「ご飯が残せない。誘いを断れない」流されマンが痩せる12のヒント

自分の食傾向を知り、それに合わせた対策を立てるのが成功の道。今回は「優しい性格ゆえに、NOと言えない。なんとなく流されてカロリーオーバー」、そんな流されマンが体脂肪を落とすための12のヒントを紹介。

取材・文/井上健二 撮影/小川朋央 スタイリスト/高島聖子 ヘア&メイク/天野誠吾 イラストレーション/わたなべろみ 取材協力・監修/吉原 潔(医師)、神戸貴宏(パーソナルトレーナー)、河村玲子(管理栄養士)

初出『Tarzan』No.859・2023年6月22日発売

流されがちな人のためのダイエットの助言
教えてくれた人

吉原潔さん(よしはら・きよし):医師。整形外科医で4000例を超える脊椎内視鏡スペシャリストでありながら、筋トレや体重管理に精通したNESTA認定パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザーのトリプルライセンスを有する。自らもボディコンテストに出場を重ね、受賞歴多数。医学博士。

神戸貴宏さん(かんべ・たかひろ):パーソナルトレーナー。Body Design Studio ASK代表。流行に惑わされない普遍的なダイエット指導を得意とするパーソナルトレーナー。本誌でも、多くの人気アイドルの肉体改造を、トレーニングと食事両面からの丁寧な指導で見事成功へと導いている。NSCA認定パーソナルトレーナー。

河村玲子さん(かわむら・れいこ):管理栄養士。大学卒業後、大手フィットネスクラブを経て独立。カナダで管理栄養士トレーナーとして活動後、ニューヨークでピラティスを学ぶなど、栄養にも運動にも通じている稀有な存在。40代のダイエット指導経験も豊富。NESTA認定パーソナルフィットネストレーナー。

流されマンってこんな人

流されがちな人のためのダイエットの助言

SNSに溢れる飯テロ、上司や同僚からのお誘い…。体脂肪を減らそうと固く決意しても、世の中は甘い誘惑に事欠かない。そんな秋波にとことん弱く、同調圧力に負け、付和雷同に走りやすいのが流されマン。体脂肪が減らない理由を数え上げ、自らを正当化する悪いクセもある。思い込みをリセットするところから始めよう。

① ご飯が好きすぎるなら…

ご飯が好きすぎる 流されがちな人のためのダイエットの助言

日本人の大半は、ご飯党。「ご飯は好きですか?」と街頭インタビューすれば、大多数はニコニコして「イエス」と答えるだろう。でも、いくら好きでもご飯をフリーに食べていると、カロリー過多に陥りやすい。

ことに白米の過食は血糖値を上げやすく、血糖値を下げるために大量に出てくるインスリンが体脂肪合成を進め、太りやすくなる。かといって、流されマンに好きなものを食べるなと諭しても、どだい無理な話。考え方を変えてみよう。

岡山名物の魚「ままかり」は、自宅のご飯を食べ尽くし、お隣へご飯(まま)を借り(かり)に行くほど美味しいという意味で名付けられたとか。そう。ご飯が進むのは、すぐ側に美味なるおかずがあるからだ。

「焼き魚なら1切れ、豚生姜焼きなら3枚までという具合に、あらかじめ1食分のおかずを決めましょう。そのおかずを食べ切ったら食事を終えるとルール化すると、ご飯の食べすぎが避けられます」(河村さん)

佃煮や梅干しのように、「ままかり」並みにご飯ドロボーになりやすいものは、極力控えて。おかずの心配をせず、ご飯を満腹まで食べる妙案もある。

「それはもち麦(もち性の大麦)を混ぜて炊くこと。2割ほど混ぜても、白米100%と味はそれほど変わりません。もち麦は食物繊維リッチで満腹になりやすく、血糖値の上昇を抑える作用が期待できます」

② 出されたものは申し訳なくて全部食べちゃうなら…

出されたものは申し訳なくて全部食べちゃう 流されがちな人のためのダイエットの助言

フードロスを減らすSDGs的な観点からも、出された料理は残らず食べたい。けど、お腹いっぱいなのに「もったいない」「作ってもらったのに悪い」といった理由で完食を自らに課すと、デブキャラから脱皮できない。

