頭痛や息切れ、内臓不調にも。カラダの悩みに効くストレッチ。

神経の圧迫や筋肉の緊張を解くストレッチなら、あらゆるカラダの悩みを解決できる。凝り固まったカラダを「動的ストレッチ」で動かした後、「静的ストレッチ」でほぐし、さまざまな不調を改善していこう。

取材・文/石飛カノ イラストレーション/KAZMOIS 監修/山口正貴

初出『Tarzan』No.904・2025年6月5日発売

カラダの不調はストレッチで解決

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教えてくれた人

山口正貴(やまぐち・まさたか)/東京大学医学部附属病院理学療法士。自らのぎっくり腰体験を機に理学療法の道に進む。医療・予防業務に携わりながら腰痛の研究を開始。2016年の研究論文で日本医学療法士学会の優秀論文表彰優秀賞を受賞。

頭痛|首の後ろの筋肉をほぐす。

頭痛にはさまざまな種類があるが、首周辺の筋肉の緊張が原因の緊張性頭痛の場合、ストレッチで症状を軽減できる。方法は普段伸ばされっぱなしの首の後ろの筋肉をほぐして血行を促すこと。ストレートネックの改善にも。

動ストレッチ(5往復)

頭痛 動ストレッチ

  1. 椅子に座り、タオルを首の後ろに引っ掛けて両端を左右の手で持つ。
  2. 顔を斜め上に向けて首の後ろの筋肉を屈曲させたままタオルの端を左右交互に引っ張る。いわば「セルフ牽引」。
静ストレッチ(10秒〜)

頭痛 静ストレッチ

パソコンなど俯く作業では7つある頸椎のうちの上部がいつも伸ばされているので、屈曲させる。

  1. 椅子に座って背すじを伸ばし片手で顎を押しながら手前に引いてキープ。

息切れ|胸椎を伸ばす。

猫背姿勢で胸が縮まると肺を取り囲む胸郭自体が萎んでしまう。呼吸は肋骨の動きによって促されるので、息切れしやすいのは胸椎が丸まって肋骨の動きが制限されているから。胸椎を伸展させて深い呼吸を取り戻そう。

動ストレッチ(5回)

息切れ 動ストレッチ

  1. 壁を背にして立つ。踵は壁につけずに壁に寄りかかる。
  2. 肘を曲げて両手を上げる。
  3. 肩甲骨と腕が壁から離れないようにして腕を上下に動かす。キツい人は胸郭が固まっている証拠。
静ストレッチ(左右10秒〜)

息切れ静ストレッチ

  1. 床に仰向けになり両膝を立てたら膝を倒して床につける。
  2. 倒した側の手で膝を押さえ、反対側の手は頭上に伸ばす。
  3. そのまま重力に身をまかせてひたすら脱力。反対側も同様に行う。

四十肩|肩関節の可動域を広げる。

四十肩、あるいは五十肩の原因はさまざまあるが、主なメカニズムは肩周辺の組織が老化して炎症が起こること。痛みが落ち着いてきたら、少しずつでもいいので肩関節の可動域を広げていくことが完治のポイント。

動ストレッチ(5回)

四十肩 動ストレッチ

  1. おヘソの前でタオルを横にして持つ。
  2. 痛い方の肩が右だったら左手でタオルを引っ張り、右手でその力に抵抗するようにタオルを外側に引っ張る。肩の筋肉を鍛える筋トレ要素もあり。
静ストレッチ(10秒〜)

四十肩静ストレッチ

  1. 背すじを伸ばして背中の後ろでタオルを縦方向に持つ。
  2. 痛くて動きの悪い方の肩が右肩だったら、左手でタオルを上方向に右肩が痛気持ちいいところまで引っ張る。この状態でキープ。

胃腸の不調|胸椎の過度な後彎をリセット。

まさかストレッチで内臓不調の改善も? 胃腸の場合はそれも可能。理由は猫背姿勢で胃腸が圧迫されて逆流性食道炎や便秘などが促されるケースもあるからだ。胸椎の過度な後彎をリセットするストレッチを習慣に。

動ストレッチ(5往復)

胃の不調 動ストレッチ

  1. 椅子に座ってまず両手を組んで前方にぐーっと伸ばしながら骨盤を後ろに倒して背中を思い切り丸める。
  2. 次に腰に両手を当てて顎を引いて肩甲骨を寄せ背中を反らす。交互に繰り返す。
静ストレッチ(左右10秒〜)

胃の不調 静ストレッチ

  1. 床にうつ伏せになり両手を床について上体を起こす。
  2. そのまま後ろを振り返るようなつもりで上体を捻りながら反らす。胸椎と腰椎が伸びたところでキープ。逆側も同様に行う。

肩こり|僧帽筋と肩甲挙筋をほぐす。

肩こりのターゲットの筋肉は首から肩を広く覆う僧帽筋とその深層にある肩甲挙筋。どちらも首から肩甲骨を吊り下げている筋肉なので四六時中引っ張られている状態。毎日動かしてほぐさねば肩こりは改善しない。

動ストレッチ(5往復)

肩こり動ストレッチ

  1. 椅子に座り両手を膝の上に置いて肘をピンと伸ばす。
  2. 上体を手に寄りかかるように前傾させて肩甲骨を押し上げる。
  3. 肩まわりの筋肉を緩ませたまま首だけを左右交互に回す。
静ストレッチ(左右10秒〜)

肩こり静ストレッチ

  1. 椅子または少し高い台の上に座る。
  2. 座面の端を片手で持ち、反対側の手を頭に添えて頭の重みで真横に倒す。真横に倒すと僧帽筋、やや斜め前に倒すと肩甲挙筋が伸ばされる。逆も。

