こんな場所なら走ってみたい!都心からアクセスしやすい“絶景ラン”

秋はランに挑戦してみようという気持ちが湧いてくるもの。とはいえ、近所をぐるぐる走るのは退屈な気もしてしまう。そこでおすすめしたいのが、非日常が味わえる“絶景RUN”。クルマや電車で絶景近くまで移動。そこから絶景を目指して、あるいは絶景を眺めながら、ちょっぴりランを楽しむ。旅気分が味わえ、きっと走ることが好きになれる。今回は都心からアクセスしやすい絶景スポットを紹介!

取材・文/神津文人 撮影/小川朋央 取材協力/齊藤太郎(ニッポンランナーズ代表)、牧野 仁(スポーツネットワークサービス代表)

初出『Tarzan』No.866・2023年10月5日発売

平塚・湘南平(神奈川)

高台には圧巻の360度パノラマ絶景が待っている

平塚・湘南平

湘南平とは、神奈川県の大磯町と平塚市にまたがる海抜181mの丘陵。泡垂山(あわたらやま)の山頂一帯を指し、高麗山(こまやま)公園として整備されている。

そして、湘南平を含む高麗山公園は、「関東の富士見百景」「かながわの景勝50選」「かながわの花の名所100選」「平塚八景」などに選ばれている。その景色の良さはお墨付きというわけだ。

湘南平にはテレビ塔展望台(一時閉鎖中)と高麗山公園レストハウス展望台の2つの展望台があり、相模湾や近隣の山々を眺めることができる。

おすすめは360度の大パノラマが堪能できるレストハウス展望台。空の中にいるような気分が味わえる。

高麗山公園へはクルマでのアクセスも可能だが、JR大磯駅からハイキングコース(徒歩約40分)で上ってくることもできる。湘南平からは浅間山、高麗山へと続くハイキングコースもあり、大磯駅から平塚駅にかけては、「関東ふれあいの道」(大磯・高麗山の道)にもなっている。

大磯駅から相模湾に向かえば、すぐに箱根駅伝のコースに出られる(平塚中継所も遠くない)。もちろん海も目の前だ。ランを楽しむには事欠かないエリアと言えるだろう。ランの後に大磯港に揚がる魚介を楽しむのも絶景RUNの醍醐味!

湘南平(高麗山公園)

神奈川県平塚市万田790。小田原厚木道路平塚ICより約6.5km。新湘南バイパス茅ヶ崎西ICより約9km。JR平塚駅北口からバス(湘南平下車)で約23分、バス停から展望台までは徒歩すぐ(ただしバスの本数はかなり少ないので注意)。JR大磯駅からタクシーで約15分。高麗山公園レストハウス展望台が利用できるのは9:30〜21:30。

鋸山・保田海岸(千葉)

南国リゾートを訪れたような気分が味わえる山と海

鋸山

鋸山の標高は329.5m。いわゆる低山ながら、頂上からの眺めは絶景の名にふさわしい。「関東の富士見百景」に選出されており、天気が良ければ富士山の姿を拝める。が、それだけではない。東京湾、伊豆半島が見渡せる。山を登り景色が開けた瞬間に、息を呑むほどの眺望が目に飛び込んでくる。

頂上以外の見どころも豊富。鋸山ではかつて採石が盛んに行われていたため、石切り場や切通し(石を運び出す道)の跡を見ることができる。

また、南側斜面は日本寺の境内となっており、大仏、百尺観音、東海千五百羅漢などを見学できる。山頂へは麓からロープウェーで上がれるほか、JR浜金谷駅から登山道(徒歩約70分)、有料道路を使ってクルマで行く、日本寺の境内を上がるなどのルートがある。

絶景ラン スポット

日本寺の南側にあるJR保田駅以南には、海水浴場が点在。比較的海岸近くに道が続いており、海を眺めながらのんびりとランニングを楽しむことができる。

きれいな海があり、ランニングやサイクリングをしやすい道路があるため、トライアスリートがこの周辺で合宿をすることも多いのだとか。東京からそれほど遠くない場所で、無理なく山と海の両方を満喫できる非常に贅沢なスポットなのだ。

