「将来は最強の男になって、世直ししていきたい」笑いとウェルビーイング。レインボー・ジャンボたかお(前編)
笑うことは心身の健康に良いと言われています。では、日々誰かを笑わせているお笑い芸人は、自身も健やかな状態になっているのでしょうか。芸のために筋肉を鍛えることもあれば、不摂生が爆笑を生むこともある。ウェルビーイングの形は人それぞれです。本連載では放送作家の白武ときおさんが聞き手となり、芸人一人ひとりが考える「笑いとウェルビーイング」を掘り下げます。第12回前編のゲストは数々の個性溢れるコントを手がけ、『キングオブコント2025』ではファイナリストとなったレインボーのジャンボたかおさんです。
interview: Tokio Shiratake edit,text: Neo Iida photo: Kanta Torihata
Profile
ジャンボたかお/1989年、千葉県生まれ。NSC東京校18期生。2016年、同期の池田直人とレインボーを結成。2018年、『ぐるナイ おもしろ荘』(日本テレビ)で優勝。2019年、実方孝生から現在の芸名に改名。『キングオブコント2025』で初の決勝進出を果たし3位に。2023年には初の小説『説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女』(KADOKAWA)を刊行。YouTube『レインボーコントチャンネル』のほか、食をテーマにした個人チャンネル『レインボー ジャンボたかおの食うチャンネル』も好評配信中。
圧倒的に、信じられないくらい面白かった学生時代。
白武ときお(以下白武)
最近の忙しさはどうですか?
ジャンボ
何年も「忙しくなりたい」と思ってたんですよ。白武さんはご存知でしょうけど、吉本なんでね、劇場ではずっと忙しくて、年末年始なんて必ず体調を壊してたんです。でも、やっぱり大好きだったテレビにずっと出たかったから、今はやりたかった仕事ができて、かつ忙しいので本当に嬉しいですね。
白武
その忙しさにはもう慣れましたか?
ジャンボ
そうですね。それでもパチンコを打つ時間もちゃんとありますよ。合間で打ったりして。
白武
パチンコがお好きなんですね。僕は公営ギャンブルをあんまりやらないんですけど、ジャンボさんにとってどういう時間なんでしょう。
ジャンボ
マジでオアシスですね。走って打ちに行きますからね。勝つ負けるじゃなくてあの空間にいたいんですよ。だって正直パチンコなんて、勝つも負けるも競馬や競艇に比べたら全然激しいものじゃないんでね。生理的に好きになっちゃってるとしか思えないですね、これは。
白武
パチンコは昔からですか?
ジャンボ
大学1年生からです。その頃、幕張のサービスエリアでアルバイトしてたんですよ。全国で初めてサービスエリアをデパ地下みたいに豪華にしたところで、僕は和菓子屋さん担当で。で、隣の『崎陽軒』のおばちゃんが「あ〜パチンコ簡単」「今日も大変よ、パチンコで」みたいなことをよく言ってて。「はい?」って。それで気になって一人で打ち始めました。
白武
普通はサークルの先輩に教えてもらうとか…。
ジャンボ
あと友達とかね。違う違う、俺は『崎陽軒』のおばちゃんだったんです。そこからパチンコというものにどっぷりハマって、俺きっかけでサークルの仲良いやつもハマって、そのパチンコ大好き7人組と今でも旅行に行ったりします。仲が良すぎて、昨日もLINEグループ動いてましたから。
白武
すごいですね。話題もパチンコなんですか?
ジャンボ
パチンコに限らずですね。もう普通に「今度の旅行どこ行く?」もありますし、俺が『キングオブコント』の決勝に行った時はみんなで集まって一緒に見てくれて。そういう仲間でもあります。あと俺、お悩み相談のラジオ(TOKYO FM『喋るズ「エフエムレインボー」』)をやってるんですけど、前に「ものすごくマリッジブルーなんです」みたいなメールが来て、「あら大変ですね」って話を聞いたら、「彼氏が本当デリカシーがないんです。この前ハワイで小さな挙式を挙げることになって、私たち2人とお互いの両親6人だけで挙げようって話をしてて。そしたら私の親友の2人が『何を言ってるのよ。私たちもハワイに行かせなさい。あんたをお祝いしたいわ』と。なんていい友達なんだと思って彼氏に伝えたら『呼ぶ人数が合わなくない?』って言われてめっちゃ冷めたんです」って。その彼氏というのが、俺のパチンコ大好き仲間の一人だったんですよ。もう大盛り上がりでした。

白武
学生時代の仲間と今も仲がいいって素晴らしいですね。そういえば、たしかジャンボさんって学生時代から面白すぎたんですよね?
