コメディ映画で血糖値が下がる? 健康寿命を伸ばす小さな習慣。
食事と運動以外にも、老けないためにできることは多い。映画の主人公たちのように、笑顔と感謝から始めてみる?
text: Kenji Inoue, Keisuke Kagiwada
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教えてくれた人
大平哲也(おおひら・てつや)/1965年福島県生まれ。福島県立医科大学医学部疫学講座主任教授。ふくしま国際医療科学センター放射線医学県民健康管理センター健康調査支援部門部門長などを務める。
1日1回声に出して笑う。
「笑う門には福来る」というが、よく笑う習慣はアンチエイジングにも結びつきそう。
適度なストレスは人生のスパイスとなるものの、過度なストレスは心身にダメージを与えて老けさせる。この行きすぎたストレスを解消するのに、もっとも手軽で確実な手段は笑うこと。
「副腎から分泌される代表的なストレスホルモンで、多くの疾患を招くコルチゾールのレベルが、笑うと30%ほど減ることが知られています」(福島県立医科大学医学部の大平哲也教授)
効能はそれだけにとどまらない。笑うと高すぎる血圧も血糖値も下がる。どちらも老化の元凶だ。この他、よく笑う人は心臓病の発症リスクや、要介護になるリスクも低下するため、健康寿命を延ばすことにつながるのだ。
「肝心なのは感情よりも顔と声。とにかく1日1回、声に出してワッハッハと笑ってください。それだけでコルチゾールが減り、血圧も血糖値も下がります」
とりあえず週末になったらここに紹介した映画を1本ずつ観て、腹を抱えて思う存分笑ってほしい。
笑わないと要介護になりやすい。

65歳以上のおよそ1万4000人を3年間フォローアップした研究。ほとんど笑わない人は、よく笑う人と比べて3年後に要介護になる可能性が2倍以上になっている。
出典/J Epidemiol. 2021 May 5; 31(5): 301-307.
笑顔になれる映画5選
『プリティ・ウーマン』

写真/Alamy/アフロ
やり手ビジネスマンと娼婦ビビアンの恋物語。プレゼントとして宝石ケースを開いて見せる彼は、彼女が中身に手を伸ばした瞬間にケースをバタン。一瞬の沈黙の後、二人はニッコニコ。大人の付き合いにも遊び心は忘れちゃいけないのだ。
『40歳の童貞男』

写真/Everett Collection/アフロ
題名通りの属性の主人公が、モテ男を目指すラブコメ。まず脱毛サロンを訪れた彼は、体毛が剝がされるたび想像を絶する激痛に「お前なんか嫌いだ!」と絶叫。なぜか女性シンガーの名前などを口走り、付き添いの悪友も施術者も大爆笑。
『ジム・キャリーのMr.ダマー』

写真/AFLO
おバカな男2人が惚れた女を追いかけカリフォルニアから薄着のまま雪山を目指す珍道中。「燃費がいい」という謎の理由で車を児童用バイクと交換したりしつつ雪山に到着した二人は奇跡を祝して笑顔のハイタッチ。こっちまでニンマリ。
『SEXテープ』

写真/Everett Collection/アフロ
ある珍事の解決に奔走する夫婦の喜劇。その道中、仕事相手の男と酒を酌み交わす妻は、堅物に見えた彼にラッパーの刺青があると知り、笑顔でその秘密を分かち合う。時に酒は最短ルートで笑うための魔法となるのだ。だけど、飲み過ぎは禁物。
『テッド』

写真/Photofest/アフロ
喋るテディベアのテッドと中年男の生活を描く本作で、ふたりは毎日バカ話に花を咲かせる。テッドが不穏な親子に声をかけられれば、男は「童謡を歌って切り刻みたかったのかも」と爆笑。くだらぬことで盛り上がれるって素敵だ。
『最高の人生の見つけ方』

