コーヒー・朝食より効くのは?目覚めを変える朝習慣ランキング。
一日を有意義に過ごすために朝起きた瞬間からできること。効果アリとわかっている中でも絶対にやるべきはどれなのか? 専門家たちが本気で選んだ!
取材・文/石飛カノ イラストレーション/AZUSA
初出『Tarzan』No.921・2026年3月12日発売

睡眠・目覚めのスペシャリストたち。
三橋美穂(みはし・みほ)/快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。寝具メーカーの商品開発やマーケティングなどを経験後、2003年に独立。講演活動のほか、寝具や快眠グッズのプロデュースも手がける。
角谷リョウ(すみや・りょう)/睡眠&超回復研究所所長。フィットネストレーナーとして活動すると同時に睡眠の重要性に着目。現在は180社16万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善をサポートする。
田原優(たはら・ゆう)/広島大学大学院医系科学研究科准教授。早稲田大学を経て2022年より広島大学大学院にて体内時計、時間栄養学、睡眠に関するAI/IoT機器の研究などに携わる。
ヒラノマリ(ひらの・まり)/スリープトレーナー。人気のアスリート専門の睡眠トレーナー。プロ野球選手、五輪メダリストなど一流アスリートの睡眠をサポートするほか、講演や商品開発も行う。
友野なお(ともの・なお)/睡眠コンサルタント。(株)SEA Trinity代表取締役。行動療法からの睡眠改善、寝室空間づくりを得意とする。講演や企業の商品開発など幅広い分野で活動。
柳沢正史(やなぎさわ・まさし)/筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)機構長教授。テキサス大学サウスウェスタン医学センターなどで研究室を主宰後、2012年に現職に就任。
菅原洋平(すがわら・ようへい)/作業療法士。ユークロニア(株)代表。生体リズムを活用して業績を高めるビジネスプランを提案。企業を対象に睡眠、脳の生産性、情報処理などを指導。
柴田重信(しばた・しげのぶ)/早稲田大学理工学術院名誉教授、広島大学大学院教授、愛国学院短期大学特任教授。日本時間栄養学会理事・顧問。体内時計と食事、運動などの関わりについての研究に従事。
第10位|好きな音楽をアラーム代わりにして起きる。

目覚まし時計のジリジリ音はどうも苦手という場合は音楽を利用する手も。
「一般的なアラーム音は目覚めの方法として最もストレスが大きいことが分かっています。好きな音楽、それも歌詞がない音楽の方が目覚めがいいという研究報告もあります。理想は鳥の声や波音のような自然音」(角谷リョウさん)
第9位|ベッドの中でストレッチを行う。

第8位は目が覚めたら軍隊並みに秒でベッドから出ろ、という意味ではない。ベッドの中でストレッチを行ってから起きるくらいの猶予はOKだ。
「起床後に飛び起きるのは逆にカラダに負担をかけるので、手足をグーパーしたり全身をグーッと伸ばすなどしてからゆっくり起き上がりましょう」(友野なおさん)
第8位|起きたらすぐにベッドから出る。

覚醒後のベッド内でのぐずぐずタイム。ある意味至福だがおすすめできない。理由は「脳は場所と行為をセットで記憶するため、睡眠と睡眠以外の行為を分けることが重要だからです」(菅原洋平さん)
ベッドからすぐ出られない場合は、上半身を起こして頭を持ち上げると睡眠から覚醒の脳波に移行するとか。
第7位|自宅リモート作業をできるだけ窓際で行う。

「リモート作業が増えると、日光を浴びる時間や運動量が減ります。するとセロトニンやメラトニンが作られにくくなり、一日のメリハリがつきにくくなります。午前中の作業はできるだけ窓際で」(ヒラノマリさん)
「太陽光は浴びれば浴びるほど夜間のメラトニン分泌量が高まります」(三橋美穂さん)
第6位|朝食前に1杯の水を飲む。

「睡眠中にはコップ1杯分の寝汗をかくのでカラダは砂漠化状態。常温以上の水をコップ1杯飲んでカラダを潤しましょう」(友野なおさん)
「水を飲むことで“胃結腸反射”が引き起こされるので、自然なお通じが促されます。体内のエンジンをかける作業。おすすめは人肌程度の白湯です」(三橋美穂さん)
第5位|寝室のカーテンをあらかじめ開けておく。

寝室の窓が月の光がガンガン入ってこない位置関係にあるのなら、寝るときにあらかじめカーテンを開けておくのもおすすめ。
「脳の体内時計の中枢に朝が来たと教える仕組みとして有効です。朝の光が自動的に入ることでコルチゾールという覚醒ホルモンの分泌が促されます」(柴田重信さん)
第4位|起床後にウォーキングやジョギングをする。

時間が許せば4位の運動も習慣にしたい。適度な運動は心拍数や体温を上昇させ、交感神経を活性化させる。つまりカラダを覚醒モードに導いてくれる。午前中に外に出れば、より太陽の光を浴びることができて一石二鳥。
さらに、ジョギングやウォーキングなど規則的なリズムを刻む運動では脳のセロトニン分泌が促され、メンタル的にも好影響が期待できるのだ。
午前中に15分くらい散歩やジョギングをするのがおすすめ。(ヒラノマリさん)
朝、だらだらせずに運動する条件を作り出しましょう。私はよくひと駅分歩いています。(田原優さん)
起床後のウォーキングでカラダを覚醒させ体温を上げるのが習慣です。(柴田重信さん)
第3位|コーヒーまたは緑茶などでカフェインを摂る。

