急にやってくる「痛い」!こんな時、どうする?

なんの前触れもなく、ある日突然、肩、腰、膝にふいに痛みがやってくることがある。この痛みは一体なんなのか、どう対処するべきか。“いつか”のために知っておこう。

取材・文/神津文人 イラストレーション/コルシカ 監修/竹谷内康修(肩)、三浦恭志(腰)、福井尚志(膝)

初出『Tarzan』No.918・2026年1月22日発売

膝・腰・肩がそれぞれ痛い人3人のイラスト
教えてくれた人

竹谷内康修(たけやち・やすのぶ)/〈竹谷内医院〉院長。国内の複数の病院での勤務、米国の大学のカイロプラクティック科への留学を経て、2007年に自身の医院を開業。これまでに19冊の書籍を執筆し、多くの新聞や雑誌にも出演している。

三浦恭志(みうら・やすし)/愛知県内の病院での勤務を経て、2013年より東京・銀座の〈東京腰痛クリニック〉の院長。現在は同院と〈あいちせぼね病院〉にて、腰の不調に悩む多くの患者への外来診療と手術治療を担っている。

福井尚志(ふくい・なおし)/東京大学大学院総合文化研究科教授。変形性関節症、スポーツ外傷・障害の研究に長年取り組んでいる。著書に『東大教授が本気で教える「ひざの痛み」解消法』(深代千之との共著)がある。

肩|痛みが首に近いか肩関節に近いかで大きく二分される。

「痛みの部位が首に近ければ、頸椎に原因のあるトラブルの可能性が高く、肩関節に近い場合は四十肩・五十肩と呼ばれる肩関節周辺炎の可能性が高いといえるでしょう。また、痛みと同時に腕や指などに痺れがある場合も、原因が頸椎にある可能性が高くなります」と話すのは、整形外科医・カイロプラクターの竹谷内康修先生。

肩関節に痛みが生じ、腕が上がらない、肩を回せないといった可動域制限が起こる四十肩・五十肩。首の骨や軟骨の変形によって、首・肩の痛み、腕の痺れといった症状が表れる頸椎症。どちらもある日突然痛みに襲われるものだが、前兆がないわけではない。

「肩こりや首こりは、その予兆ともいえます。肩と頭が前方に出るデスクワーク中の不良姿勢や、うつむいてスマホの画面を覗き込むような姿勢は、肩の痛みがやってくるリスクを上げるものです」(竹谷内さん)

凝りは放置せずにケアすべし。

1.会社の倉庫を整理中、棚の上の方にある段ボールを持とうとしたところ、肩に激痛が…。

肩関節周辺炎かものイラスト

その痛み、肩関節周辺炎かも…

肩関節周辺の組織に炎症が生じる肩関節周辺炎。40代、50代で悩まされる人が多いため、四十肩・五十肩と呼ばれている。可動域が制限され、肩が凍ったように動かなくなることから、凍結肩、フローズンショルダーなどという別称も。

高いところに手を伸ばそうとしたときなどに、突然痛みがやってくることが多い。発症すると、頭を洗う、ドライヤーで髪を乾かすといった日常動作が難しくなる。四十肩・五十肩の名から想像できる通り、若いときには起こりにくい。

2.草野球チームではピッチャーのポジション。ある試合で、9回を完投することに。すると翌日、肩がズキズキと痛みだした。

インピンジメント症候群のイラスト

その痛み、インピンジメント症候群かも…

インピンジメントとは、英語で“衝突”という意味の言葉。肩関節近くで、骨同士や軟骨、靱帯の衝突や擦れが起こることで炎症が起きている状態が、インピンジメント症候群。2025年に、ロサンゼルス・ドジャースの佐々木朗希選手が、右肩のインピンジメント症候群と診断されたことが報じられたニュースを覚えている人も多いのではないだろうか。

オーバーユースが主な原因で、腕を上げたときに痛みが生じることが多い。

3.高い位置にあるオフィスのPCモニター。毎日、長時間見上げる形で仕事をしていたらある日、首に痛みが発生。

頸椎症性神経根症かものイラスト

その痛み、頸椎症性神経根症かも…

頸椎を構成する椎体に骨棘(トゲ)ができたり、椎体同士の間が狭くなったりすることで、椎間孔が狭くなり、神経根が圧迫されているケース。デスクワーク中だけでなく、寝起きに突然首に痛みが出た場合も該当する。

