教えてくれた人:窪田徹矢先生
くぼた・てつや/泌尿器科専門医。くぼたクリニック松戸五香院長。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医として年間2万5000人を診察。YouTube『Drバナナの診療所』『くぼたクリニック松戸五香』では下半身の悩みに答えている。近著に『EDかな?と思ったら読む本』(自由国民社)。
目次
男性ホルモン(テストステロン)を低下させる3大要因とは?
テストステロンは一般的に20〜30歳代をピークに年間1%ずつ、緩やかに低下していく。泌尿器科専門医・窪田徹矢先生によると生活習慣が強く影響し、個人差も大きい。
加齢と男性ホルモンの変化
男性ホルモン(テストステロン)は、精巣が大きくなるといった二次性徴期を経て20代でピークを迎え、一般的に40歳代以降緩やかに減少する。
座りすぎの生活から来る運動不足、スマホの見すぎなどによる睡眠の質と量の不足、そしてストレスがテストステロン低下のスピードを速めるという。特にストレスが強くかかると年齢に関係なく激減。
30代でテストステロンの量が半減している人も決して珍しくはない。では、テストステロンが十分にあるかを把握するには? 身近な指標が朝勃ちだ。
「もともと朝勃ちが少ない人もいますが、本人の感覚で勃起の回数が減っていると感じたら、男性ホルモン減少のサインです」(窪田先生)
女性の月経と同じで、朝勃ちは男性の生理現象であり、男性ホルモンと密接に関係している。医学的には「夜間勃起現象」と呼ばれ、レム睡眠時に起こるので、朝勃ちの減少は睡眠が乱れているサインでもある。
テストステロンを減らす3つのリスク
- 座りすぎ
- ストレス
- 睡眠不足
より具体的なメソッドも後述するが、生活習慣の見直しも大事だ。テストステロンが活発になる朝の時間帯から散歩などの身体活動を始める。射精によって誘眠効果が高まることが期待できるので、就寝前にセックスやマスターベーションをするなども効果的。
一方で精力低下を自覚しているならば、「セックス=挿入&射精」という先入観からも距離を置こう。手をつないだり、パートナーとコミュニケーションを取るだけでも、ストレス緩和や性ホルモンへの好影響をもたらす。
マスターベーションには男を高める法則があった!
増強計画に入る前に、まずは精巣のメンテナンスについて。手軽に行えるのがマスターベーションだ。1か月で21回以上射精をする人は4~7回の人に比べて前立腺がんの発症リスクが約2割低下するというデータもある(20代および40代時点での頻度を調査)。
「水分補給と同じでカラダの循環を良くするには臓器を常に動かすことが大事。少し前はオナニーを我慢する“オナ禁”が健康に良いといわれたこともありますが、老廃物を溜めることになるので健康には良くない。きちんと適度に射精をしましょう」
ペニスは筋肉や血管と連携しているので筋トレと同じく頻繁に刺激を入れることが大事。では、適切な頻度はというと、海外論文に「9の法則」という考え方がある。30代であれば「3×9=27」。この27を「20日で7回」とする。同様に計算したのが下表。50代はおよそ週1回、60代でもおよそ2週間に1回が適切な頻度の目安となる。
9の法則によるマスターベーションの頻度
20代なら週5回、30代は2回、40代は1.5回が適切な頻度。一方で、40代以降は精子の生成能力が下がり男性ホルモンが低下するので週2回以上のマスターベーションはおすすめできない。
夜のノーパン睡眠で睾丸が喜ぶ!?
精巣にとって良くない習慣も覚えておこう。テストステロンの分泌を担う精巣の機能が最大限発揮されるのは31〜37度なので、睾丸の温度を上げる習慣は避けたい。膝にノートPCを置いての長時間作業やサウナは男性ホルモンにとってNG。
「サウナに入る時間は10分程度にし、頻度は少なめにしてください」
サウナ後の水風呂も長時間になるとストレスホルモンといわれるコルチゾールを増加させてテストステロンを減らすとの研究報告もあるので、ほどほどに。
温度変化に弱い睾丸は、温度調節をしやすいようぶら下がり構造なので、タイトなズボンで股間を長時間圧迫しないように。通気性の良い下着を身に着ける、寝る時はノーパンを試してみるなど、“ぶらぶら”させる工夫をしよう。
頼りたい亜鉛も海外サプリにはご用心
男性ホルモンにとって必要不可欠な栄養素といえば亜鉛。1日の必要摂取量は18歳から69歳の男性で約10mg、女性で約8mgとされている。
男性の場合、食事で摂ろうとすると生牡蠣60g(5粒程度)、豚肉であれば150gほど。若い世代なら楽勝かもしれないが、中高年となると食事で必要量を摂るのはハードルが高い。
インスタント食品に頼りがちの食生活では不足しがちで、窪田先生のクリニックで血液検査をすると成人の7割が亜鉛不足に陥っているという。となればサプリで補うのが手っ取り早いが、インターネットで手軽に買える海外製の亜鉛サプリは高含有量のものが多く過剰摂取に注意が必要だ。
「体格や体質にもよりますが、1日40mg以上は日本人にとって過剰摂取。海外製品は1回で50mg摂取できるものもあるので、日本製を選ぶのがおすすめです」
亜鉛を多く含む食材(100g当たり)
魚介 | 牡蠣(13.2mg)、たらこ(3.1mg)、ホタテ貝・生(2.7mg)、ウナギ(1.4mg) |
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肉・卵類 | 豚レバー(6.9mg)、牛・肩ロース(5.6mg)、鶏レバー(3.3g)、卵黄(4.2mg) |
豆類・木の実 | カシューナッツ(フライ:5.4mg)、アーモンド(フライ:4.4mg)、納豆(1.9mg)、木綿豆腐(0.6mg) |
社交ダンスで、男性ホルモンUP!
