
ランニングウェアはコーディネートのしやすさや機能性、特に耐久性や速乾性が重要です。僕はランニングすると、洗濯物は2倍になります。洗濯が大変なんです(笑)。クローゼットにある他のランニングウェアとも合わせやすい色とデザインが気に入っています。長く綺麗な状態で着続けられる点もいいですね。
――この色はルルレモンと決めたのでしょうか?
G
はい、私はブランドの世界観を尊重することを第一としています。ルルレモンのファンにとっても、私の作品のファンにとっても魅力的なものになるバランスで色を決めています。
――東京で開催したイベントで公開された、映像にミュージシャンのKohei さんの演奏を合わせるセッションが印象的でした。どのような会話を経て作られたのか教えてください。
G
細かい指示は出さず、自分が撮影した15マイルのランニング映像をお渡しして、Kohei さんにお任せしました。普段、走る時に聴くようなアンビエント系の素晴らしい音楽を作っていただきました。

生演奏を披露する、Kohei。

映像とアンビエントの音楽が重なり、マインドフルネス的な瞑想体験へ。

――今年40周年を迎える『Tarzan』のタグラインは、原点回帰で「FIT FOR LIFE」。読者へメッセージをお願いします。
G
40年は長い時間ですよね、すごいことです。1つのことを長く続けていくこと、“Longevity”には素晴らしい価値があります。僕自身も年を重ねてくるとともに、長い間ランニングを続けてきたなという思いに浸ることがよくあります。

世界中を旅することもいいですが、一つの町や村に定住して、「ここのことなら何でも知っている」と言い切れること、それが一つのことをやり続ける魅力だと思うんです。カラダでいえば、自分の隅々のことを知り尽くしていること。読者の皆さんにも、自分自身をを極めてエキスパートになっていただければと思います。ぜひ運動を長く続けて楽しんでください。

会場となったのは、東京・西麻布のKARIMOKU RESEARCH CENTER。