もしくは、頸椎症性脊髄症かも…

頸椎症性神経根症よりも、さらに骨棘などが進行している状態で、神経根だけでなく、脊髄が圧迫されている状態。ほとんどの場合、手や腕に痺れが起こり、皮膚の感覚が鈍くなる。握力が低下する場合もある。

もしくは、頸椎椎間板ヘルニアかも…

椎間板の一部が飛び出し、近くを通る神経を圧迫することで痛み、痺れを引き起こす。神経根を圧迫することも、脊髄を圧迫することもある。

「ヘルニア、頸椎症を自分で見分けるのは難しいと思います」(竹谷内先生)。

腰|ぎっくり腰にも種類アリ! ストレスで発症することも。

腰の痛みと聞けば、多くの人が連想するであろう、ぎっくり腰。欧米では、魔女の一撃と呼ばれることもあるのだとか。

「一般的に広く使われている“ぎっくり腰”ですが、急に起こった強い腰の痛みの総称で、病名や診断名ではありません。ぎっくり腰と呼ばれる急性の腰痛の中には、たとえば筋・筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛、仙腸関節性腰痛といったものが含まれます」と、東京腰痛クリニックの三浦恭志先生。

筋・筋膜性腰痛にしても、椎間板ヘルニアにしても、突然、大きな負荷を腰の周辺にかけることが引き金になる。重いものを持ち上げる際には、しっかりと腰を落としカラダの近くで持つ。

運動前には十分なウォーミングアップをする、寝起きに激しい動きをしない、といったことを意識することが、急性の腰痛を防ぐことにつながる。もちろん、日常生活中の姿勢に気をつけることも大切だ。

1.仕事は在宅でデスクワークが大半。今日も一日座りっぱなしで作業をしていたら、急に腰に鋭い痛みが…。

筋・筋膜性腰痛かものイラスト

その痛み、筋・筋膜性腰痛かも…

腰に過度に負担がかかることで、腰周辺の筋肉や筋膜が損傷し、炎症を起こして急な鋭い痛みが出る腰痛。長時間の不良姿勢、中腰での作業や重い荷物の運搬、急な捻り動作などが引き金となりやすい。基本的には神経が圧迫されることはないので、腰に痛みはあっても、下肢の痛みや痺れなどは伴わない。軽度のぎっくり腰の多くは筋・筋膜性腰痛。

2.運動不足のために通っているジム。デッドリフトで、普段の重さより+10kgに思い切って挑戦しようとしたところ、腰に急激な痛みが…!

椎間板ヘルニアかものイラスト

その痛み、椎間板ヘルニアかも…

腰椎の椎体と椎体の間にある椎間板の一部が飛び出し、近くを通る神経を圧迫することで痛み、痺れを引き起こす。腰に痛みがあるだけでなく、臀部や下肢にも痛みや痺れがある、脚に力が入りにくいといった場合は、椎間板ヘルニアの可能性が高い。長期にわたる不良姿勢や、運動中の大きな腰椎への負荷が発症の原因になる。

3.料理中に手を切ってしまい、小さな傷だったので特に何もせずそのままに。傷口も塞いでしばらく経った頃、腰から背中にかけての部位がズキズキと…。

その痛み、椎体椎間板炎(化膿性脊椎炎・椎間板炎)かも…

脊髄や椎間板に細菌が感染し、炎症を起こすもの。細菌が感染してしまった部位(腰や背中)に痛みが生じるほか、発熱や全身の倦怠感を感じることも。感染源としては、カラダの別の部位(怪我、皮膚感染症、尿路感染症、歯周病など)からの菌の拡散であることが多く、細菌が血流に乗って、脊髄や椎間板に到達し、そこで炎症を起こす。