テストステロンは性生活に関与するだけではない。公平性や社会性にも影響し、家族、コミュニティなど人との関わりへの意識も高めてくれる。同様に、テストステロンを高める習慣も性生活ありきではない。
「異性との触れ合いやコミュニケーション、スポーツの試合や仕事などでの“成功体験=勝利”でも男性ホルモンは高まります」
習い事を始めてみるのもいいし、スポーツは実際に競技をしなくても、贔屓のチームを誰かと一緒に応援するだけでもいい。異性との活動という点で、最も期待できるのは運動不足解消にもなる社交ダンスだ。
また、テストステロンとプラセボ(偽薬)のいずれかを投与して寄付を募ったところ、テストステロンを投与された人たちの方が寄付の金額が高かったという実験結果もある。つまりテストステロン値が高い人は利他的な活動に積極的な傾向があるということ。ボランティアで新しい人と出会い、一緒に活動するのもテストステロンUPに期待大だ。
モツ鍋に牡蠣をぶち込み食すべし
テストステロンを高めてくれる食材や料理も頭に入れておこう。男性ホルモンの産生に関わる亜鉛の摂取でおすすめなのが牡蠣。アリシンが豊富に含まれるニラやニンニクも男性ホルモンを増やしてくれるので、モツ鍋に牡蠣を入れて食したい。
亜鉛は腸からの吸収率が20〜40%程度と低い栄養素。食べ合わせが重要で、肉・魚といった動物性タンパク質と食べると吸収効率が高まる。選べるなら赤身肉や良質なタンパク質を含むカツオで補給を。
スイカや瓜に含まれるシトルリンは血管を拡張させる一酸化窒素を作り、テストステロン値を高める。豚肉のアルギニンも血管を拡張し、シトルリンとの相性が良い。両者は炒めると吸収率が高まるのでゴーヤチャンプルーでいただこう。ニラ、ニンニク、豚肉とくれば餃子もアリ。
これに加え、テストステロンレベルの維持に必要なビタミンD、抗酸化力に優れるアスタキサンチンが豊富なサケも精力アップ食材だ。
スーパーで買いやすい食材を覚えておこう。間食や副菜のトッピングにナッツ類を加えることで亜鉛の吸収率がアップする。玄米や全粒粉など精製されていない穀類は亜鉛の吸収を低下させてしまう。
これが「精力UPスクワット」だ!
冒頭でも触れた通り、長時間のデスクワークなどによる座りすぎは下半身の血流を悪くし、男性ホルモンを下げる原因に。手軽なエクササイズをするなら、注目したいのが骨盤底筋群だ。骨盤底筋とは股間の尾骨から恥骨にかけてある筋肉群で、肛門の開閉や勃起に関わる。
「ペニスを東京タワーとすると、骨盤底筋はいわば地盤。ここが歪んでグラつくと東京タワーも立たなくなってしまいます」
骨盤底筋を鍛えるのに有効なのは肛門の引き締め運動。肛門に力を入れて、お尻の穴を10秒間ギュッと強く閉めるだけ。電車の移動中などでも、さりげなく実践できる。
さらなる地盤固めにはワイドスクワットを。下半身には全身の筋肉の7割があり、その最たるものが大腿四頭筋。鍛えるなら、この人体最大体積の筋肉を刺激するのがタイパがいい。さらにワイドスクワットは内転筋群と連動する骨盤底筋を同時に鍛えられ、血流も良くなる。1日10回を習慣にして盤石の地盤に。
ワイドスクワットのやり方
足は肩幅の2倍程度に開き、爪先は外側に向ける。両腕は頭の後ろか胸の前で組む。目線を前に向け胸を開くようにし、お尻を後ろへ引き踵に体重を乗せる意識で太腿と床が平行になるまでゆっくりと腰を下ろす。しゃがんだ時に膝と爪先は同じ方向に向くようにし、膝が爪先より前に出ないこと。
200km以上ランでEDリスクが上がる!?
スポーツを楽しむ読者諸兄も多いと思うが、やりすぎは逆効果。運動で筋肉が刺激されると大量のテストステロンが分泌され、筋肉細胞にある男性ホルモン受容体に吸着、細胞分裂が促進され筋肉が増える。
ゆえに運動をすることでテストステロン値は高くなるが、使われたテストステロンは消えてなくなってしまう。特にフルマラソンのような激しい有酸素運動をすると男性ホルモンは減退することがわかっている。
「1か月で200km以上走ると、男性ホルモンレベルを下げる可能性があるので月間100kmくらいに抑えてください」
月間200kmを超えるとケガの発生率が高まるのは、テストステロンが低い状態にあることが原因ともいわれている。走りすぎには注意を。
薬を使用しないED治療器《ビガー2020》。
ED(勃起障害)とされる日本人男性は、潜在的な人を含め約1800万人。実に日本男子の4人に1人の割合。窪田先生によると60〜70代の約半数の人がEDになるという。
ED治療ガイドラインで推奨される治療法は治療薬の経口摂取。日本で認可されているものには《バイアグラ》《レビトラ》《シアリス》があるが、近年これに続く第2の選択肢として注目されているのが、陰圧式勃起補助具。
ポンプ操作で陰茎を吸引することで海綿体に血流を送り込み勃起させるもので、泌尿器科専門医が考案した《ビガー2020》は有意な臨床研究結果も揃い管理医療機器に認定されている。薬を飲みたくない人が医療機関指導のもと自宅で使うことができる。