ジャンボ
はい。ちょっと圧倒的に、信じられないくらい面白すぎて、凄まじい人気者でしたね。
白武
それはどんなタイプの面白さなんですか?
ジャンボ
それが俺の悲しきこじらせにも繋がるんですけど、まず学年全体じゃないです。学年を盛り上げるのってサッカー部のおもんない明るい奴じゃないですか。俺は「うちのクラスは任せとけ」なんですよ。年末とか必ず面白い企画やるし、クラス全員を涙流すぐらい笑わせたこともありますし。ただ学年全体じゃないんですよね。
白武
半径数メートルを楽しませるという。
ジャンボ
はい。で、女子にはちょっと冷たい。硬派を気取ってたんで。中学の合唱コンクールが終わったら打ち上げに行ったりするじゃないですか。サイゼリヤ行ってボーリング行ってみたいな。その企画を俺が立てるんですけど、女子たちが「カラオケ行こう」って言い出したら、「カラオケは女いると面白くねえから男だけで行くわ」みたいな。あとで聞いたら俺のその感じは男子も嫌だったらしいですけど。そういうこじらせがありましたね。
白武
高校に上がっても人気者なんですか?
ジャンボ
高校も一緒です。大学でもサークル長をやってましたし、狭いコミュニティを盛り上げるのが得意なんですよ。今でもそうかもしれないです。劇場の先輩方や後輩には支持されるけど、それを世間まで広げていくのが大変、みたいな感じはあるかもしれないです。
モテてたら芸人になってなかったかもしれない。
白武
その女子をはねのけてる感じはずっと続くんですか?
ジャンボ
31歳くらいまで続きましたね。マジでミスりました。
白武
だいぶ引っ張りましたね。なんでそこまで行っちゃったんですか?
ジャンボ
モテないのが長すぎたんじゃないですかね。やっちゃいました。
白武
でも学生時代から身長も高かったでしょうし、カッコ良かったんじゃないですか?
ジャンボ
はい。しかも俺、大学時代はスマートだったんで、「ちょっとハンサム」まであったんですよ。で、めっちゃおもろいじゃないですか。でもモテないじゃないですか。なんか「俺って世界で一番やばい奴なんじゃないかな」と思って家帰って泣いたりしてました。これが大デブとか根暗ならわかりますよ。高身長でちょっとかっこよくて面白くてモテないって、俺は世界で一番気持ち悪いやつなんじゃないかなと思ってボロボロ泣きましたよ。
白武
(笑)。
ジャンボ
でもその歪みがあって良かったです。なかったら、俺めっちゃおもんない奴だったかもしれないです。
白武
確かに、その歪みが芸人になるのに活きたかもしれませんね。

ジャンボ
そうですね。学生時代にモテちゃってたら、面白くなろうっていう気持ちが沸かないのかもしれないです。実際に劇場でも、全部持ってる人ってちょっと軽い部分があるような気がするんですよね。コットンの西村さんは全部手に入れちゃったからそれで悩まされてきたというか、努力でおもろくなった人なんですけど。一歩間違ったらおもんなかった可能性もあるっていう。
白武
なるほど。モテちゃってたら危なかったですね。
ジャンボ
本当ですよ。その世界も見たかったんですけど。良かったです、芸人になれましたから。僕は芸人になりたかったんで、ずっと。
白武
学生の時からお笑いが好きだったんですか?
ジャンボ
もう好きすぎましたね。お笑いオタクすぎたんで、千葉市で一番お笑い好きだったんじゃないですか?間違いなく。全お笑い番組を録画してましたし。高校くらいまではレンタルショップもVHSが主流で、『ごっつええ感じ』とか気になる番組を借りてダビングして。VHSやDVDが家に300本ぐらいありましたよ。
白武
当時好きだったのはコントですか?
