
教えてくれた人
神戸貴宏(かんべたかひろ)/パーソナルトレーナー。Body Design Studio ASK代表。流行に惑わされない普遍的なダイエット指導を得意とするパーソナルトレーナー。本誌でも、多くの人気アイドルの肉体改造を、トレーニングと食事両面からの丁寧な指導で見事成功へと導いている。NSCA認定パーソナルトレーナー。
いま押さえたい、クレアチン。
そもそもクレアチンって何? という人におさらい。クレアチンは主に骨格筋に存在するアミノ酸の一種。体内でリン酸と結びついてクレアチンリン酸に変換されると、運動開始後に使われるATPを素早く再合成する役割を果たす。
つまり、スプリントなどの高強度無酸素運動時に発動するエネルギー代謝システムを支える栄養因子。実際、1992年のバルセロナ・オリンピックで陸上100mの金メダルを獲得したイギリスのリンフォード・クリスティがクレアチンを摂取していたことで、スポーツ愛好者の注目を浴びた。現在はボディメイクの世界でもクレアチンの導入が常識になりつつある、とトレーナーの神戸貴宏さん。
「クレアチンは大体、バルクアップを主体としたダイエットをするときに利用しています。プロテインにプラスαすることでダイエット中の筋肥大が期待できます」(トレーナーの神戸貴宏さん)
いま、クレアチン界隈で何が起こっているのか?
クレアチンがATPの再合成を助ける仕組み。

筋肉が瞬発的に強く収縮するためのエネルギーはATPがADPに分解される際に得られる。ただし体内に蓄積できるATPには限りがあるので放っておけばガス欠に。このときクレアチンが体内に豊富に存在しているとリン酸と反応してクレアチンリン酸となり、ADPからATPを再合成してくれるという仕組み。
1. 出力を何度でも。トレーニングを支えるその理由。

ランニングとワークアウトを交互に繰り返すHYROXは、今や世界的人気を誇る一大フィットネスレース。クロスフィットと同様に高強度・反復系のフィットネス人気は根強いが、その参加者の多くが定番の選択肢として補給しているのがクレアチン。8月に行われた千葉大会でも、参加者の多くが愛用していた。
「反復運動ではないですが、高強度運動、たとえばベンチプレスのマックスの重量が停滞しているときにクレアチンを導入すると、ウェイトを突破できることもあります」。
2. 筋肉だけじゃない。脳との関係も研究中。

運動時のエネルギー確保や筋肥大だけでなく、クレアチンが脳のエネルギー代謝に関係するという研究も進められている。脳へのエネルギー確保で認知機能やメンタル調整に影響を及ぼす可能性が模索されているという。あくまで研究段階でエビデンスは確立されていないが、未来に期待だ。
「分岐鎖アミノ酸が集中力の維持に役立つという話がありましたが、クレアチンも同様に今後、ビジネスシーンで利用されるようになるかもしれません」。
3. 鍛える人だけのものじゃない。加齢と筋力の研究も進んでいる。

クレアチンはゴリゴリのトレーニーやアスリートだけに有用なわけではない。近年は高齢者の筋力低下対策としての効能も期待されている。たとえば、下のグラフのようにクレアチンの継続摂取で椅子立ち上がり回数がアップしたという研究報告もある。
「高齢者の場合、加齢によって体内でクレアチンを生成できる能力が低下してくるということがひとつあると思います。クレアチンサプリメントが機能低下の補強に役立つことは十分考えられます」。
長期間のクレアチン摂取効果。

平均年齢69.6歳の男女20人を対象に1日3gのクレアチン摂取を12週間継続。同時に週3回の水中運動プログラムも実施した結果、椅子立ち上がり回数が増加した。
4. 筋肉からその先へ。研究のフィールドはいまも広がる。

フィットネス先進国・アメリカでは近年クレアチンに関する情報発信が急増しているという話。2025年にはSNSでハッシュタグとともにクレアチンを補給しながらトレーニングを続ける“30日チャレンジ”の投稿が多く見られた。
また、筋力トレーニングのシーンだけでなく、「日常的なセルフサポート成分」としての研究も進められ、論文数も増加中。国際的な学会でもここ数年で新たな見解がアップデートされ、研究の裾野が広がり続けている。
Googleトレンド検索における“Creatine”のボリューム推移 (対象地域:グローバル)

SNSだけでなく、大手メディアがクレアチン特集を組んだり、著名人やインフルエンサーの発信などがきっかけとなり、アメリカでのトレンド検索のボリュームは年々増加。
出典/ネスレ日本
5. 初めてなら何を基準に選べばいい?

最も知られているのはモノハイドレート。香料や甘味料、その他の添加物を一切加えないシンプルなクレアチンだ。この他、モノハイドレートに炭酸ナトリウムや重炭酸塩などのアルカリ性粉末を加えてpH調整をしたアルカリ性クレアチンなどがあるが、純度の高いシンプルなモノハイドレートがやはり第一選択肢。パウダーとカプセルタイプが主流だが、量の調整のしやすさ、コストを重視するならパウダーに一票か。
「僕も粉末タイプのモノハイドレートをプロテインに混ぜて利用しています」。
筋肉中のクレアチン量の変化。

被験者はウェイトトレの実践者36人。クレアチンモノハイドレート、アルカリ性クレアチン高用量とメーカー推奨用量摂取の3群を比較したところ筋肉中のクレアチンが最も増えたのはクレアチンモノハイドレートだった。
出典/Jagim AR, Oliver JM, Sanchez A, Galvan E, Fluckey J, Riechman S, Greenwood M, Kelly K, Meininger C, Rasmussen C, Kreider RB. A buffered form of creatine does not promote greater changes in muscle creatine content, body composition, or training adaptations than creatine monohydrate. J Int Soc Sports Nutr. 2012 Sep 13; 9(1): 43.
「クレアチン」に関するアンケート。
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