ターザンのイチ推しのスクワット。「フルスクワット」徹底解説

数あるスクワット種目のなかでも『ターザン』が断トツ推したいのは、ハーフスクワットやパラレルスクワットをより“深化”させたフルスクワット。深くしゃがみ込み、地面を強く押し上げる、その行為の秘訣と隠された秘密を徹底的に解説する。

取材・文/井上健二 撮影/山城健朗 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 監修/清水忍(IPF代表)

初出『Tarzan』No.812・2021年6月10日発売

フルスクワットを推す理由

スクワットを始めるならマスターしてもらいたいのは、フルスクワット。いちばん深くしゃがんだボトムポジションで、お尻が膝よりも低い位置まで下がるスクワットである。

数あるトレーニングの中でも、スクワットを重要視する清水忍トレーナーは、プロアスリートにも、高齢者にも、あるいは子どもにも、初めにフルスクワットを指導するという。なぜなのか? その理由を聞こう。

「プッシュアップやシットアップといった他の自体重トレとスクワットが大きく違うのは、ヒト本来の動きに即したトレーニングである点。プッシュアップやシットアップは筋肉を鍛えるためにいわば人工的に考えられたものですが、フルスクワットはより“自然な動き”になります」

傍証に、やっと立てるようになったばかりの子どもたちは、床に落ちたオモチャやお菓子を拾うとき、無意識にフルスクワットをする。非力な子どもがそうするのは、おそらくそれだけ合理的な動きだから。

フルスクワットは、大人が大昔に忘れてしまった機能的なカラダの使い方を改めて教えてくれるのである。

「フルスクワットは、筋力だけに限らず、柔軟性やカラダの連動性といった身体能力のベースを底上げするのに最適。日常生活もスポーツも、大半は股関節を中心とする下半身の動きを伴います。ですから、フルで股関節と下半身がきちんと使えるようになれば、パフォーマンス全般がアップするきっかけとなるのです」

つまり、フルスクワットが自在にこなせるようになったら、速く走れるようになるし、重たいウェイトが上げられるし、高くジャンプできるということ。日常生活でも、歩幅が広がる、階段がスイスイ上れるといった御利益が満載であり、毎日が快適に過ごせるようになる。

ここでは、清水さんが考えるフルスクワットの正解を分解写真で丁寧に解説してみた。

重要なのは「突っ立った姿勢からしゃがむもの」という意識を捨てること。逆に、しゃがんだ姿勢から踵で床を強く押し、その反動(反作用)で立ち上がるのがスクワットの本質である。

もっとも床を強く押せるのは、まっすぐ立ったときの重心が通る垂線上。そのために真横から見て、肩と外くるぶしのやや前方(靴紐を結ぶ位置)がつねに垂直に並ぶ姿勢をぶれさせないのが肝心である。

事前準備:自分の足幅でしゃがむ

正しいしゃがみ方

正しくしゃがむことからスタート。両足を狭めて膝と股関節を閉じるほど深くしゃがめるようになり、足幅を広げて膝と股関節を開くほど浅くしかしゃがめない。

可動域には個人差があるから、足幅を最大限に広げてしゃがみ、そこから徐々に足幅を狭くしながら、ラクにお尻が膝よりも低くなるまで深くしゃがめる足幅を見つけよう。

フルスクワットのやり方

深くしゃがむ

①お尻が膝よりも低くなるまで深くしゃがめる足幅でしゃがむ。②骨盤を前傾(肛門が後ろを向く動き)させたままでしゃがむ。③両手を組み、胸の前で構える。④肩から下ろした垂線が、外くるぶしの前方を通る姿勢を保つ。⑤踵に全体重を荷重する。⑥脛と上体が平行になるように、背すじを伸ばして上体を起こす。

骨盤上部、両肩を結ぶラインが、それぞれ床と平行になるように動かす

⑦膝と股関節の動きをシンクロさせて、脛と上体はつねに平行に動かす。その間、肩から下ろした垂線が、外くるぶしの前方を通る姿勢を保つ。

顔を正面に向け、 目線を下げないようにする。

⑧膝と股関節の動きをシンクロさせて、脛と上体はつねに平行に動かす。⑨その間、肩から下ろした垂線が、外くるぶしの前方を通る姿勢を保つ。

爪先と両膝で作る四角形を保ったままでしゃがむ。

⑩ まっすぐ 立ち上がったら、これまでと同じ意識で深くしゃがむ。

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仮に今できなくても、修正エクササイズを行えば、誰でもフルスクワットができる。15回×3セットを目安に続けてみよう。