バッグを使って再発予防!日常的な肩こり解消術。

肩こりがないと思っていても、実は自覚していないだけかも。「凝る運命」の日本人の肩、細かな習慣で脱却を目指そう。

取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/松橋亜紀(男性)、村田真弓(女性) イラストレーション/AZUSA、金安 亮 監修/西中直也(昭和医科大学大学院教授)、中野ジェームズ修一

初出『Tarzan』No.918・2026年1月22日発売

リアレイズをしている様子
教えてくれた人

西中直也(にしなか・なおや)/昭和医科大学大学院保健医療学研究科教授、医学博士。昭和医科大学藤が丘病院整形外科、スポーツ運動科学研究所兼任。肩肘関節外科、肩肘関節鏡手術、肩のバイオメカニズム研究の第一人者。

中野ジェームズ修一(なかの・じぇーむず・しゅういち)/〈スポーツモチベーション〉CTO(最高技術責任者)。青山学院大学駅伝部トレーナーをはじめ、東京・神楽坂にある会員制パーソナルトレーニング施設〈CLUB100〉の技術責任者も務める。

そもそも「肩こり」とは?

厚生労働省の「国民生活基礎調査」では長年、女性が抱える自覚症状のトップが肩こり。男性も腰痛に続いて第2位が常に肩こりという状況。それなのに、日本整形外科学会の研究ではいまだに肩こりの明確な定義はないとされる。

昭和医科大学大学院教授の西中直也さんは次のように言う。

「肩こりというのはあくまで自覚症状。血流が滞って発痛物質が作られて肩こりが起こるという説もありますが、それはひとつの説に過ぎず、明確なメカニズムというのは明らかにされていないんです。ただ、肩の周囲には17もの筋肉が存在していて、このうち僧帽筋、肩甲挙筋、広背筋、前鋸筋などの筋肉が肩こりの症状に関わっていることは分かっています」

このことから西中さんは確実に肩こりが軽減するメソッドを考案した。そのキーワードとなるのが「肩のリズム」だ。

肩の筋肉の名称

肩のリズムの乱れが凝りや痛みの要因に。

「肩のリズム」の正式名は「肩甲上腕リズム」。腕を45度上げるとき、上腕骨と肩甲骨が連動するシステムだ。肩甲骨と上腕骨を繫ぐ肩甲上腕関節と、肩甲骨と胸郭を繫ぐ肩甲胸郭関節が2:1の比率で動くことで肩の健全な可動域が保たれる。

「しかし、このリズムが乱れている人が非常に多い。なぜ乱れるかというと肩甲骨を動かす筋肉のバランスが崩れているから。肩甲骨を正しい位置に固定する前鋸筋や僧帽筋下部が働かず、僧帽筋上部が過剰に働く。また広背筋や肩甲挙筋の柔軟性が低下して肩甲骨の動きが悪くなっているのです」(西中さん)

肩甲骨と上腕骨の正常な動き。

90°に腕を上げた時の肩の動き

上腕を肩の高さに上げたときの関節の状態。肩甲胸郭関節の角度は30度で、肩甲上腕関節の角度は60度。

180°に腕を上げた時の肩の動き

上のように腕を真上に上げると肩甲胸郭関節の角度は60度で、肩甲上腕関節は120度。肩のリズムが正常に保たれ肩こりが起こりにくい。

肩こりを自覚する症例の僧帽筋筋活動。

僧帽筋上部線維のグラフ

僧帽筋下部線維のグラフ

肩こりがある人は僧帽筋上部が過剰に働いていて、逆に下部が働いていない。僧帽筋上部が働いて上腕骨が本来のリズム以上に頑張って動き、僧帽筋下部がサボっているせいで肩甲骨が動かない。で、肩こりが発生。

資料提供/西中直也

まず肩のリズムのチェック!

