筋膜は全身連なっている
肩まわりの筋肉のストレッチだけではほぐれない肩こりには、筋膜も含めて考えた方がいい。筋膜は全身をシームレスに覆う一枚仕立ての薄いタイツのようなもの。皮膚の直下を走り、筋肉と骨を覆い、筋肉を構成する筋線維一本一本までカバーする。
普段はありがたみを感じないが、姿勢を支えて筋肉の動きを助けることから骨に次ぐ“第2の骨格”とも呼ばれている。この筋膜のどこかにねじれや癒着があると筋肉の動きが悪くなり、血流の不足を招いて凝りや痛みの元になりやすいのだ。
筋膜を元通りの健全な状態に戻すために行うのが筋膜リリースという手技。筋肉をストレッチすれば、筋膜も一緒にリリースされる気もするが、そうは問屋が卸さない。
「筋肉はアクチンとミオシンというタンパク質からなりますが、筋膜はコラーゲンとエラスチンというまったく異なるタンパク質で作られています。素材が違う筋肉と筋膜は伸縮スピードが異なるので、別々にケアする必要があるのです」(ムーブメント・セラピストの葉坂多壱貴さん)
筋膜は全身連なっているから、肩まわりのみに目を向けるのではなく、腕や首すじ、脇の下といった周辺からアプローチすることで間接的に肩こりの解消が狙える。筋膜リリース&ストレッチはいつでもどこでも試せるけれど、筋膜は筋肉と同じように温まった状態の方が伸びやすい。
湯船に浸かりながら、あるいはお風呂上がりに行うとより深いリラクセーションが得られるだろう。回数や秒数の目安はあえて示さなかったが、機能改善が起こるまで何度かトライしてみてほしい。
1. 前腕にアプローチ
手のひらを開き、突っ張る人向け
スマホやパソコン操作などで現代人は手のひらを閉じる前腕などの屈筋群を酷使しており、それが筋膜を介して肩まわりの緊張につながる場合が少なくない。手のひらを「パー」に開いたとき、手のひらが反る、突っ張る人はそのパターンである可能性大。
前腕をリリースすることで肩まわりを緩めて、同時に手足などの末端が緊張して体幹が使えない間違ったカラダの使い方もリセット。
2. 頸部前面にアプローチ
猫背で頭が前に出ている人向け
頭の重み(およそ5kg)を首(頸椎)まわりの筋肉がきちんと支えられないと、首と肩の筋肉と筋膜にストレスが加わり、緊張と痛みを引き起こしてしまう。猫背で頭を前に突き出す不良姿勢で固まりやすい胸鎖乳突筋や斜角筋といった首すじ前面の筋肉と筋膜を伸ばすイメージで、頸部前面をリリース。
正しくできたら首の前面のスペースが広がり、シワが減って見かけがすっきりするはず。
3. 頸部後面にアプローチ
首まわりの緊張が取れない人向け
首の後ろのインナーマッスル・後頭下筋群には頭の位置を保つために筋肉の状態を感知する固有感覚受容器が集まる。前傾姿勢が多く首が緊張して詰まると、この固有感覚受容器がマスキングされて緊張が取れにくくなる。それをリセットする。
正確に行わないと首を痛めるので、スマホなどで動画を撮って正しくできているかチェックしながら行う。慣れるまで3回以上はやらない。ジムボールがないときはタオルを丸めて置けばいい。
4. 脇の下にアプローチ
それでも肩こりがつらい、という人向け
肩甲骨、肩、腕をつなぐ筋膜のラインをリリースして肩こりを改善してくれる重要なテクニック。大胸筋や広背筋などのアウターマッスルに加えて、小胸筋、前鋸筋、肩甲下筋といったインナーマッスルもまとめて緩めてくれる。
フォームローラーがない場合には、ワインボトルにバスタオルを巻いたもので代用できる。時間がないときは下記の(1)〜(5)だけ試しても、肩と肩甲骨の動きが良くなるだろう。
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