ヨモギ

11月のハーブ_ヨモギ|ワンモア・ハーブvol.1

ハーブについての知識とアイデアがあれば、森の木々も路傍の草も、生活を彩るものに見えてくる。富士吉田に拠点を置く〈ハーブスタンド〉の平野優太さんに、季節のハーブとその使い方を訊く新連載。第一回は、和のイメージの強いヨモギについて。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海(Stage)

ヨモギ
ヨモギ

ヨモギ

ハーブの定義を辞書で引けば、「人にとって有益な効能効果を持つ植物」と書かれています。例えばヨーロッパのハーブ辞典では、海藻も載っているくらい幅の広いものなんです。毒がある植物でも時に薬として用いられますから、個性が強ければ、あとは使い方次第。

ただし、僕らは歴史的に安全が確認されている植物しか扱わないようにしています。日本では知られていないハーブであっても、どこかの国や民族では使われている。そのリファレンスを大切にしています。

その意味でヨモギは、和の薬草のイメージが強いけれど、フランス料理でお肉を焼く時などによく使われるエストラゴンに近い植物で、実はハーバルな印象もある。そこに焦点を当てると、より使いやすいと思っています。

ヨモギの旬は、一般的には芽吹きの春です。草餅を作ったり、新芽を天ぷらにしたりして食べますが、僕らはもう一つ旬があると考えていて、それが花の時期である秋なんです。

野草感の強い春夏に比べて、花の時期はもう少しまろやかで香り高い。なので、ドライにして塩と混ぜ、ハーブソルトとして使うこともよく提案しています。

わざわざ収穫に行く必要もないくらい、ふとした道端に生えているヨモギは、とても日常に取り入れやすい薬草で、冬の入り口に嬉しいハーブなんです。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
ヨモギとニンニクのじゃがいもソテー

―材料―
・蒸したじゃがいも 2個
・秋ヨモギ(乾燥でもフレッシュでも)好みの量
・バター 100g
・ニンニク 一欠片
・塩、コショウ 適量

1.蒸したじゃがいもを一口大にカットしておく。

バターが入ったフライパン

2.熱したフライパンにバターを入れる。

フライパンの中で溶けるバター

3.バターが沸々と溶け始めたらニンニクとヨモギを入れて香りを移していく。

バターで炒められるじゃがいも

4.さらにじゃがいもを投入。

バターで炒められるじゃがいも

5.香りの移ったバターをスプーンで回しかけながらソテーする。

6.焦げ目がつき、表面がカリッとしたら皿に盛り付けてから、塩コショウ。ヨモギを飾り付けに。

ヨモギの花は、ジャガイモの香りづけにも重宝します。日本ではエストラゴンは馴染みが薄いですが、ローズマリーの代わりと思うと使いやすいかもしれません。鶏肉のソテーのように、肉から脂が出る料理でも同じように重宝します。11月には場所によっては自生の状態でドライになっているものもあるはず。燻製の焚き付けに使用する事もできます。焼いたラム肉の香り付けにするのもオススメです。

●「使う」
入浴剤

―材料―
・ヨモギ(たっぷり)
・水(適量)

鍋に入ったヨモギ

1.水を張った鍋に、たっぷりのヨモギを入れて火にかける。

鍋でヨモギを煮出す様子

2.高温でグツグツと煮出す。およそ10分。

ヨモギの抽出液

3.煮詰めた抽出液を入浴剤として、適量、風呂に入れる。

葉っぱや花をそのまま風呂に入れても、あまり成分が抽出されないため、高温でグツグツ煮て、濃く抽出。湯船に入れて入浴剤として使うことができます。韓国にはヨモギ蒸しの文化がありますが、この煮ている最中の蒸気を浴びているようなもの。

煮立ってきたら、火傷に注意しながら嗅いでみてください。その香りの豊さを実感できるはずです。体を温めて血行を促進するので、デトックスや乾燥肌対策にもなる。寒くなるこれからの季節に最高です。ヨモギは、入浴の喜びを倍増させてくれるハーブです。

富士吉田の風景

11月のハーブスタンドの様子

朝晩は冷え込むようになった富士吉田の森は、常緑樹と紅葉が入り混じる、美しい季節です。僕らにとっては冬の前の収穫で多忙な時期ですが、落ち葉でふかふかとした道は気持ちがいい。そろそろ巣篭もりの準備です。