注目すべきは毛細血管!風邪知らずなカラダを作る生活習慣。

風邪をひかないために大切なのは、毛細血管の活性化だった!一日の理想的な過ごし方を取り入れて、風邪を引き寄せないカラダになろう。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/ハニュウミキ、前田 麦 監修/根来秀行(ハーバード大学医学部内科客員教授)

初出『Tarzan』No.917・2026年1月5日発売

ウイルスを跳ね返している男性のイラスト
教えてくれた人

根来秀行(ねごろ・ひでゆき)/医師、医学博士。ハーバード大学客員教授、ソルボンヌ大学客員教授。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、自律神経、睡眠医学など多岐にわたる。

毛細血管の劣化が、カラダの不調を引き起こす。

免疫力アップに人々が敏感になったのはかつてのコロナ禍のこと。当時、重症化リスクの要因となったのは下のグラフのような病気。これらはいずれも毛細血管の機能不全を伴う病気と言ってもいい。

新型コロナウイルス感染症で、重症化のリスクとなる基礎疾患。
  • 慢性閉塞性肺炎疾患
  • 慢性腎臓病
  • 糖尿病
  • 高血圧
  • 心血管疾患
30歳代と比較した場合の各年代の、新型コロナウイルスによる重症化率。

30歳代と比較した場合の各年代の、新型コロナウイルスによる重症化率

参考/厚生労働省「(2021年2月時点)新型コロナウイルス感染症の“いま”に関する11の知識」

慢性閉塞性肺炎は肺胞にある毛細血管が減少し、慢性腎臓病は毛細血管の固まりである糸球体が障害され、糖尿病は過剰な血糖で毛細血管が傷つき、網膜や腎臓、神経が機能不全に。最先端の臨床・研究に携わる医師の根来秀行さんは言う。

「つまり、基礎疾患による毛細血管の劣化と免疫機能には深い関わりがあると考えられます。また、60代以上の毛細血管は20代の頃よりも4割以上減少するというデータもあります。基礎疾患や加齢によって毛細血管の状態が不健康になると、感染症に罹患したとき重症化に繫がりやすいと考えられるのです」(医学博士・根来秀行さん)

まずは、その仕組みをひもとこう。

カラダの9割は毛細血管でできている。

血管と言われて思い浮かぶのは心臓から血液を送り出す動脈や、各器官から心臓に血液を戻す静脈。でも、動脈と静脈のジャンクションとして機能しているのが毛細血管。これらは末梢の細胞に酸素や栄養を供給し、老廃物を回収する実務をこなしている細い血管だ。

「全身の血管の約9割を占めているのが毛細血管です。酸素や栄養を運ぶだけではなく、ホルモンを標的細胞に届けて情報伝達を行ったり、免疫細胞を全身の隅々に届けて外敵の攻撃に対応する役割を担っています」

免疫細胞とはウイルスなどを直接取り込んで無効化するマクロファージや樹状細胞、外敵に対する殺傷能力が高いキラーT細胞、抗体を作り出すB細胞などなど。これらを全身に運んでくれるのが毛細血管なのだ。

毛細血管をコントロールするのは自律神経。

毛細血管は単に免疫細胞の輸送通路というだけでなく、自律神経と連携して免疫システムを支えている。自律神経は日中に優位になる交感神経と夕方以降に優位になる副交感神経のこと。

「たとえば交感神経が優位になると毛細血管の入り口にある前毛細血管括約筋が収縮して血液をカラダの中心に集めます。このときは細菌などを攻撃する顆粒球の働きが高まります。一方、副交感神経が優位になると今度は括約筋を緩めて末梢に血液を巡らせ、カラダを修復・再生状態にします。このときはウイルスなどに対応するリンパ球が増えて機能する仕組みです」

自律神経と毛細血管の血流量。

自律神経と毛細血管の血流量

左は交感神経優位なときの毛細血管の状態、右は副交感神経優位で末梢に血液が流れている状態。

顆粒球やリンパ球、どちらが欠けても免疫は十分に働かない。つまり、自律神経の働きを整えることが毛細血管をコントロールし、免疫力を向上させる重要条件。

ただ、加齢とともに自律神経のトータルパワーは落ちていく。では、どうする?