写真/Alamy/アフロ
末期患者のエドワードとカーターは人生最後の旅に出る。終盤、喧嘩別れしたままカーターは亡くなるが、残された手紙に綴られていたのはエドワードへの感謝。「恩を返す術がない。だけど言わせてくれ。人生を楽しめ」。その言葉に奮起した彼は疎遠になっていた娘を訪ねて、孫を抱きしめるのだった。
30分に一回立ち上がる。
2014年に《アップルウォッチ》を初披露した際、当時の〈アップル〉CEOのティム・クックは「坐ることは新しい喫煙だ(Sitting is the new smoking)」と言った。坐りすぎは、老化や病気の元凶であるタバコと同列に語れるくらいカラダに悪いからだ。
なぜ悪いか。最大の理由は、下半身の大きな筋肉が動かないため、血流が滞り血圧や血糖値が上がりやすくなるから。長年続けると足腰から筋力が衰えて将来フレイル(虚弱)に陥りやすい。スマートウォッチから通知が来なくても30分に一回は立ち、歩き回って血流を促すことを新ルーティンに。
平日も休日も同じ時刻に起きる。
適切な睡眠も若々しさの源。まずは十分な量を確保する。
「目安となるのは、日中に眠気がなく、集中力を維持できて、仕事などのパフォーマンスも落ちないこと。8時間睡眠がベストだと思い込んでいる人もいますが、この条件がクリアできるなら、6時間でも7時間でもOKです」
質に関しては、毎朝起きる時刻を固定してパターン化することが重要。それにより、全身の代謝や免疫などをコントロールする体内時計が、昼夜の入れ替わりに合わせて正しくリセットされる。
体内時計のリズムを崩さないためには、休日も平日とだいたい同じ時刻に起きるのが理想。
「すみません」ではなく「ありがとう」と言う。
ポジティブな言葉を発することはメンタルヘルスだけではなく、健康寿命にも影響する。なかでも大切なのは「ありがとう」と感謝を言葉にすること。
大平先生らの調査では、毎日複数回「ありがとう」と言っている人は全体の30%ほど。そのグループと比べると「ありがとう」と言う機会がほとんどない人では高血圧や糖尿病、認知症といった生活習慣病に罹る率が有意に上がる。
「感謝の言葉が言えるのは、人付き合いがある証拠です。外に出て人に会うことで活動量が増えて、感謝を口にするとストレスの軽減にも結びつく。それで生活習慣病リスクが下がるのでしょう」
感謝されるより、感謝する方が心身の健康度はアップする。お店に行ったら、あえて有人レジを利用して対応したスタッフに「ありがとう」とお礼を述べてみよう。
職場でも家庭でも何かしてもらうと「ごめん」とか「すみません」と返しがちだが、そこは「ありがとう」と言い換える。エレベーターの扉を押さえて待ってくれたら「すみません」ではなく「ありがとうございます」だ!
感謝の頻度と生活習慣病との関連。

65歳以上の2万2000人以上を対象とした解析の結果。感謝の頻度がほとんどない人は、1日数回以上笑う人と比べて生活習慣病の有病率が高い。
出典/日本循環器病予防学会誌第61巻第1号(2026年3月)
年に4回歯医者に通う。
「明眸皓歯」とは美人の喩えだが、美しく白い歯は男女を問わず若々しさのシンボル。外見だけでなく、歯を健康的に保つと内面のアンチエイジングにもつながる。
大事なのは歯周病の予防改善。歯周病とは歯周病菌により、歯肉(歯茎)に炎症が起こるもの。成人の約8割が罹っている。
老化を進めるのは慢性炎症。歯周病=慢性的な炎症が続いている状況だから要注意。口の中で増殖した歯周病菌は血流に乗って全身へ広がり、動脈硬化、認知症、糖尿病などの引き金となりかねない。マウスの実験では歯周病だと筋力や骨密度も落ち、フレイルに陥ることも示唆されている。
歯周病が進むと歯を失うが、野生動物では歯の喪失は死に直結する。ヒトでも満足に食べられず、栄養が摂れないと老けやすい。
食事後や眠る前などに歯ブラシやフロスを使い、歯周病菌の根城であるプラーク(歯垢)の除去に努めるのは基本のキ。加えて3か月に一度は歯科医を訪ね、専門的なクリーニングを受けるべし。


