
教えてくれた人
張 文徳(ちょう・ぶんとく)/中国医薬大学中医学院中薬学科教授。中医漢方と教育の両面から漢方・中医医療の現状を研究。特に中薬学、生薬学、薬用鉱物学、漢方薬の品質管理、薬用植物の細胞工学、環境制御型栽培などに焦点を当てている。中医学と漢方薬をテーマにした〈立夫中医薬博物館〉の副館長を務め、中医学の歴史や知識などの普及に努める。
漢方と養生をめぐる街歩き旅に出てみよう。

台北を歩くと、朝の通勤路にも、夜市の脇道にも、漢方薬局や鍼灸院の看板がさりげなく光っている。人々は日常で当たり前のように東洋医学的なケアを取り入れている。
「特に食への関心が高く、冬は冷え対策として薬膳料理を意識し、夏は暑さや湿気をさますために“青草”と呼ばれる薬草を煎じたお茶を飲む、といった養生法が昔から行われています。夏の間に冬の呼吸器トラブルを予防する“三伏貼”という治療も一般的で、季節とカラダを結びつけた健康法が、家庭や地域の経験として受け継がれてきました」(中国医薬大学中医学院中薬学科教授・張文徳さん)
漢方薬や鍼灸を用いて治療を行う中医学は、台湾において正規の医療行為として確立されており、西洋医学と併用して治療を行うことも一般的だ。健康保険制度にも組み込まれていて、中医クリニックに通っている人も多いという。ちなみに日本の漢方メーカーが生薬を仕入れたり、医師や薬剤師、学生が学びに訪れたりと日本が台湾から受け取ってきたものも多い。
「中医学が重視するのは、自己の免疫力を高めて外部からの邪気を払い、身体のバランスを回復させて、病気に抵抗できる状態を整えること。診察では個人の体質を9種類に分けて理解のうえ治療、体質に合わせた養生や食事の調整を行います。“清冠一号”という漢方薬の新型コロナウイルスに対する有効性がわかったことで、中医および漢方薬の利用率は30%以上増加しました。マッサージやカッピングなどの民間療法は、日常の疲れを和らげる目的で親しまれ、施術者の中には経絡など中医学の知識を応用する人もいます」
漢方スイーツ店に足を運ぶ若者や迪化街で生薬を量り売りしてもらう人。仕事帰りに青草茶スタンドに立ち寄り、足ツボや鍼治療を受ける人。そうした日常の延長線上に、当たり前のように養生文化が息づいている台北の街へ、“漢方薬と養生が効く”とはどういうことか、体感しに行こう。
迪化街(ディーホワチエ)|漢方の素材が当たり前に並ぶ台北最大の問屋街。


19世紀中頃に貿易の拠点として発展し、現在も乾物や漢方薬、からすみなどの高級食材を扱う問屋が集まる「迪化街」。常に賑やかで、店前の道にまで並べられた多種多様な生薬を、訪れた人たちが次々と買っていく。長い歴史を持つ漢方薬局もたくさんあり、台湾の人たちの生活にいかに漢方文化が根付いているかということを実感できるはずだ。台北市大同區迪化街。
生元薬行(センユエンヤオハン)|上質な生薬で自分だけの漢方薬をオーダーメイド。

創業約80年、地元の人に信頼の厚い町の漢方薬店。お店の裏にある診療所で漢方医の診察を受けると、自分の体調に合った漢方薬を処方してもらうこともできる。薬剤師たちが生薬や粉薬を調合する風景は思わず見入ってしまう。漢方の歯磨き粉やフェイスパックも人気。立派な店構えながら相談しやすい雰囲気で、日本語が話せるスタッフも在籍。台北市大同區南京西路181號。
漢補世家(ハンブースーチア)|若い世代からも注目されるブティック型漢方薬店。

代々、伝統中医学の知識を学んできた一族が手がける漢方薬局では、世界中から厳選した400種以上の生薬を扱っている。漢方薬の他、パウダータイプのシナモンや亀苓膏パウダー、ティーバッグ、薬膳鍋用スープ用に生薬を配合したものなど使いやすいアイテムがバリエーション豊かに揃っていて、新しい漢方薬ユーザーも取り込んでいる。台北市大同區民生西路362巷10號。
青草巷(チンツァオシャン)【青草横丁】|薬草を使った養生文化「青草」に触れる。

「青草」は、仙草やドクダミ、薄荷をはじめとする薬草のことで、台湾では古くから親しまれてきた。内服と外用の両方で使用。乾燥させたものをブレンドして煮出した「青草茶」はカラダの熱を冷まし、ダルさをケアできることから夏に欠かせない飲み物だ。薬草店が集まる「青草巷」では、屋台やペットボトルなどさまざまなスタイルで楽しめる。台北市萬華區西昌街224巷。





