長距離・トレラン・江戸走り。ランナーたちの足形を比較!
さまざまなフィールドで活躍するランナーの足には、一体どんな違いがあるのか。フットプリントから、専門医の戸原遼先生が特徴を分析。さらに、ご本人たちにランの魅力を聞きました。
取材・文/鈴木恵美 撮影/吉松伸太郎(佐藤さん、大場さん)、小川朋央(山田さん) 監修/戸原 遼(整形外科専門医、足と歩行のクリニック:rege 六本木院院長)
初出『Tarzan』No.920・2026年2月26日発売

教えてくれた人
戸原遼(とはら・りょう)/整形外科医。岐阜大学を卒業後、東京医科歯科大学の整形外科に入局。2024年の開院と同時に院長に。
長距離走者・佐藤早也伽|自分の走りを追求し続けて、目標は2時間20分切り。
佐藤早也伽(さとう・さやか)/1994年生まれ。東京2025世界選手権の日本代表メンバー。25年3月にたたき出した自己ベスト2時間20分59秒は、マラソン女子日本歴代10位の記録を誇る。

粘り強い走りで圧倒的な存在感を放つ、長距離ランナーの佐藤早也伽さん。2020年にマラソンデビューを果たし、トラック、ロードともに次々と自己記録を更新中。そんな佐藤さんのパワフルさはどこから来ているのだろうか。
「実はもともとそんなに体力がある方ではないんです。でも小さい頃から走ることは好き。中学校の時に陸上部に所属してから今までずっと走り続けてきたことで、少しずつ体力がついてきました。マラソンに挑戦するようになってからは、スタミナと持久力をつけるために走り込みと筋トレをさらに強化。今は1日2〜3回走っています。地道にコツコツと努力を積み上げてきたことが、粘りの走りに繫がっていると思います」
フットプリントを見て、ご自身の足形を分析してみると?
「ハイアーチなのは分かっていたのですが、意外にマメがキレイに治っていてよかった(笑)。着地時の衝撃を吸収して、脚への負担を軽減するために、足裏の柔らかさは必要不可欠。柔軟性を高めることでスピードを維持したまま気持ちよく走ることができるので、ウォーミングアップにダイナミックストレッチを行い、トレーニング後には硬めのボールを使って足裏をほぐすケアを徹底しています。それが今の私の足を作り上げているのかも。トレーニングは想像以上に大変ですが、それ以上に大会でいい成果を得られた時の達成感とやりがいは大きい。これからも自分の走りを追求し、マラソンでは2時間20分を切りたいです!」
足の専門医・戸原先生の解説|圧倒的なハイアーチで足のポテンシャルが高い!

理想的なアーチで、筋力も強いため瞬発力やパワーに優れます。ハイアーチの人は足裏のバネが強く、走るのが速い傾向にあるが、高すぎるアーチは足の裏への局所的な圧力のもとに。ケガリスク軽減のためにストレッチで柔軟性を高めているのは良い習慣です。
FAVORITE ITEM

トレーニングや競技中に愛用しているGPS付きのスマートウォッチと、軽やかなフィット感が特徴のサングラス。トレーニング後は、翌日に疲労を残さないために深部までほぐしてくれる硬めのストレッチボールを使用。
江戸走り走者・大場克則|江戸の走り方を活用して100kmマラソン制覇。
大場克則(おおば・かつのり)/江戸時代の走り方を研究して約11年。飛脚や忍者などが長距離移動に使っていた走り方に着想を得て「江戸走り」を考案。作務衣とわらじがトレードマーク。

25年、SNS界に彗星の如く現れた横向きになり半身で走る“江戸走りおじさん”こと大場克則さん。江戸走りのショート動画は2億7000万回以上再生されるほど大バズリし、時の人となった。
「江戸走りを研究したのは、100kmマラソンに挑戦し、膝が痛くてリタイアしたことがはじまりです。それから長く走れる走り方を調べ、江戸時代の飛脚は、重心移動を利用しながら脱力することで、1日100km以上も走っていたことが分かったんです。そこで文献を参考に、膝やカラダの角度や動きを工学的に研究して編み出したのが江戸走りです。前傾姿勢で膝を軽く曲げて、指の付け根部分にカラダを乗せて走るのが基本フォーム。指先で地面を摑みながら走るので、指先は柔らかく、指の付け根部分が分厚くなりました。でもこの走り方のおかげで100kmマラソンを完走できました」
次は東海道五十三次の江戸から京都まで約500kmの距離を江戸走りで走るプロジェクトを計画中。
「一度トライしたんですが、合計9日間もかかってしまったんです。今度は3日で走破が目標。2028年には挑戦したい」
戸原先生の解説|江戸走りの影響に負けず、変形を防ぐために足のケアを。

足部への過負荷などが原因でアーチが崩れ、両足とも内側に倒れ込み土踏まずが小さくなっている。指の付け根への圧力が強くタコができやすいため、普段は中足部〜後足部を安定させる紐履きのスニーカーを履くとなおよし。
FAVORITE ITEM

トレードマークのわらじは、日本で唯一手編みのわらじを作っている山形の〈軽部草履〉のもの。作りが丈夫で走りやすい。ただ本格的に長く走る時は、足指が自由になる足袋型シューズ《MARUGO》を愛用している。
トレイルランナー・山田陽|山を制するには、万全な準備と経験値を増やすこと。
山田 陽(やまだ・あきら)/フォトグラファー。1998年渡米し、現在はNYから東京へ活動拠点を移して活動。トレイルランニングと釣りを通じて、自然の中で身体感覚を深めることが趣味。

数々のウルトラトレイルレースの完走経験を持つ山田陽さんは、39歳の時に感じた足指の痺れをきっかけに走り始めたという。
「血流の悪さが原因だったようで、血流改善のために走ることにしたんです。何かを始める時、目標を決めることが大事と言いますが、僕の場合は時間帯や走る距離などを全く決めずに、朝でも夜でも空いた時間に走るぐらいの軽いスタンスで臨んだからこそ、今まで長く続けてこられた。結果、それが24時間朝も夜も走り続けるトレランの練習になっていました」
トレイルランは、フィジカルとメンタル両面での並外れた強さが求められる。そのために身体ケアはもちろんのこと、事前の準備を万全にすることが何よりも大事。
「険しい山道を夜通し走るのは、想像以上に過酷。爪は剝がれるし、トラブルはつきもの。心が折れそうになることばかりなので、事前に起こりうるリスクにいかに対策を講じておけるか……。経験値を上げて、マネジメント能力を身につけると、余裕を持って挑めるようになり、自然と自分のカラダと対話しながらトレランを心から楽しめるようになります」
戸原先生の解説|山を駆け下りるゆえに指に力が入りやすい傾向が。

非常に顕著なハイアーチ。外側重心で、指先に力を入れて踏ん張ることが多いのでは。指のタコや爪のトラブルを引き起こしやすいといえます。足首の硬さも懸念されるので、柔軟性を高めるストレッチをおすすめします。
FAVORITE ITEM

耳を塞がない骨伝導イヤホンや暗くなった時にすぐに取り出せるヘッドライト、ケガ防止や紫外線対策に適したサングラス。また、薄手ながら防寒対策にもなるグローブなど、安全と快適さを考慮したトレラン装備を活用。



