Qちゃんこと高橋尚子さんが実演!ラン前後の超実践的ストレッチ。
「突然ですが、いきなり走っていませんか? 絶対NGです!」と警鐘を鳴らす国民栄誉賞ランナー・高橋尚子さん。彼女が実践するストレッチで、走りをよりラクに、楽しく。
取材・文/石飛カノ 撮影/内田紘倫 ヘア&メイク/小森真樹(337inc.) 編集/星野“cap”徹
初出『Tarzan』No.920・2026年2月26日発売

教えてくれた人
高橋尚子(たかはし・なおこ)/中学時代から陸上競技を始め、大学卒業後は実業団に所属。2000年シドニー五輪で金メダルを獲得し、国民栄誉賞を受賞。現在は日本オリンピック委員会評議員、スポーツキャスターなど各方面で活躍。
ランの質を向上するストレッチ。
ランニングを楽しく続ける第一条件は「ケガをしないカラダを維持すること」と言うのは、シドニー五輪の金メダリスト、Qちゃんこと高橋尚子さん。
「走ることに楽しみを見つけられる方が多くなったのは確か。でもビフォーやアフターのケアはどうしてもおろそかになりがちで、その結果ケガをして長続きしないケースが増えていると思います」
走っている間に酷使するふくらはぎや股関節、負荷がかかりやすい膝はとくに入念なケアを心がける。下半身だけでなく、腕振りのパフォーマンスに関わる肩まわりや背中のストレッチも抜かりなく。
「ランニング前はパフォーマンス向上のための動的ストレッチを中心に行い、ランニング後は同様のストレッチを行った後、疲労を残さないための静的ストレッチをプラスαで行いましょう」
Qちゃん直伝、超実践的なストレッチプログラムを今日から早速取り入れてみてほしい。ランの質がぐんと上がること間違いなしだ。
ラン前に実践すべき5つのストレッチ。
1.ふくらはぎのストレッチ

- 両足を前後に開いて立つ。足の幅は2足分程度で、前の脚の膝は軽く曲げる。
- 両足裏を地面につけたまま10秒かけて上体を前に倒しながら後ろの脚をまっすぐに伸ばす。左右各10秒×3セット。
2.ふくらはぎ奥のストレッチ

- 続いてふくらはぎの深部を伸ばす。足幅を1足半くらいで前後に開き、10秒かけて後ろの脚の膝を曲げる。両足裏とも全体が地面から離れないように。ふくらはぎが硬い人ほど膝の角度が甘くなる。左右各10秒×3セット。
3.膝まわりのウォーミングアップ

- 着地時に体重の約3倍の負荷がかかる膝のウォーミングアップ。両足を前後に開いて立ち、前の脚に体重の約8割をかける。
- そのまま前に出した膝を10秒かけて内回し5回、外回しを5回、逆脚でも同様に行う。
4.股関節のストレッチ

- 両足をできるだけ大きく左右に開いて立つ。足の爪先はできる範囲で外側に向ける。
- 膝を深く曲げ、左右の肘を太腿の内側に乗せる。相撲の四股のイメージ。
- そのまま片脚を交互に伸ばして左右に重心を移動。10往復行う。
できる人は……

基本のストレッチが簡単すぎる人は、重心移動をしたとき、同時に体重がかかっていない方の足の爪先を上げて行ってみよう。
さらにできる人は……

さらにできる人は、左右の手で内側から足首を摑み、重心移動の際に、体重がかかっていない方の足の爪先を上げてみる。
5.肩のストレッチ

- 肩甲骨まわりをほぐして腕振りのパフォーマンスをアップ。左右の掌を腕の付け根にセット。
- 肘からビームが出ていることをイメージしながら、肘を下から前、上、後ろ、下の順番でゆっくり10回転。続いて逆回しで10回転行う。
膝のウォーミングアップはケガ予防の要です。
市民ランナーの方がケガをしやすいのは膝。着地するごとに自分の体重の3倍近くの衝撃がかかるからです。なので、走る前の体操で膝まわりの筋肉を呼び覚ましましょう。体重の3倍の重量がいきなり頭上から降ってきたら怖いですよね。でも体操でこれからそういう衝撃が来る、と筋肉に伝えてあげることでケガの予防にも繫がります。
ラン後に実践すべき5つのストレッチ。
1.太腿のストレッチ

- 地面反発を利用した走り方で疲弊した太腿をストレッチ。片脚立ちになり、片手で同じ側の足を摑んで前腿を伸ばす。このとき腹筋に力を入れ、摑んだ脚の膝を前に出すつもりで力を入れると、より伸びる。左右各10秒キープ。
NG

バリエーション

太腿の前を伸ばしたら、今度は足を持つ手を逆の手に入れ替えて太腿横の腸脛靱帯を伸ばす。10秒キープ。逆脚も同様に。
2.腰まわりのストレッチ

- 長座して両手をカラダの後ろにつき、姿勢を安定させる。片脚の膝を曲げて逆脚の膝の外側で足を地面につける。
- 伸ばした脚の側の腕を曲げた膝の外側に添えて上体を捻り、10秒キープ。立てた膝の側のお尻と腰が伸びる。逆も。
できる人は……

できる人は伸ばした脚の膝を外側に開いて曲げ、上体を立てた膝の内側に向かって倒して10秒キープ。お尻と腰がより伸びる。逆も。
3.内腿のストレッチ

- 地面に座ってあぐらの姿勢をとる。
- 左右の足の裏をくっつけて両手で爪先を摑んだら、地面に向かって膝を外側に倒していき、痛気持ちいいところで10秒キープ。できれば膝が地面につくくらい倒すのが理想。
より伸ばしたい人は……

合掌ポーズで10秒肘と膝で押し合った後に膝を地面に倒す。筋肉は力を入れた後、神経反射によって緩みやすくなる。
4.股関節まわりのストレッチ

- 仰向けになり両手で片膝を抱えて10秒キープ。
- 次に抱えた膝を内側に倒して地面につけ10秒キープ。
- 最後に外側に倒して地面につけ10秒キープ。お尻、腰、内腿、ハムストリングスなど股関節全般のストレッチ。逆脚も同様に。
5.背中のストレッチ
- 〆は背中のストレッチ。まっすぐに立ち、両手を頭の上に上げたバンザイ姿勢をとる。
- 肩甲骨を寄せて背中側に肘を下ろしていき、肘が体側についたところで10秒キープ。血液の巡りが良くなって肩甲骨まわりの疲労が回復。
腕を振れば自然に足が進む。長距離ランは計画的に。
長い距離を走るときにふくらはぎの筋肉を使ってぴょんぴょん跳んでしまうと体力がもちませんし、同じ筋肉に過剰な負担がかかります。
そこで、たとえば前半は腕振りの勢いで足を進めて、後半は脚を使い、最後はまた腕振りを意識して走ってみてください。腕を振ったら必ず足が前に出ます。それを信じて腕をしっかり振りましょう。
辛いと感じたら姿勢改善、顎を引いて視線を下げる。
走っているときに辛いと感じたときは、姿勢を見直しましょう。疲れてくると無意識に顎が上がって骨盤が後傾してしまうことが多くなります。そうなると背筋で上体が引っ張られて重心が後ろに移動し、思うように前に進めません。
解決策は顎を引いて視線を下げて上体の前傾姿勢を意識すること。重心が前に移動して辛さが軽減します。