ジャンボ
漫才もコントも好きなんですけど、どっちかというと漫才の方が好きでしたね。漫才師になりたくてNSCに入った、まであるかもしれないです。
白武
そうなんですね。でもレインボーはけっこうコント軸ですよね。
ジャンボ
はい。もう一生漫才やらないかもしれないですね。
白武
それはどうしてですか?
ジャンボ
適性ですね。自分たちも、やっていてコントの方が面白いというか。まあ、2ヶ月に1回の同期ライブでは普段やりもしない漫才を作っていて、楽しいは楽しいんですけどね。でもコントのほうが性に合ってると思います。特に池ちゃんは。
お笑いは、スカさず一生懸命やるのが一番かっこいい。
白武
コントのYouTubeも毎日上げられていて。凄まじいですね。
ジャンボ
そうなんですよ。でも毎日投稿はやめる予定です。もう十分頑張ったなと。コロナ前から5年以上続けてきましたしね。(※2026年8月1日にYouTubeで動画を公開し、毎日更新ではなく、2日1回などの頻度で更新すると報告した)
白武
ああいう憑依するキャラクターって、どうやったら毎日出せるんですか?
ジャンボ
YouTubeを始めた頃は毎日ムカついてたんですよ、劇場の作家さんとか、テレビの胡散臭い人間とかに。怒りが溜まりに溜まってて、よく池ちゃんに「こんな奴がいてさあ」って話してたんです。そしたら「じゃあムカつくやつのコントやらへん?特徴言ってくれたら俺やるから」って言ってくれて、そのキャラで動画を撮るようになったんです。例えば、Xに男性をこき下ろしてる女の人がいて、最初は「目線いいね、面白いね」と思ってたんですよ。でもだんだん、「あ、これ言いすぎだし笑う笑えないのラインがわかってないやつだ」と思い始めて。そういう女性役を池ちゃんにやってもらったらめちゃくちゃ似てて。池ちゃんは憑依タイプで、俺は自分の性格を活かすタイプなんですけど、コントの中のキャラにも俺のムカつく熱量が乗ってるから数字も伸びるんですよね。パッションがあるとちゃんと伸びるからほんと不思議です。今までパッション系のやつ全部伸びてきましたから。

白武
じゃあ怒りが軸になってるネタはジャンボさん発案が多いですか?
ジャンボ
もう99%俺じゃないですかね。池ちゃんは昔、飲み会に行ったらある俳優さんに信じられないくらいかまされたことがあって。売れる前の頑張ってる池ちゃんに「フォロワー何人?俺30万人」「俺フォロワーよりフォローしてる人数のが少ないから」って。お前それ本気で言ってんの?みたいな。池田は優しい奴なんでうまく逃げたんですけど、「こいつムカつきすぎる」って、その時はそいつを池ちゃんが自分で演じて俺がブチギレるっていうコントを作りました。
白武
怒りをネタに乗せることで、笑いとしてもパワーが増すんですね。コント以外だと、ジャンボさんは腹を立てたとしても、その場は明るく押し切ろう、盛り上げようとするタイプの人なんじゃないかなと。
ジャンボ
だからどっちも本当の自分だと思いますね。場を明るく楽しくやるのもめっちゃ好きだし、怒りもとんでもない抱え方をするっていう。賞レースを見ていても「こいつの出方マジでムカつくわ。だっせえ先輩!」とかイライラして、俺なんでこんな本気で怒ってるの?と思ったりします。別にそんな本気で怒らんでもいいじゃんって思ったりもします。ひとりで『VIVANT』やってるみたいな感じですかね。「F」じゃなくて「J」が立ってる時があります。
白武
何かが引っかかるんですかね、琴線に。
ジャンボ
そうですね。自分の中のお笑いの正義というか、俺はスカさず一生懸命やるのが一番かっこいいし正しいと思ってるんです。で、実際それが今に繋がったとも思うんで、仲のいい後輩にはしっかり伝えていきたいですね。これはやったほうがいい、やめたほうがいいって。
将来の理想は、最強の男になったうえでの世直し。
白武
仕事も順調で、経済的余裕が出てくると、怒りやムカつきの火種は少なくなってきたりしますか?
