痛すぎ・やりすぎはNG。正しいツボ押しのためのQ&A。
ツボ押しは“痛気持ちいい”が正解? 強さ・押し方・タイミングを、自分の中でアップデート。
取材・文/井上健二 イラストレーション/SUPER POP 取材協力/伊藤和憲(明治国際医療大学鍼灸学部学部長・教授、鍼灸博士)
初出『Tarzan』No.919・2026年2月12日発売

教えてくれた人
伊藤和憲(いとう・かずのり)/明治国際医療大学鍼灸学部学部長・教授、同大学院鍼灸学研究科大学院研究科長・教授、附属鍼灸施設臨床部長。著書に『はじめてのトリガーポイント鍼治療』『トリガーポイントマップ』(共に医道の日本社)など。
Q.どのくらいの強さがいい?

ツボ押しには、ツボ周辺のローカルな効果と脳や脊髄を介したグローバル的な効果がある。両方享受したいなら、やや強めに押す。少し痛いものの、心地良さを感じる「痛気持ちいい」が理想だ。
とはいえ、強ければ強いほどいいわけではない。強烈すぎると自律神経のうちでも交感神経が興奮し、筋肉も血管も緊張して縮こまる。「痛気持ちいい」なら副交感神経が優位となり、筋肉も血管も緩んでリラックスへ導かれる。
弱い刺激を長く続ける手もある。
「刺激が脳で少しずつ加算されて〝時間的加重〟となり、グローバルな効果が出る。数日貼るツボシールや鍼灸院で施術される置き鍼はこれを狙っています」(明治国際医療大学の伊藤和憲教授)
Q.どこを使って押すべき?

セルフケアのツボ押しでおもに用いるのは、手指の腹。爪先だと爪で肌を傷つける恐れもあるし、力がうまく入らない。指の腹なら面で押せてツボに適度な圧が入り、押す側の手も疲れにくい。
四肢は筋肉が薄いから手指でもいいけれど、体幹のように筋肉が分厚い部位を手指で押しても威力が深く及びにくい。そんなとき活用したいのは、ボール。ゴルフボールは小さく硬いため刺激が強すぎるから、まずは大きめでソフトなテニスボールを試そう。ことに自分では押しにくい背中のツボではボールが大活躍する。ツボにボールを当てたら、仰向けになって体重をかけるのだ。またツボ周辺の広いエリアに軽めの圧力をかけたいときは、掌や拳を使おう。
Q.1日に何回でもやっていいの?

筋トレと違い、ツボ押しは毎日やっても構わないが、1日何回でも無制限に押していいわけではない。やりすぎると全身に及ぼす影響が強く出すぎたり、大事なツボが傷ついたりする恐れもある。
「予防目的なら、1日3回朝昼晩行います。押すツボは1日3か所以内に留め、1セッションで押す時間は10秒×10回前後。次の1回まで5秒以上空けてください」
治療目的なら、症状が出ているとき、いちばん気になる地点を優先的に押す。1回5〜10秒×5秒以上の間隔で2〜3回、最大1日10セッションまで。治療目的で2〜3日押しても成果が自覚できないなら、様子を見つつ押す時間か回数を少しずつ増やそう。ただし両方一度に増やさないこと。
Q.三寸とかってどういうこと?

ツボの見つけ方には「骨度法」と「同身寸法」がある。
骨度法は一人ひとりの骨格に基づき、部位ごとに場所を定めるための尺度を決めるもの。正確にツボが取れるものの、やや煩雑だ。
そこでより簡単なやり方としてポピュラーなのが、同身寸法。手指のサイズは骨格にほぼ比例するから、その人の指幅でツボの在りかを探り出すのである。
具体的には、親指の横幅が1寸、揃えた人差し指・中指・薬指の横幅が2寸、揃えた親指以外の4指の横幅が3寸だ。
たとえば4寸なら2寸+2寸、6寸なら3寸+3寸でツボを取る。ゆえにパートナーのツボを押す際には、自分の指ではなくパートナー本人の指を使ってツボを探り当てるようにしたい。
Q.押してはいけないタイミング、場所、人がある?
ツボ押しはいつでも気軽に行えるが、控えたいタイミングもある。それは食事や入浴から1時間以内。急激な変化が起こりやすいので、ツボ押しはやらない方が無難だ。同じ理由で飲酒後もNG。
押すのを控えるべき場所もある。周辺にかぶれや湿疹などの皮膚疾患があるのに、ツボ押しを強行すると疾患が悪化することも。
時間も場所も問わず、ツボ押しを避けたいのは妊婦さん。ツボ押しが子宮の動きやホルモン分泌などを乱し、妊娠に何らかの悪影響を及ぼすことも否定できない。
また治療目的で1週間続けても変化がなかったり、逆に症状が悪くなったりしたら即中断。我流を捨てて専門家を訪ねてほしい。
Q.嫌いな人に押してもらっても効かない?

心理学に「ラポール形成」という言葉がある。相手との間に信頼関係や親近感を築くことであり、営業、医療介護、教育などの対人関係で重視される。
肌に直接触れるという特性上、知人や専門家にツボ押しを頼むときもラポール形成は大切。親しい人、信頼できる治療家にやってもらう方がリラックスできて効き目は高まる。そしてセルフケアでも心理面が与える影響は大きい。
「“効くわけない”と思って押すと悪い結果が出るケースもある。これをノセボ効果といいます。動物実験でも効果があることから、心理面を排除してもツボ押しや鍼灸治療は有効ですが、“これは効くぞ!”と信じて押した方がより良い成果を得やすいでしょう」