鋸山

ロープウェー山麓駅へはJR浜金谷駅より徒歩約9分、東京湾フェリー金谷港より徒歩約13分、館山道富津金谷ICよりクルマで約5分。ロープウェー料金は片道650円、往復1,200円(大人)。鋸山登山自動車道入り口までは館山道富津金谷ICよりクルマで5分。自動車道の利用料金は1,000円(乗用車料金)。日本寺内の通行は拝観料が必要(大人700円)。

山中湖周辺(山梨)

週末リトリートに最適。湖とトレイルに癒やされる

山中湖周辺(山梨) 絶景ラン スポット

湖と森のリゾート、山中湖。富士五湖最大面積で、標高は約1000m。都心から訪れれば、まずその清涼感に癒やされるだろう。

湖畔には一周約13.5kmの周回コース(サイクリング、ランニングで利用可能)が整備されているので、非常に走りやすい。所々にトイレが配置されているのも嬉しいポイントだ。

また、山中湖周辺はUTMF(ULTRA-TRAIL Mt.FUJI)のコースになっていることからも想像できる通り、トレイルランニングを楽しめるエリアもある。

ランの後は山中湖温泉で汗を流すのもいい。周辺は宿泊施設も充実しているので、週末を利用してリトリートしに行くのもおすすめだ。

山中湖

東名高速御殿場ICからクルマで約30分。東富士五湖道路山中湖ICからクルマで約3分。富士急行線富士山駅からバスで約25分。JR御殿場駅からバスで約40分。東京、神奈川からは山中湖村に高速バスも出ている。周辺には駐車場も多くクルマが便利。

富津岬(千葉)

長距離ランナーの聖地で潮風を浴びながら

富津岬(千葉) 絶景ラン スポット

富津岬周辺は、実業団や大学や高校の強豪チームといったエリートレベルの長距離チームの合宿地として人気の場所。秋から春にかけて、多くのトップ選手たちが富津岬周辺で走り込みを行っている。

富津公園内には5.6km(2.8、2.3kmもある)の周回コースがある。フラットで走りやすく、信号もない(車両の通行はある)。

岬の先端に向かう直線は気持ちよく、突端にある展望台からの眺めはまさに絶景。東京湾や対岸の景色、房総丘陵を一望できるパノラマビューを楽しめ、空気の澄んだ日には富士山の姿がはっきり見える。

ランの後は、公園内に多く残る戦争遺構を巡って散策するのもいい。

富津公園

住所:千葉県富津市富津2280。館山自動車道木更津南ICからクルマで約20分。公園全体で普通車の駐車場は539台分。JR内房線青堀駅からバスで約12分。JR内房線木更津駅からバスで約40分。富津公園前のバス停から富津岬展望台までは徒歩で約20分。

豊洲ぐるり公園(東京)

昼夜で表情が一変する都会ならではの景観

豊洲ぐるり公園(東京) 絶景ラン スポット

都内屈指のランニングスポットとして名高い「豊洲ぐるり公園」。豊洲埠頭先端から東電堀まで、豊洲市場の周りをぐるりと囲うように園路が整備され、ランニングやウォーキングを楽しめるようになっている(ランニングコースは4.8kmで400mごとに距離表示がある)。

コースはフラット。信号はなく、道幅が広いので、ビギナーランナーもかなり走りやすいはずだ。

海に面しているため、ランニング中、視界には常に大きく海がある。対岸の高層ビル、レインボーブリッジに豊洲大橋は壮大な雰囲気。夜になれば都会らしい夜景が楽しめる。仕事終わりに夜景ランをすれば、気持ちがスッキリするはずだ!