「栄養バランスを整えるために、タンパク源の主菜、野菜などの副菜は全部食べてOK。カロリーの半分ほどを占めるのは、ご飯やパンといった主食。量のコントロールもしやすいので、お腹具合に応じて主食で調整しましょう」(河村さん)

外食なら、オーダー段階で「ご飯少なめでお願いします」とか「パンは1個で十分です」などとリクエストしておこう。

“おうちごはん”でパートナーが料理を作ってくれるときも、ご飯は率先してよそったり、バゲットを自ら切り分けたりすれば、適量で収まる。ご飯やパンなら、余っても冷凍できるから、翌日以降に消費すればフードロス問題も生じないだろう。

③ 上司や同僚の誘いが断れないなら…

上司や同僚の誘いが断れない 流されがちな人のためのダイエットの助言

ダイエット中に限り、なぜか飲み会や食事会の誘いは増えるもの。断固拒否すれば済む話だが、それが容易にできないのが、流されマンの良いところでもあり、弱点でもある。

「誘ってもらったのに、ムゲに断るのは申し訳ない」などと毎度誘いに乗ってしまっていたら、40代のうちに痩せることは金輪際諦めたほうがいい。誘う側は決して意地悪をしているわけではない。ダイエット中だと知らないから、軽いノリで誘ってくれるだけ。

そこで有効なのは、正々堂々とダイエット宣言すること。「噓も方便。“健康診断で肝機能がC判定(要経過観察)。減量中です”などと宣言すれば、誘いも減ります」(河村さん)

仲間がいたほうがダイエットは継続しやすいから、いつも酒宴に誘ってくれる上司や同僚にメタボタイプがいたら、ダイエットを薦めて仲良く取り組んでみよう。

④ 料理上手の妻が美味しい料理を作ってくれるなら…

料理上手の妻が美味しい料理を作ってくれる 流されがちな人のためのダイエットの助言

一人暮らしで半ば自堕落な食生活を送る人と、既婚者で料理上手の配偶者が丹精込めたご馳走を作ってくれる人がいるとする。痩せにくいのはどっち?

「それは料理上手の配偶者がいるタイプ。“食生活をこう変えてください”と助言しても、“そんな口を出すなら、自分で料理すれば!”と逆ギレされてしまい、困っているクライアントも多いのです」(神戸さん)

愛情込めて調理に精を出しているのに、ダメ出しされたら、やる気が萎えるのも無理はない。自炊下手で一人で痩せるのが難しい流されマンの場合、料理上手の配偶者は誰よりも味方にしたい存在。体脂肪を落とす食生活の方針を固めたら、真っ先に応援団になってもらおう。

「食事を変えたいなら、ダイエットレシピとともに、必要な食材や調味料を揃えるための軍資金をポケットマネーから手渡しましょう。そうすれば、喜んで親身になってくれるでしょう」

⑤ 早食いが直らないなら…

早食いが直らない 流されがちな人のためのダイエットの助言

満腹を感じる前に食べすぎるため、早食いは太りやすい。厚生労働省の調査(下グラフ)でも、BMI25以上の肥満男性の64%が、「食べるのが速い」と答えた。

早食いの罠を避けて痩せるには、ひと口ごとによく嚙んで食べるべき。1口30回が目標だ。玄米やライ麦パン、根菜や海藻など、食物繊維が多く食べ応えのあるものを選ぼう。野菜や肉類は大きめにカットするのもいい。

だが、ファストフードのように柔らかすぎる食べ物は、数回嚙むだけでドリンク並みに飲み下せる。そんな食生活を送り、ロクに嚙まずに食べ続けていると、咀嚼する筋肉が弱体化してくる。顎がすぐに疲れて、よくよく嚙めなくなるのだ。

「とくに姿勢が悪く猫背だと咀嚼筋は衰えやすい。猫背を正し、無糖のガムを嚙んで咀嚼筋を鍛えましょう」(神戸さん)

この他、ひと口ごとに箸を置く、少量ずつ口に入れるという方法でも早食いは避けられる。

体型別・食べる速さの状況(20歳以上男性)
体型別・食べる速さの状況(20歳以上男性) 流されがちな人のためのダイエットの助言

出典/厚生労働省「平成21年国民健康・栄養調査」

⑥ 何回やってもリバウンドするなら…

何回やってもリバウンドする 流されがちな人のためのダイエットの助言

痩せること自体は難しくない。試しに土日で断食すれば、体重は3〜4kgは難なく減るだろう。難しいのは、落とした体重と体脂肪を増やさないこと。

苦労して痩せたとしても、ダイエットを終えると、体重も体脂肪率もほどなく復活する。リバウンドだ。ことに今回のように運動なし、食事のみで痩せようとすると、リバウンドリスクは高い。食事を長期間減らすと、どんなに気をつけていても筋肉の分解は多少進み、代謝が落ち、太りやすくなるからだ。