4.加齢とともに、足腰が弱ってきたと感じるこの頃。ある日、家で足を滑らせ尻もちをついてから、腰の痛みがずっと引かない…。

腰椎椎体骨折(圧迫骨折)かものイラスト

その痛み、腰椎椎体骨折(圧迫骨折)かも…

外部からの圧力によって、椎体が潰れたように折れてしまう骨折。胸椎で起これば胸椎椎体骨折となる。高齢者、特に骨粗鬆症のリスクが高い女性はちょっとした衝撃で骨折してしまうことがあるので注意が必要。尻もちや転倒以外に、重いものを持ったことがきっかけになることもある。また、徐々にカラダの重みによる負荷で椎体が潰れてしまうことも。

5.トイレで用を足していると、尿に若干の血が混じっていた。そうしていると、腰もジンジンと痛み始めてしまい…。

その痛み、尿路結石かも…

腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる疾患。腰、背中から脇腹にかけての激しい痛みと、血尿が典型的な症状。結石にはシュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石など成分によって種類がある。水分摂取量不足、糖分・塩分の摂取過多、動物性タンパク質および脂肪の摂取過多など、食生活が結石形成の原因であることが多い。

膝|腫れ、熱感があるかないかが原因を探るポイントの一つ。

腰や肩、首などと比べると、突発的な痛みが生じるイメージがあまりないかもしれないが、膝だってもちろん急性の痛みに襲われることがある。

「大きく分けると、鵞足炎やなどの運動中の繰り返し動作が原因になるものと、そうでないものに分けられるかと思います」と、東京大学大学院総合文化研究科教授で、整形外科専門医の福井尚志先生は語る。

とくに運動もしていないのに、日常生活中に起きた痛みの場合は、腫れや熱感があるか否かが原因を探る大きな手がかりの一つになる。

「痛風の場合は膝全体が腫れて熱を持ちますが、細菌の感染で起きるの場合は局所的に熱を持って腫れます。また高齢者で、急な腫れ、痛み、熱感が生じた場合、痛風発作や蜂窩織炎以外に偽痛風(ピロリン酸カルシウムの結晶が関節に付着することで起こる炎症)の可能性もあります」(福井さん)

1.運動不足解消のため、ランニングを開始。張り切って初日から長い距離を走っていたら、膝の内側に痛みが発生。

鵞足炎かものイラスト

その痛み、鵞足炎かも…

半腱様筋、薄筋、縫工筋の3つの腱は、膝の内側で脛骨に付着。その付着部はガチョウ(鵞鳥)の足に似ていることから、鵞足と呼ばれている。膝の屈伸運動が繰り返されることで、鵞足が脛骨と擦れて炎症が起きるのが鵞足炎。ランナーが悩まされるポピュラーな障害で、膝が内側に倒れるような走り方、歩き方をしている人は鵞足炎になりやすい。

2.歳を重ねるとともに、以前ほど快活に動きにくくなった近頃。ある日、階段を上っていると、膝に急な痛みが!

変形性膝関節症かものイラスト

その痛み、変形性膝関節症かも…

関節を構成する大腿骨と脛骨の軟骨がすり減り、ぶつかり合うようになることで痛みが生じる。立ち上がり、歩き始め、階段昇降時などに痛みを感じやすい。軟骨がすり減る主な原因は加齢・老化なので、なかなか予防することが難しい。進行すると、膝を曲げられず正座やあぐらの姿勢がとれない、安静にしていても痛いといったことが起こる。

3.趣味の登山で険しい尾根を縦走。得意なダウンヒルで飛ばしていたら、帰宅後に膝の外側がジンジンと痛みだした。

その痛み、腸脛靱帯炎かも…

腸脛靱帯は、太腿の外側を通る大きく丈夫な靱帯で、腸骨から脛骨までつながっている。膝の曲げ伸ばしを繰り返すことで、大腿骨の外側の骨隆起と腸脛靱帯が擦れ合って炎症が起きるのが、腸脛靱帯炎。急に長い距離を歩いたり走ったりしたときに起こりやすい。O脚の人、内転筋の筋力不足の人は、腸脛靱帯炎に悩まされやすい。