ジャンボ
これはその通りで、日々が充実しだすとマジで減ってきますね。ただ俺には、本当にヤベー奴の側面がちゃんとあるんですよ。この前も集合場所を間違えて、ビルの地下のゴミ収集所みたいなとこに行っちゃったんですよ。うわっ何ここ、わけわかんないところに来ちゃった、と辺りを見渡したら、折りたたみ机に座ってるおばちゃんがいて。「すいません、1階に行きたいんですけど、どうやったらいいですかね?」って聞いたら「は?」って言われたんですよ。「何が?1階?知らない」みたいな。で、仕方なくウロウロしたら警備員さんがいて正しい行き方を教えてくれたんです。それで「ありがとうございます」って言ったあと、俺また500mぐらい引き返してさっきのおばちゃんのところに戻って。
白武
えっ。
ジャンボ
それで言ったんですよ。「ちょっとあなた、さっきヤバすぎませんでした?え?どんだけヤバかったか俺今やりますよ、あなたの真似。『は?』ってやってましたよ。俺、何か嫌な言い方しました?申し訳ないですけど、あなたの仕事じゃないかもしれないですけど、一応『1階ってどこですか?すいません』っていう聞き方しましたよね。そこ間違ってます?間違ってないですよね?そうやって丁寧に聞いた俺に対してあなたがやったこと、見てください。今からやるんで。『は?』。これやってましたよ。ヤバいですよ、人として」って。でもそう言ってる俺が一番ヤバいっていう。ゾッとしました、自分で。
白武
それはジャンボさんにとってどういう時間なんですか?世直し?
ジャンボ
まさに夜直しですね。正義感だと思ってください。俺の将来の理想は「全格闘技やって最強の男になって、全身タトゥー入れて街でものすごい迷惑かけてる若者を世直ししていきたい」なんですよ。「お前らここ邪魔だし、タバコ吸っちゃダメだからやめろ」って。向こうも怖いじゃないですか。信じられないぐらいデカい全身タトゥーの男に言われたら。そうやって世直しして周りたい。

白武
今のジャンボさんでも十分大きくて強そうじゃないですか。しかも相手がより悪い奴っていう可能性もあるのに、仕掛けられるなんてよっぽど強気ですよ。
ジャンボ
まあ強気ですけど「なんですか?」って来られたら負けちゃうところもありますからね。昔、俺が25歳くらいの頃かな、電車で靴のまま優先席に上がってるヤンキーみたいな男の二人組がいて、めっちゃムカついたんで「お前、優先席座るな。あと靴のままとかなめんなマジで」って言ったら「え?何が?」って、二人のうちのチビのやつが「え、何?え、お前やるの?」って感じで、もう一人のデカくて強そうな奴は「まあまあまあ」ってやんわり抑えてたんですけど、俺も引いたら負けだと思って「次降りろ」って言ったらデカい方がベルトをシュッて外して拳に巻いて、俺の顔の前に持ってきて「おい、殺すぞ」とか言い出したんですよ。俺やっぱ逃げましたね。ドアにぶつかりながら。
白武
そんな経験を経てもまだ正義感を持って。それはジャンボさんの何がそこまでさせるんでしょう。
ジャンボ
なんでしょうね。昔から公共の場所とかで人に迷惑をかける人がすごく嫌いなんですよ。
白武
でも、さすがにもう有名人だから世直しは難しいですよね。
ジャンボ
そうなんです。顔が知れ渡ってしまって本当に悔しいです。昔はものすごい混んでるのにシートに荷物を置いてるカップルとかに「おいおいおいおい、周り見ろよ。なんでお前みんな立ってるのに荷物置いていいと思ったんだよ。もういいからどけ」とか言えたんですけど。悔しいです。
白武
その正義感って昔からそうなんですか?
ジャンボ
昔からそうですね。考えてみると、中高と部活でキャプテンだったのが大きいかもしれません。責任持ってやってましたから。
白武
素晴らしい心持ちだと思いますよ。
ジャンボ
いやいやいや。改めておばちゃんの前でおばちゃんのモノマネしたのヤバ過ぎるなと思ってますから。
白武
そこ切り取られたらやばいですね。
ジャンボ
ヤバいですよ。しかも最近の話ですからね。