腰痛|ハムの張りや凝りを解消する。

腰痛の原因のひとつはハムストリングスの張りや凝り。ハムが硬くなると骨盤が後ろに引っ張られる。すると前に屈む動きなどでは骨盤が前傾しにくいため腰椎に余計な負担がかかる。というわけでまずはハムをほぐすべし。

動ストレッチ(5往復)

腰痛 動ストレッチ

  1. 床にうつ伏せになって肩の真下で両肘を立てる。
  2. 膝を曲げて膝下を揃える。
  3. 両脚を左に倒すと同時に顔を右腕に近づけ、次に右に倒して顔を左腕に近づける。交互に繰り返し。
静ストレッチ(左右10秒〜)

腰痛静ストレッチ

  1. 床に仰向けになり、タオルを片足の爪先に引っ掛けてタオルの端を左右の手で持つ。
  2. 腕の力で脚を引き上げ、膝をまっすぐに伸ばす。腕以外は脱力させてキープ。逆も同様に。

股関節痛|臀筋群の緊張をほぐす。

股関節を曲げる動きは本来、お尻の筋肉が緩んでその拮抗筋の腸腰筋が収縮するというもの。でも、お尻まわりの筋肉が硬いと筋肉同士の綱引き状態になり、股関節に過度な負荷がかかる。臀筋群の緊張をほぐそう。

動ストレッチ(5回)

股関節痛動ストレッチ

  1. 両足を肩幅の1.5倍に開いて立つ。爪先は30度外側に開く。
  2. そのまま腰を上下させるスクワット兼動的ストレッチ。爪先を外に向けると股関節の骨同士がぶつからず負担が軽減。
静ストレッチ(10秒〜)

股関節痛静ストレッチ

  1. 床に仰向けになり両膝を曲げて両手で抱える。このとき、膝を若干開く。
  2. 股関節の構造上、膝を開いて外に逃がすと90度以上曲げることができる。お尻が十分に伸びた状態でキープ。

梨状筋症候群|梨状筋を柔らかくする。

お尻の深層筋である梨状筋が硬くなり、その前や真ん中、後ろを走っている神経が圧迫されて痛みや痺れが起きる。これが梨状筋症候群。症状名にその名がある通り、ターゲットは梨状筋一択。

動ストレッチ(5回)

梨状筋症候群 動ストレッチ

  1. うつ伏せになり、両手を顎の下で組む。
  2. 膝を直角に曲げ、膝下を揃えた状態から外に広げる。膝下を広げたときに梨状筋が伸ばされる。開閉の動きを5回繰り返し。
静ストレッチ(左右10秒〜)

梨状筋症候群静ストレッチ

  1. 床に仰向けになり、左脚を右脚の上にクロスさせた状態で両膝を曲げる。
  2. 左手で右膝、右手で左足首を摑んで手前に引き寄せてキープ。足首を持った側の梨状筋が伸びる。逆も。

むくみ|腓腹筋とヒラメ筋を収縮させる。

塩分の過剰摂取や冷え、立ち仕事など、むくみの原因は数多いが最善の改善方法はただひとつ、ふくらはぎの筋肉のポンプ作用で血流を促すこと。ターゲットは腓腹筋とヒラメ筋。足首を動かして筋肉を収縮させよう。

動ストレッチ(5回)

むくみ 動ストレッチ

  1. 壁に向かって立ち、両手を壁に添えてカラダを支える。両足の幅は肩幅。
  2. そのまま踵を床から引き上げて下げる動きを5回繰り返し。カーフレイズという筋トレ要素もあり。
静ストレッチ(左右10秒〜)

むくみ 静ストレッチ

  1. 床に仰向けになり、片足の土踏まずから踵の部分にタオルを引っ掛ける。
  2. タオルの端を左右の手で持ち、腕の力で脚を持ち上げてキープ。このとき足首を屈伸してもよし。

扁平足|足底内在筋をほぐす。

ふくらはぎの腓腹筋やヒラメ筋は踵の骨に付着している。その踵の骨から足の裏を広くカバーしているのが足底内在筋。足のアーチを支えるこの筋肉が硬くなると扁平足の原因に。ふくらはぎのストレッチと併用でほぐしたい。

動ストレッチ(左右5回)

扁平足 動ストレッチ

足底内在筋に直接働きかけるタオルギャザー。足でタオルを手繰り寄せるトレーニングだが、足の指ではなく土踏まずで「グー」を作るつもりで手繰り寄せることがポイント。

静ストレッチ(左右10秒〜)

扁平足 静ストレッチ

  1. ふくらはぎのストレッチ。壁に両手をついて両足を前後に開く。
  2. 壁を押しながら前脚の膝を曲げ、後ろの膝をまっすぐ伸ばす。後ろ足の踵をしっかり床につけること。反対も。

自律神経|脊柱起立筋と多裂筋の緊張を解く。

脊柱に沿って走っている脊柱起立筋、その深層にある多裂筋は自律神経に近接する筋肉。これらの筋肉が緊張した状態が続くと、ミクロレベルで炎症が起こるので交感神経が優位な状態に。背骨を意識してストレッチを。

動ストレッチ(5往復)

自律神経 動ストレッチ

  1. 壁から少し離れて立ち、頭からお尻までを壁につける。
  2. そのまま1秒間に背骨を1個ずつ剝がすイメージで壁から離し、最終的に骨盤を壁から離す。逆の動きで元の姿勢に。
静ストレッチ(左右10秒〜)

自律神経 静ストレッチ

  1. 椅子に座って上体を深く前傾させ、片足の足首を両手で持つ。
  2. そのまま頭をぐーっと下げ、背中を後ろから誰かに押されているイメージで足首を引っ張ってキープ。逆も。