どんな治療が必要? 代表的な「膝の損傷」3つを学ぶ
トレーニングをしていると耳にする「コンディショニング」という言葉を、詳しく紐解いていく「コンディショニングのひみつ」連載。第28回は、スポーツ外傷の中でも比較的発症頻度の高い「膝の障害」について。
取材・文/黒澤祐美 漫画/コルシカ 監修/齊藤邦秀(ウェルネススポーツ代表)
初出『Tarzan』No.835・2022年6月9日発売
膝を守る靱帯や半月板に起こりうる障害について知る
スポーツ障害のコンディショニング、今回のテーマは「膝の損傷」について。膝の障害は、スポーツ外傷の中でも比較的発症頻度の高い外傷だ。そのため、早期のスポーツ復帰を目指すには、医師による正確な初期診断に基づいて、治療やリハビリテーションの方針を固めていくことが重要となってくる。
今回は、膝の損傷の中でも代表的な「内側側副靱帯損傷」「前十字靱帯損傷」、そして「半月板損傷」について考えていこう。
内側側副靱帯の損傷
内側側副靱帯(ないそくそくふくじんたい)とは、大腿骨と脛骨を繫ぐ膝の内側に位置する靱帯。内股ポーズのように膝が内側に入る動作(外反)が強制されたときや、膝の外側から強い力が加わったときに受傷しやすい。
症状は、内側側副靱帯の大腿骨付着部から関節の隙間(内側関節裂隙)までの圧痛と腫れ。前十字靱帯や半月板との合併症、あるいは膝蓋骨脱臼と鑑別しにくいが、膝の内側上部に痛みがあるときは内側側副靱帯損傷を疑っていいだろう。
内側側副靱帯は自然治癒能力に長けた組織であり、運動負荷を加えることで治癒しやすいことが明らかになっている。
よって受傷直後にRICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)をしたうえで、医療機関で合併症がないと診断された場合には、炎症が引く3〜5日後頃から関節可動域訓練や、イラスト(記事下部で紹介)のような筋力トレーニングに移る。
前十字靱帯損傷
前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)とは、大腿骨と脛骨の間でクロスしながら付着している靱帯で、脛骨が前に出ないように動きを抑制する役割を果たしている。前十字靱帯が受傷するケースは、靱帯が耐え切れないほど強い力が加わったとき。
接触によるもののほかにも、球技中の急激な方向転換やジャンプ後の着地、踏ん張りなど非接触の動作でも損傷の可能性がある。受傷時にはブツッという鈍い断裂音が聞こえるほか、激しい痛みを生じる。さらに、靱帯から出血することで関節内に血液が溜まり腫れを伴うこともある。
前十字靱帯は一度切れてしまうと自然治癒の可能性はほぼないため、スポーツ復帰をしたい人には手術が必要だ。保存療法を選択する場合は、専用のサポーターを装着して固定。可動域訓練を行いながら、筋力低下を防ぐ。
再発予防のエクササイズ(記事下部で紹介)は固定器具が取れ、膝の機能を回復させるときに取り入れるとよい。
半月板損傷
半月板(はんげつばん)とは、大腿骨と脛骨の間にある軟骨の板で、衝撃を吸収したり、膝にかかる負荷を分散したりする役割がある。損傷する要因は、接触で起こることもあれば、加齢による変形で受傷率が上がるのも特徴の一つだ。
損傷すると膝の曲げ伸ばしで痛みや引っかかりを感じたり、水が溜まったりすることもある。リハビリや投薬などによる保存治療で症状が改善しない場合は、手術を行う。
再発予防エクササイズ
椅子に座り、背すじを伸ばして骨盤を立てる。片膝を伸ばして足裏を正面に向け、ゆっくり戻す。これを20回。逆脚も。
上のエクササイズ同様、椅子に座り片膝を伸ばす。このときパートナーが脛を押さえ、抵抗を感じながら脚を上げる。逆も。
復習クイズ
答え:内側側副靱帯損傷