年齢、性別による自律神経パワーの変化。

年齢、性別による自律神経パワーの変化

自律神経の総合的なパワーは加齢によって衰えていく。

出典/東京疲労・睡眠クリニック

自律神経のリズムは体内時計とリンクしている。

ウイルスに対抗するのがリンパ球だとすると、副交感神経をドライブさせればいいのでは?と思うかもしれない。でも、交感神経がちゃんと働いてこそ、副交感神経も活性化する。

「自律神経の機能としては、交感神経、副交感神経のバランス、ふたつの神経のメリハリがあって初めて成立します。ただバランスだけではなく自律神経のトータルパワーというものを上げる必要もあり、それには交感神経レベルも高くなくては理論的に合わない。よって日中は交感神経を働かせて適度な活動はして夜の時間は副交感神経が優位な状態でしっかり睡眠をとるということが風邪をひかないための大きな力になると思います」

下の図をご覧いただこう。日中は交感神経優位、夜間は副交感神経優位な状態で、カラダは健全な反応を起こす。このリズムに則って生活を組み立てることが大事なのだ。

日中は交感神経優位、夜間は副交感神経優位な状態で、カラダは健全な反応を起こす

コルチゾールやセロトニン、メラトニンなど血糖値や睡眠に関わるホルモン、血圧や体温などのリズムは自律神経で調節されている。このリズムの死守が免疫力向上のカギ。

毛細血管を活性化する一年の過ごし方とは?

では、具体的に自律神経の働きを活性化させ、毛細血管を健全な状態にキープするには何をすべきなのか?

下のタイムスケジュールで紹介しているのは、自律神経が刻むリズムに従った一日24時間の過ごし方。

ポイントは主に3つ。有酸素運動やストレッチ、入浴などで血流を促す。腹式呼吸や瞑想などで毛細血管を緩める。そして自律神経のバランスを整えるために良質な睡眠を確保する工夫を取り入れることだ。

理想的な1日の過ごし方。
6:30 6〜7時の間に起きてカーテンを開け、日の光を浴びる。
7:00 コップ1杯の水を飲む。冷たい水ではなく常温の水か白湯がおすすめ。
8:00 朝食を食べる。
10:00 仕事中は姿勢を正す。背すじを伸ばして45〜90分に1回は立って歩く。
11:00 15分程度のウォーキング瞑想をする。足の裏や重心の移動に意識を向けながらゆっくり歩く。
12:30 ランチは魚、肉、乳製品などのタンパク質をしっかり摂る。食べるときは血糖値の急上昇を防ぐために野菜からいただく。
15:00 ストレッチや呼吸法を行う。呼吸法は4秒かけて息を吸い、4秒間息を止め、8秒かけて息を吐く4・4・8呼吸法がおすすめ。
17:00 夕方に5分程度、軽めの筋トレをする。ハーフスクワットなどがおすすめ。
18:30 買い物がてらにウォーキング瞑想をする。
19:00 夕食に地中海料理×和食を食べる。肉より魚を選び、玄米や野菜などからビタミン、ミネラル、食物繊維を補給。オリーブオイルなどから良質な油も摂取。
20:00 リビングの照明を落とす。間接照明などを利用し、部屋の照明をやや暗めに。体内リズムを休息方向に誘導。
21:30 入浴する。38〜41度のお湯に20分程度浸かる。
22:30 ストレッチと呼吸法を行う。
23:00 眠る。深い睡眠がとれると、毛細血管により全身に血液が送られ、細胞がメンテナンスされる。

基本的には上記の日常生活習慣をすべて実践するのが理想。ただ、季節ごとに自律神経のバランスは変化する。一年を通してじっくり免疫力強化に努めるならば、季節ごとにとくに取り入れたい習慣を重点的に行う、というスタイルでも構わない。春夏秋冬の習慣を率先して行ってみてほしい。

今シーズン、もうこれ以上風邪をひきたくない人、今日から早速行動あるのみ。

春夏秋冬と自律神経の関係。

  • 朝晩の気温の寒暖差、気圧の変動などが大きい春は、新年度の生活環境変化のストレスも加わり、自律神経のバランスが崩れやすい季節。
  • 環境が変わってストレスが溜まりやすいこの時季、積極的にカラダを動かしてストレスリリース。カラダの動きに意識を向けることで心身ともにリフレッシュ。

  • 35度以上の猛暑日が珍しくなくなった昨今、猛暑の屋外と冷房の効いた屋内の温度差の調節で、自律神経が酷使されるので、入浴で整えたい。
  • 暑さで食欲が落ちる夏だが、末梢の体内時計リセットのためにはマスト。飲み物だけでなく糖質、脂質、タンパク質を補給。
  • シャワーで済ませがちな夏、あえての入浴で毛細血管の働きを促す。

  • 残暑が長引く秋は蓄積された夏の疲れをリカバリーできないまま、テレコでやってくる寒い日と暑い日に対応しなければならない時季。
  • 季節の変わり目で自律神経に負荷がかかるので、軽い筋トレで毛細血管の維持に努める。

  • 日照時間が短くなり、活動量が低下。また、気温低下で交感神経が優位になり、末梢の毛細血管が収縮し、心身ともにだるさを感じることも。
  • 寒さで気分がふさぐ季節。交感神経も過剰に働きがちなので呼吸法で副交感神経を活性化。
  • 日照時間が短いので体内時計が乱れがち。一日のスタートを定時に設定。
  • 宴会シーズンで肉に偏りがちな夕食。自宅ではできるだけ肉より魚をチョイス。量も八分目で。