起きている時間が長くなればなるほど眠気は増していく。理由のひとつは、アデノシンという睡眠物質が脳内に溜まっていくから。カフェインはそのアデノシンの受容体を先回りしてブロックするので、眠気が帳消しになる仕組み。夕方以降のカフェインは覚醒レベルを無駄に上げるので厳禁だが、朝のカフェイン補給は大いにおすすめ。というわけで堂々の第2位。
私は毎朝、牛乳をたっぷり入れたカフェオレを朝食代わりにしています。(柳沢正史さん)
体内時計を整える栄養素を研究してきた中では、カフェインが最も有効でした。(田原優さん)
交感神経を刺激するコーヒーや緑茶のカフェイン効果で活動的になります。(柴田重信さん)
第2位|朝食を食べる。

体内時計の機能からすれば、一日のリズム作りの第一条件は太陽の光、次は食事。そのセオリー通りに朝習慣の2位は「朝食」。
光は体内時計の中枢の視交叉上核に働きかけるが、言ってみればそれだけの話。全身の細胞に存在する体内時計の遺伝子には何の刺激にもならない。末梢時計は食事をして初めてリセットされるのだ。
コンダクターひとりが目覚めていても、楽団員が眠りこけていたら演奏は始まらない。よって、目覚めたらできるだけ早いタイミングで朝食を摂ることが重要。
タンパク質を摂ると体温が上がり、一日のエネルギー消費効率が良くなります。(睡眠アドバイザー・三橋美穂さん)
深部体温を上げるために、朝食前に温かい飲み物を飲むとベターです。(作業療法士・管原洋平さん)
起きて1時間以内に朝食を食べてほしいです!(スリープトレーナー・ヒラノマリさん)
第1位|起床後、朝の光を浴びる。

起床後は朝の光を浴びる。何度も耳にしている朝習慣が、得票数7で納得の第1位。なぜ、朝の光が目覚めを促すのか? その理由を改めて解説しよう。
朝の光の受容器はもちろん目の網膜。ただ、形や色を識別する桿体細胞や錐体細胞ではなく、光情報を受け止めて脳に送るのは網膜神経節細胞にあるメラノプシンという青い光の受容体。メラノプシンが受け取った光情報はただちに脳の視床下部にある視交叉上核に送られる。ここは体内時計の最高司令室に当たる神経の固まり。ほとんどのヒトの体内時計サイクルは地球の自転リズムより若干長く、この光情報の到達によって地球リズムにリセットされる。
具体的には脳の松果体に働きかけて睡眠ホルモンのメラトニン分泌をプログラムする、あるいは脳下垂体からホルモンを介して副腎皮質に信号を送り、血糖値を上昇させるコルチゾールの分泌を促す等々。目覚めてからシャキッと動けてその日の夜の睡眠のタイミングが約束されるのは、光情報あってこそなのだ。
専門家たちも口々に言っている。朝目が覚めたらカーテンを開けよう、外に出よう、と。
光情報が脳とカラダに及ぼす作用。

視交叉上核に光情報が届くと、松果体からのメラトニン分泌が一旦抑制され、夕方以降の分泌がプログラムされる。同時に下垂体からのACTHというホルモンの指令で副腎皮質からコルチゾールが分泌される。
ガラス越しでも効果はありますが、ベランダなど日光に近いほど効果的。天気にかかわらずベランダに出ましょう。ベランダに出るだけでなく、朝食を摂ればさらにGOOD!(睡眠アドバイザー・三橋美穂さん)
太陽光を浴びるのが理想ですが、冬は日の出が遅く現実的ではありません。冬は起床直後に天井照明を最大光量で点ける、光目覚まし時計を活用するのがおすすめです。(快眠トレーナー・角谷リョウさん)
動物実験でも重要なのは朝の光と食事です。このふたつがワンツーフィニッシュです。ただし、夜間は月の光が入らないようカーテンを閉めて寝るのがおすすめです。(広島大学大学院医系科学研究科准教授・田原優さん)
体内時計のリセットには2500ルクス以上の明るさが必要。室内は100〜500ルクスなので屋外に出るかベランダで過ごしましょう。夜のメラトニン分泌にも関わります。ぐっすり眠るためには「朝の仕込み」が大切。(スリープトレーナー・ヒラノマリさん)
太陽の光が目に入ることでメラトニン分泌が抑制され、活動モードのスイッチが入ります。 体内時計をリセットし、一日のスタートを決める重要な習慣です。(睡眠コンサルタント・友野なおさん)
一番大事なことは十分な睡眠を取ること。でも敢えて朝の習慣を挙げるとしたら、朝の光を浴びたらすぐベッドから出る、これをワンセットで行うことが大事です。(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(IIIS)機構長教授・柳沢正史さん)
ベランダに出られれば臨床的には1分程度でも朝、目覚めやすくなります。窓際で過ごすなら最低10分程度過ごしましょう。光感受性が高い人の場合はとくに、朝目覚めて夜眠くなるリズムが作れます。(作業療法士・管原洋平さん)


