《FIAT PANDA SELECTA》はカメラマンの大事な仕事道具|クルマと好日

アウトドアフィールドに、あるいはちょっとした小旅行に。クルマがあれば、お気に入りのギアを積んで、思い立った時にどこへでも出かけられる。こだわりの愛車を所有する人たちに、クルマのある暮らしを見せてもらいました。

text: Koji Toyota photo: Naoki Honjo

『Tarzan』No.786 on sale March 26, 2020.

小さくて、色褪せない。写真家が選んだ一台には、“生活観”が滲み出る。

「カメラマンにとって、クルマは、仕事道具。毎日付き合うものだから、好きなものを選んだほうがいい」

“師匠”がふと漏らした言葉に導かれるように、本多康司さんは《フィアット パンダ》を選んだ。

「学生時代は、〈トヨタ〉の《ヴィッツ》、カメラマンを志す前の会社員時代は《ミニ》。思い返せば、スモールカーばかり選んできました。そんな自分にとって、《パンダ》はずっと頭の片隅にある、憧れのクルマでした」

《パンダ》というクルマはとにかくチャーミングだ。手掛けたのは、カーデザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ。直線と平面だけで構成されたフォルムはとにかくシンプルながら、そこには強い意志を感じさせる。

ほんのりとポップさが漂うのもジウジアーロらしさだ。初期型が2トーンカラーだったことに由来する“パンダ”のネーミングも、やはりチャーミングである。

「念願叶って手に入れたのは、師匠から独立して3年目。僕の愛車は初代モデルですが、初期のパンダカラーではなく、1991年に導入された無段変速機(CVT)を搭載した“セレクタ”というグレード。俗に“セリエ2”と呼ばれる改良型です。だから、ヴィンテージカーというよりも現行車に近い感覚で乗っています。高速走行でリッター12kmも走りますから(笑)」

1986年のマイナーチェンジで、命名の由来ともなった2トーンカラーは廃止。グリルも変更されて、よりシティな面構えになった。

キビキビと小気味よい走りは、スタジオにロケと都内を駆け回る本多さんの生活にもぴったりだ。

「自分の撮影スタイル的に大きな機材を積むこともあまりないですし、《パンダ》のサイズ感がしっくりくる。掌に収まる感覚というか。仕事道具のカメラも仰々しい大きさよりも、小ぶりで“メカ感”のあるものが好み。そこは《パンダ》にも通じます」

乗り始めてから7年。体の一部と化しつつあるパンダのハンドルを握って、空いた時間に西荻窪の古道具店〈プベル〉に立ち寄ることも。

「古道具を眺める時間はいい息抜き。日々の生活に欠かせないものです。時代を超えて、一縷のきらめきをぼんやりと感じさせる古い道具は、やっぱり特別ですね」 小さくて、色褪せない。《パンダ》は、本多さんの“好き”を具現化した、まさに愛車。師匠の言葉は、ずばりと“本質”を突いていたわけだ。

FIAT PANDA SELECTA

後部座席を倒せば、照明機材を固定するセンチュリースタンドも積める。意外と懐が広い。

左/《パンダ》のシートといえば、パイプのフレームにキャンバスを張ったハンモックシートが有名。でも、後期型では、座り心地も格段に良くなったファブリックシートを使用。グレーを基調としたレトロチェックもイタリア車らしく、洒落ている。右/ダブルサンルーフは手動式。春や夏は風が抜けて気持ちがいいとか。

助手席のダッシュボードは、無造作に放り込んでおける作りとなっているので、本多さんは気になる書籍やCDをそのつど入れている。

  • 全長3,405×全幅1,510×全高1,485mm
  • エンジン=1,108cc、水冷直列4気筒SOHC
  • 乗車定員=4名。故障も多く、中古価格は手頃で50万円弱。「僕のは7年乗っても問題なし。旧車好きの友人からはアタリを引いたねと言われます(笑)」。

西荻窪の住宅街にひっそりと佇む古道具店〈プベル〉。文豪も愛したこの街らしい店内では、時がゆったりと流れる。韓国やアフリカ、戦前の日本などの古道具はどれも物語を感じさせる。東京都杉並区西荻北3-42-5、TEL:909-1540-7133。11:00〜19:30、火休。

愛用のバルナック型ライカ。世界初の35mmカメラで、フィルムカメラの原型。これにLマウントレンズを装着して普段使いしている。

Owner

本多康司(ほんだ・こうじ)/1979年、愛知県生まれ。長野博文氏、泊昭雄氏に師事後、2009年に独立。現在は、広告や雑誌などを中心に活動する。今回訪れた〈プベル〉にて写真展を開催したことも。