手を鎖骨に近い胸の中心に当てている様子

鎖骨上が見える状態で鏡に向かって行う。肩のリズム回復メソッドでしつこい凝りを解消。

腕をあげて首の付け根が上がらない様子

腕をあげて首の付け根が上がる様子

肩のリズム回復メソッドでしつこい凝りを解消。

肩甲骨と上腕の動きに関わる筋肉の働きのバランスが崩れると、僧帽筋上部のオーバーワークで肩こりが起こる。同時に上腕骨の動きが過剰になって肩関節の骨同士がぶつかる。こうした不調が同時に起こる。ではどうするか? ここからが肩のリズム回復メソッド。

「柔軟性が低下した肩甲挙筋と広背筋をほぐし、働かなければいけない前鋸筋と僧帽筋下部を鍛えます。また、その前段階として股関節のストレッチで姿勢を正し、肩甲骨を正常な位置にリセットするとより高い効果が望めます」(西中さん)

まずは「股関節ストレッチ」を実践。

股関節ストレッチ。

股関節ストレッチをしている様子

まず姿勢を正して肩甲骨を本来の位置にリセット。椅子に座り、片脚を反対側の膝の上に乗せ、左右の手を膝と足首に乗せる。上体を前傾させて体重をかけ、10〜20秒キープ。逆も。

そして「股関節ストレッチ」とあわせ、下の3エクササイズを毎日行ってみよう。

1.肩甲挙筋と広背筋のストレッチ(左右各20秒)

肩甲挙筋と広背筋のストレッチ1

肩甲挙筋と広背筋のストレッチ2

肩甲挙筋と広背筋のストレッチ3

肩甲挙筋と広背筋のストレッチ4

肩甲挙筋と広背筋のストレッチ5

 

  1. 片手を逆側の肩の上に置き、反対側の手をその上に重ねて肩甲骨を下方向に押さえる。
  2. その肘を逆の手の親指で押さえて固定し、上体を真横に倒して20秒キープ。逆側も。
2.前鋸筋エクササイズ(10回×1〜3セット)

前鋸筋エクササイズ1

  1. 肩の高さで左右の肘をくっつける。

前鋸筋エクササイズ2

2.肘をつけたままできるだけ上に上げる。上下方向の動作を10往復繰り返し。肩に力を入れずに脇の下の筋肉を意識することがポイント。

できない人はこちら。

前鋸筋エクササイズできない人用

タオルを肘の間に挟んで行う。

3.僧帽筋下部エクササイズ(10回)

僧帽筋下部エクササイズ1

  1. 両手を頭の後ろで組み、息を吸いながら肘を後ろに引いて胸を張る。このとき肩甲骨下部の筋肉を意識。

僧帽筋下部エクササイズ2

2.続いて息を吐きながら肘の力を抜いて緩める。10回繰り返し。

バッグトレで凝りの再発を予防する。

上のメソッドを毎日行えば数週間で健全な肩のリズムを取り戻せる。その後は次のステップへ。たとえば今の自分に足りていない最低限の筋力を身につけるプチエクササイズを取り入れてみる。

三角筋や僧帽筋上部は片方につき大体4〜5kgある腕をぶら下げている。年齢を重ねるにつれ、その重量に耐え切れず肩こりが起こるケースもある。

トレーナーの中野ジェームズ修一さんによれば「長時間立っているとき無意識に腕を組みたくなるのは肩まわりの筋肉が衰えているから。バッグなどをウェイトにした筋トレを取り入れることも肩こり対策の一つ」とのこと。

気づけば腕組みをしている人、試してみよう。

フロントレイズ(左右各10回×2セット)|僧帽筋と三角筋の前部を刺激する。

フロントレイズ1

  1. 椅子に座り、片手にバッグを持つ。

フロントレイズ2

2.そのまま4秒かけて腕を前方に伸ばしてバッグを持ち上げ、4秒かけて元に戻す。肩をすくめたり床と平行の高さ以上にバッグを持ち上げると肩関節に負担がかかるので注意。

リアレイズ(左右各10回×2セット)|僧帽筋と三角筋の後部を刺激する。

リアレイズ1

  1. 椅子に座り、片手にバッグを持つ。

リアレイズ1

2.今度は4秒かけて腕を後方に伸ばしてバッグを持ち上げ、4秒かけて元に戻す。軽く肘を曲げて行うとやりやすい。肩をすくめると三角筋への刺激が低減するので肩の位置は不動。

アーム・サークル(左右各10回転×2セット)|僧帽筋と三角筋を全方位的に鍛える。

アーム・サークル1

アーム・サークル2

アーム・サークル3

アーム・サークル4

  1. 椅子に座り、片手にバッグを持って自然に下に垂らしてセット。
  2. 軽く肘を曲げた状態で肩を中心にして上腕をできるだけ大きく回転。このとき肩より上に腕を上げないよう注意。また、回転動作で肩をすくめないように。