日中のパフォーマンスも改善。人類の睡眠を救う、CPAPとは?

睡眠時無呼吸症候群(SAS)の程度を改善するCPAP。健やかな睡眠を求めるなら、ぜひ知ってほしい治療法である。睡眠中の酸素が確保されると、症状の緩和以外にも、さまざまないい効果が。

取材・文/松浦達也 イラストレーション/うえむらのぶこ 監修/成井浩司(赤坂おだやかクリニック名誉院長)

初出『Tarzan』No.921・2026年3月12日発売

CPAP(シーパップ)をつけて寝ている男性

そもそもCPAP(シーパップ)ってなんだ?

知っている人と知らない人の認識にこれほど分断がある治療も珍しい。「CPAP(Continuous Positive Airway Pressure/持続陽圧呼吸療法)」。睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」の治療法であり医療機器だ。国内睡眠治療の第一人者、〈赤坂おだやかクリニック〉の成井浩司氏はSASをこう説明する。

「睡眠中、舌が重力で喉側へ沈むと、気道が狭くなり、振動していびきが起きます。喉が完全に塞がれば無呼吸に。重症者は、これを一晩に何百回も繰り返します」(赤坂おだやかクリニック・成井浩司さん)

この狭くなった気道を広げるのがCPAP。気道や呼吸の状態に合わせて、鼻に着けたマスクから空気を送り込み、その圧力で気道を広げ、呼吸を正常化する。

「深刻な疾病リスクを下げ、QOLも向上します。重大な副作用はほとんどなく、無呼吸の程度によらず、勧めたい治療です」

国内70万人が使用するCPAP。もちろん保険適用される。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)がカラダに及ぼすリスク。

そもそも「睡眠時無呼吸症候群」と言われても、どれほどのリスクがあるのだろうか。

「まず夜中に呼吸が止まるたび、体内の酸素濃度が下がります。本来は睡眠中に休まるはずの交感神経が優位になり、血圧の上昇で血管に負担がかかります。さらに低酸素のストレスがインスリンの働きを悪くし血糖値が上昇、肥満や代謝障害につながるなど、さまざまな疾病の原因となります」

糖尿病や生活習慣病のほか、高血圧、不整脈、動脈硬化、脳梗塞などの血管系の疾患が増え、突然死のリスクも高まる。

「日常にも影響があります。日中に突然の強い眠気に襲われる人も数多くいます。他にも、睡眠の分断やレム睡眠への影響で、情緒が不安定になるケースもあり、睡眠の質の低下は仕事の質の低下、ひいてはGDPを押し下げるほどの社会的損失になりかねません」

自分や周囲に心当たりがある人は早めに受診してほしい。

CPAP導入によるQOLの向上。

CPAPを導入した効果は、当の本人にしかわからない。だが、効き目を実感する誰もが口を揃えて喜ぶのが、次の点だ。

  1. 夜中にトイレに起きなくなる。
  2. ぐっすり寝たという快眠感。
  3. 日中のパフォーマンスが上がる。
  4. 情動が安定する。

実際、本稿を書いている筆者自身もCPAP使用者で、導入で1〜3は劇的に改善した。導入前の1は必ず朝の4時頃にトイレに起きていたのが、目覚ましまでぐっすり眠れて2の実感も大きい。3は特に昼食後など抗いがたい眠気に襲われることがなくなった。4も緩やかに良化した実感がある。

そのうえで成井氏は「20歳の頃より体重が増えているようであれば、減らせればなおいい」と言う。減量すると気道が開いて、送風が減圧される。結果、より快適にCPAPが使えるようになるのだ。

「体重20%減で、無呼吸の重症度指数50%減との報告もあります」

使えよ、されば開かれん。

見た目で判断できる? CPAPが必要な人とは。

SASには自覚症状がない人も多い。自分はもちろん家族であっても、単に「いびきをかく人だ」程度の認識のことも。チェックポイントは以下の通り。

  1. BMIが27以上/二重顎
  2. 開けた口から喉の奥が見えない
  3. 舌や頰の内側を嚙みやすい
  4. 顎が小さい/下の歯並びが悪い

程度の差はあっても1はほぼ確定。2、3は体重の増加により舌や口腔内に脂肪がついた状態だ。特に舌が太ると仰向けになったときに舌が自重で喉側に沈み、気道狭窄や閉塞に至る可能性が高い。

4は他の項目との合わせ技だが「歯列矯正歴のある人も、昔歯並びが悪かったなら、下顎の骨格が小さく、加齢に伴い無呼吸になっている可能性がある」のだとか。

さらにSAS患者の男女比は変わらないという。「男性の方が多く受診しに来ますが、特に閉経後の女性はホルモンの関係でSASが起きやすくなるので、何か変調を感じたらいつでも来てほしい」。

もしも合わないと感じたら。

CPAPで最大の課題となるのは処方された装置と相性が合わないことだ。マスクの装着感や送風の圧などが苦手で使い続けられない人が一定数いるという。

「それでも対処法はあります。1.マスクのサイズや固定するゴムバンドの締め付けを調整する。それでもダメなら、2.装置の圧の設定を医師に変えてもらう」

これで快適に使えるケースもかなりある。が、それでも合わないなら、3.装置・クリニックの変更が視野に入る。現在、国内で処方されるCPAPの主要メーカーは数社あるが、多くのクリニックでは、1〜2種類のみの扱いだ。

「メーカーや機種はクリニックに問い合わせれば教えてくれるはず。裏技としては、4.購入する手もあります。保険適用外になりますが、旅行用に2台目として、また処方基準に満たない軽度の無呼吸で購入する人もいますし、直販しているメーカーもあります」

睡眠は生涯にわたる重要課題。ベストパートナーを見つけよう。

CPAPの基礎を伺った〈赤坂おだやかクリニック〉

お話を伺った成井名誉院長も診察している医院。対面診察以外に、オンライン診察も受け付けている。東京都港区赤坂5-3-1 Biz Towerアネックス2F。WEBサイト