4.仕事終わりには大体、居酒屋で一杯。好きな組み合わせはビールとイカ焼きのコンビ!昨日も美味しく楽しんだところ、翌朝に膝に激痛が…。

痛風かものイラスト

その痛み、痛風かも…

尿酸値が高い状態が長く続くと、血中に溶け切れなくなった尿酸が関節や腎臓などに結晶として蓄積。この結晶が原因で急に関節に炎症が起きると、腫れて激痛に襲われる。これが痛風発作。足の親指周辺に起きるイメージがあるかもしれないが、痛風発作は膝に起きることも。アルコール、果糖、プリン体(レバーや魚類に多い)の過度な摂取に注意。

5.冬場で風邪やウイルスが流行し、周りでも具合が悪い人がちらほら。そんなある日、特に激しい運動も怪我もしていないのに、膝が熱を持って痛み出して…。

その痛み、蜂窩織炎かも…

膝関節の周囲の組織内に細菌が侵入し、化膿してしまう疾患。原因となる細菌は黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌など、さまざま。血液を通じて感染するケース、膝周辺の皮膚や筋肉が感染源となるケースのほか、怪我や注射、口や鼻から細菌が入り込むことも。細菌の増殖とともに急に症状が表れる。

すぐ病院に行けない、とっさの時の対処法。

仕事ですぐに病院に足を運べないときもあるし、周辺の整形外科が休みのこともある。まずは落ち着いて、冷静に対処しよう。

1.何よりもまず安静に! 痛めた部位は動かさない。

安静に座っているイラスト

肩、腰、膝。痛みが起きた部位がどこであれ、まずは安静にして、痛めた部位を動かさないことが大切。ストレッチをすればよくなるのではないか。マッサージをすれば痛みが和らぐのではないか。動かしていた方が血行が促進されて治りが早くなるのではないか。などなど、あれこれケアをしたくなるが、痛みを悪化させてしまう場合が多い。痛みのピークが過ぎるのを楽な姿勢で待とう。

ちなみに、急性の肩関節周辺炎、筋・筋膜性腰痛であれば、数日から数週間で回復する。

「正しい安静の姿勢があるわけではなく、自分が楽であることが大切です。椅子に座っていても構いませんし、横になっていても構いません」(三浦先生)

「運動中に痛みが発症した場合は、基本的には運動を中止しましょう。もう少し走れそうだと思っても、継続していいことにはなりません」(福井先生)

2.痛めた部位は、冷やすのがまず正解。

冷やしているイラスト

突発的な痛みが生じたとき、その部位を冷やすか、温めるかの判断を悩んだことがある人は多いのではないだろうか。炎症が起きている可能性が高いのだから冷やすべきか、筋肉や筋膜をほぐすために温めるべきか。

炎症を治める意味でも、鎮痛の意味でも、まずは安静にしながら冷却すべし。発症後48時間ほどの間は、氷囊などを用いながら定期的に(1回10〜15分程度を目安)冷やすとよい。

痛みを抑える手段として、抗炎症作用のある市販の湿布薬を活用するのも有効な手段。

「首に近い部分の痛みの場合、冷やすと不快だと感じるようなら無理に冷やさなくても構いません」(竹谷内先生)

「腰は広いので、全体を冷やそうとするとカラダが冷えてしまうこともあります。ピンポイントな痛みの箇所が判断できない場合は、慌てて冷やさなくても大丈夫です」(三浦先生)

3.痛みが引いたら、徐々にストレッチを。

肩を動かしているイラスト

急な肩・腰・膝の痛みの場合は、まずは整形外科を受診しよう。検査後、適切な科に回してもらえるはずだ。

遅くとも数日以内に受診するのが理想。椎体椎間板炎、腰椎椎体骨折、尿路結石、痛風、蜂窩織炎の可能性がある場合は、特に放置しないように。我慢できないレベルの激痛がある場合は、躊躇せずに救急のお世話になろう。

安静と冷却を続け、痛みが落ち着いたら、少しずつストレッチなどを始めてもOK。動かすことで血流を促そう。

「運動不足や肥満は、膝のトラブルが起こるリスクを高めます。痛みが引いたら、1日8000歩程度を目標に歩くようにしましょう」(福井先生)

「凝りや張りがある状態を常態化しないようにストレッチをする、スマホを覗き込むような姿勢を避けるといったことを心がけてください」(竹谷内先生)