豊洲ぐるり公園

東京都江東区豊洲6-1先、江東区豊洲5-1先。豊洲ぐるり公園自動車駐車場は24時間利用可能(400円/時。普通自動車38台)。ランニングコースへは、ゆりかもめ新豊洲駅および市場前駅、東京メトロ有楽町線豊洲駅などからアクセスしやすい。

横須賀・うみかぜ公園(神奈川)

異国情緒も味わえる絶景を巡るうみかぜの路

横須賀・うみかぜ公園(神奈川) 絶景ラン スポット

うみかぜ公園からは、東京湾に浮かぶ無人島・猿島が一望でき、浦賀水道を航行する船舶を眺められる。それだけでも異国に旅をしに来たような感覚が味わえるが、ランニングがてら少し足を延ばせば、さまざまな景色を堪能することができる。

JR横須賀駅から、うみかぜ公園を経て、観音崎公園まで続く約10kmの遊歩道(愛称:うみかぜの路)には魅力的なスポットが点在する。

約2000本のバラが咲くヴェルニー公園、戦艦三笠が保存されている三笠公園、ヤシの並木道が続く馬堀海岸、横須賀美術館、観音崎灯台と、見どころだらけ。ゴール後には、カレーやハンバーガーといった横須賀グルメも楽しみたい。

うみかぜ公園

住所:神奈川県横須賀市平成町3-23。国道16号線、安浦二丁目交差点を平成町方面に曲がって約700m。公園利用する場合は駐車場の利用が可能(日中は1時間320円、30分ごとに160円加算、上限640円。夜間は1時間100円)。京急本線県立大学駅から徒歩約15分。

RUNの専門家に聞く、絶景の走り方

教えてくれた人

齊藤太郎さん(さいとう・たろう)/ニッポンランナーズ代表。小学生から80歳オーバーまで300人を超えるメンバーに「美しく、健康的に走り続ける」というポリシーのもと、効率の良いランニングフォームとトレーニングの組み立て方を指導している。ニッポンランナーズは東京、千葉県を拠点に活動中。

牧野 仁さん(まきの・ひとし)/マラソン完走請負人。一般ランナーをマラソン完走へと導くマラソン完走請負人。アスレティックトレーナー、ストレングス&コンディショニングトレーナーとして活躍。市民ランナーの指導を専門に行うJapanマラソンクラブを設立。スポーツネットワークサービス代表。

自宅を拠点に走るのとは勝手が異なる絶景RUN。用意しておくと便利なもの、注意点はあるのだろうか。

「ランニングステーションや入浴施設など、近くでシャワーを浴びられる場所を探しておくといいと思います。なければ汗拭きシートを用意しておきたいですね。加えて、ルート上のトイレの有無、コンビニの位置も確認しておくと安心です」

とは、マラニック(マラソン+ピクニック)やランニング合宿などのイベントの開催もしている〈ニッポンランナーズ〉代表の齊藤太郎さん。

「絶景を求めて地方へ行くなら、忘れてはいけないのは小銭の準備。都会で生活していると忘れがちですが、コインロッカー、自動販売機、駐車場などで交通系電子マネーが使えないことがよくあります」

絶景RUNだからこそ必要になるギアもあるという。

「遅い時間に走るならヘッドライトやネックライトがあると安心です。なるべく明るい色のウェアを身に着けて、他者からの視認性を高めて安全に走りましょう。それからクルマの人はクーラーボックスを積んでおくと便利です。飲み物や補給食を入れられるのはもちろんですが、お土産をしまっておけるので」

マラソン完走請負人として、さまざまな場所を走っている牧野仁さんは、着替えの持参を推奨する。

「ランニングの途中で歩いたり、寄り道することを考えたらトップスだけでも持っておくと、汗冷えを防ぐことができます。

また夏場でなくても海岸を走るなら日差し対策、紫外線対策としてキャップを被っておいた方がいいでしょう。日焼けを避けたいなら日焼け止めも必須です。少し長めの距離を走る場合は、水や補給食も持っておきたいですね」

同じく絶景を求めてやってきたハイカーやサイクリストと道を譲り合うことも大切。安全を重視して、絶景RUNを楽しんでほしい!