体型や体重は、突き詰めるとその人の生活を反映したもの。落とした体脂肪を再び増やさないためには、太っていた頃の生活に逆戻りしないことが肝要。

「ことに食生活をガラリと変えるとストレスになり、すぐに元の食生活に戻りたくなります。それでは元の木阿弥。その間に筋肉が減っていると、以前よりむしろ体重も体脂肪率も増えてしまいます」(吉原さん)

ダジャレのようだが、食生活を逆戻りさせないコツは、コツコツ続けること。

高すぎるハードルは一気に越えられない。低いハードルを越えるうちに自信がつき、少しずつ高いハードルがクリアできるようになる。同じように、体脂肪を落とす食生活もいきなり高いハードルに挑まず、ストレスなく続けられる低いハードルからスタート。そうして太っていた頃の食事を段階的に変えれば、二度とリバウンドはしない。

⑦ 体重計に乗るのがコワイなら…

体重計に乗るのがコワイ 流されがちな人のためのダイエットの助言

ダイエットは、体重、体脂肪率をモニタリングしながら進めるのが王道。だが、毎日測ると決めても、油断して過食した翌日は体重計や体組成計に乗るのが怖い。

「乗っても、乗らなくても体重も体脂肪率も変わらない。いまの減量方針が妥当かどうかを知るためにも、体重、体脂肪率の変化を把握するのが先決。それに即してPDCAサイクルを回すのが、ダイエットを成功させるポイントです」(河村さん)

PDCAサイクルとは、計画→実行→評価→対策・改善というプロセスの循環。40代なら、仕事で散々使いこなしているはずだ。このうち体重、体脂肪率が関わるのは、3番目の評価(チェック)の段階。右肩下がりなら現行プランでノープロブレムだが、体重も体脂肪率も一向に減らなかったり、増えたりしたらプランBに変更すべきだ。

ただし、体重は便通などで上下する。一喜一憂せず、2〜3日単位で変化を評価しよう。

⑧ 一人で頑張ってもつまらないなら…

一人で頑張ってもつまらない 流されがちな人のためのダイエットの助言

仲間がいると悲しみは半分になり、喜びは2倍になるとか。ダイエットでも、すぐ近くで頑張ってくれる仲間がいたら、励まし合いながら継続しやすい。

ところが、困ったことにいまの日本は孤独・孤立社会。内閣官房の調査によると、孤独感がある人は全体の約40%。年齢階層別に見ると、20〜50代で孤独を感じる人が比較的多いという結果が出ている。

SNSでバーチャルなつながりを作るのも悪くないが、できたらリアルでより強い絆を築き、ぼっちダイエットから卒業を。そこで忘れたくないのは、身近なコミュニティに自ら積極的に関わろうという姿勢。

「ボランティア活動で、浜辺のゴミを拾うビーチクリーンに出かけたり、子ども食堂を手伝ったり、町内の見守りをしたり。そうした活動を通じて新たな仲間ができれば、ともにダイエットしたり、応援してくれたりする人も増えます」(神戸さん)

⑨ ダイエットがいつも三日坊主で終わるなら…

ダイエットがいつも三日坊主で終わる 流されがちな人のためのダイエットの助言

性格の合わないカップルや夫婦が長続きしないように、性格に合わないダイエットは失敗しやすい。性格は一人ひとり違うから、本来は専門家の助言も仰いで、パーソナリティに即してオーダーメイドで減量するのがベスト。

流されマンの多くは、ダイエットに限らず、何事も自分一人ではなかなか成し得ないだろう。たとえば、英語を本気でマスターしたいなら、ラジオ講座などでこっそり独学するのではなく、ネイティブのパーソナルレッスンを受けた方が遥かに効果的で継続しやすい。

ダイエットでも、多少お金はかかるが、ジムに入り、管理栄養士のアドバイスも踏まえて、性格に合わせたダイエットプランを提案してくれるパーソナルトレーナーに相談。二人三脚で減量に挑むと、成功率は上がる。ともに頑張る仲間を作るのも、良い方法だ。

「一人で取り組むなら、ざっくり減点法と加点法のどちらが向いているかを、胸に手を当てて考えてみましょう。そのうえで自分にしっくりくる方をチョイスしてください」(神戸さん)

減点法と加点法は対照的。「アブラを減らす」のように「○○を摂らない」と決めるのが、減点法。逆に「野菜をもっと食べよう」のように「○○を摂る」と定めるのが加点法。

「0か1かの完璧主義に陥るとどちらも失敗しやすい。減点法でも加点法でも、確実にできることから始めましょう」

⑩ 意志が弱く食事ルールが徹底できないなら…

意志が弱く食事ルールが徹底できない

英語、片付け、そしてダイエット。これは、手をつけても続かないトップ3だとか。途中で挫ける理由は多様だが、一つだけ確かなことがある。続かないのは、意志が弱いせいではないのだ。

「減量に限らず、意志の力に頼るようなものが長続きするわけがありません」(吉原さん)

意志の力はか弱く限りがある。アップル創業者のスティーブ・ジョブズが日々同じ服を着ていたのは、何を着るかという選択に意志の力を浪費せず、クリエイティブな仕事に振り向けるためだったそう。職場でも家庭でも頼りにされる40代も、仕事や子育てなど、より肝心なことに意志の力を温存しよう。

重視すべきは、意志ではなく習慣の力。歯磨きのように、面倒な行為でも、一度ルーティン化すれば、難なく続けられる。ダイエットも、意志の力を浪費せず行える小さな行動修正から始めるべきだ。

毎日のように食べていた揚げ物を週1回減らす、夕飯はご飯を半分にする、週末1食だけ自炊する…。何の苦もなくできそうなものを、自らセレクト。どんな小さなトライでもいいから、始めてみよう。

こうしたトライアルが3週間続けば、習慣化できる。そして一つでも習慣化したら、その成功体験がモチベーションを高めてくれるから、次の行動修正に向き合う意欲が湧く。この正のサイクルで減量に役立つ習慣をだんだん増やせば、意志の力に頼らなくても痩せられるのだ。

⑪ モチベーションが湧かないなら…

モチベーションが湧かない 流されがちな人のためのダイエットの助言

駅伝選手は夏場の合宿で月1000km以上走るとか。水泳選手も1日10km以上泳ぐのはザラ。

ランナーやスイマーに限らず、アスリートたちが辛いトレーニングに耐えられるのは、自己ベストを更新したいとか、次のオリンピックに出たいといった明確な目標設定をしているからにほかならない。

ハッキリしたゴールがあれば、頑張れるのはアスリートだけではない。それは減脂肪に挑む勇気あるダイエッターでも同じ。

「“なんとなく痩せたい”では、目的が曖昧でやる気は出ない。30インチのデニムが穿けるまで痩せるとか、ビーチで水着になっても恥ずかしくないボディになるといった、具体的なゴールを定めた方がモチベーションは高まります」(吉原さん)

何のために、いつまでに、どのくらい体脂肪を落とすのか。きちんと“見える化”して、つねに見ている手帳やカレンダーなどに書き留めてみよう。

⑫ 減量が停滞すると挫けそうになるなら…

減量が停滞すると挫けそうになる 流されがちな人のためのダイエットの助言

スランプのないアスリートがいないように、停滞に悩まないダイエットもない。流されマンがそこで挫けると理想ボディは遠い。

「挫折する前に試してほしいのは、ダイエット中にあえてカロリー制限を中断し、減量前の食事に戻してみる “ダイエットブレイク”。ひと休みすると心身のストレスが和らぎ、代謝の低下で減量にブレーキがかかることも防げます」(吉原さん)

これは、「間欠的エネルギー制限(Intermittent Energy Restriction、IER)」という方法。ずっとカロリー制限を続ける通常のダイエット法=持続的エネルギー制限(Continuous Energy Restriction、CER)と比べて、IERの方が体脂肪は減りやすく、気になる代謝の落ち込みも、CERよりも低く抑えられるという研究もある。

減量中にご褒美メシを食べるチートデイを作る方法も、ミニIERのようなものであり、効果的だ。

カロリー制限後の変化
カロリー制限後の変化 流されがちな人のためのダイエットの助言

Byrne NM, 2018