
教えてくれた人
馬奈木俊介(まなぎ・しゅんすけ)/九州大学都市研究センター長および主幹教授として、別府市、別府市旅館ホテル組合連合会と提携し、温泉の健康効果の実証実験に取り組む。
北出恭子(きたで・きょうこ)/泉質の“利き湯”による調査・研究をしながら年間300湯以上入湯する温泉専門家。大学講師や観光行政の委員も歴任。著書『九州絶品温泉、ドコ行こ?』。
八木みちる(やぎ・みちる)/別府八湯温泉道名人会副理事長。旅行で訪れた別府に魅せられ2010年に神奈川から移住。現在はカフェ運営の傍ら温泉ガイド、温泉コスメの開発などを手がける別府温泉の牽引者のひとり。
泉質|湯の個性を感じとる3つのスポット。
複数の泉質が楽しめる温泉地の中でも、質・量ともに群を抜く別府。その別府温泉を擁する九州は間違いなく世界一の温泉大国。
「九州には温泉法で定められている10種類の泉質のうち、すべてが存在するまさに温泉アイランド。さらに、全国の泉源の約3分の1が集中しているエリアなので、おすすめの切り口はいくらでも」
と言う温泉家の北出恭子さんにこれ! という九州きっての名湯をピックアップしてもらった。
「〈地獄温泉 青風荘〉は全国で0.001%にも満たない足元湧出泉です。ブクブクと音と振動を立てながら湧き出す温泉は、地球のエネルギーを全身で感じることができます。非常に稀少で美しい“青湯”の〈わいた温泉〉もおすすめです。〈寒の地獄温泉〉では、ストーブで“あぶる”江戸時代から続く湯治法である“寒冷浴”を体験できます。一昨年にサウナが併設されて今、若い人たちにも人気になっていますね」
足元湧出、鮮やかな青色、目の覚めるような冷泉。贅沢に悩め!
1.〈地獄温泉 青風荘〉南阿蘇・酸性硫黄泉|足元から湧き出す酸性硫黄泉の奇跡の湯。
異なる3つの源泉を持つ湯治宿。その中のひとつ〈すずめの湯〉は人が入れる適温の源泉が足元から湧き、そのまま直接浸かることができる。これが“奇跡の湯”と呼ばれる所以。熊本県阿蘇郡南阿蘇村河陽2327。WEBサイト
2.〈わいた温泉郷 豊礼の湯〉阿蘇・塩化物泉|南国の海の色と見紛う超レアなホワイトブルー泉。

源泉を一度タンクに貯蔵し“熟成”させる。微細な粒子に光が当たり散乱することでホワイトブルーの湯に見える。目玉は全室個室、絶景を一望できる家族湯。コインタイマー式で1時間1,000〜2,000円。熊本県阿蘇郡小国町西里2917。WEBサイト
3.〈寒の地獄温泉〉大分・硫黄泉|山間にひっそり佇む秘湯のサウナと冷泉で整う。


2023年に導入されたサウナが若者に人気。
江戸末期に開湯したという秘湯は13〜14度の冷鉱泉。加熱して入れる湯船もあるが、サウナに入った後、冷泉に浸かるという交代浴が人気。古い湯治場を再利用した素朴な佇まいも魅力のひとつ。日帰り料金2,500円。大分県玖珠郡九重町田野257。WEBサイト
入浴法|浸かるだけじゃない!個性的な5つの温泉体験。
「別府は泉質もさることながら、多彩な入浴方法を楽しむことができます。変わり種としては砂風呂、泥風呂、蒸し風呂がありますね」
と、別府八湯温泉道名人会副理事長の八木みちるさん。
「それとは別に別府には共同浴場文化があるのが大きな特徴。1階が温泉、2階が公民館という共同浴場が何十軒とあります。ひと月1000円ちょっと払っていつでもお風呂に入れるという、いわば温泉のサブスクサービスですね」
たとえば、珍しい砂風呂体験ができる〈竹瓦温泉〉も1階は温泉、2階は公民館で頻繁に地元のイベントが催される。ただ、砂風呂は国内外の観光客に大人気のアクティビティだとか。
「それと別府八湯のひとつ〈温泉〉のむし湯は私の好きな入浴法のひとつ。ちょっと考えごとがあるときなど、暗いスペースに横たわっているとじっくり内省ができます」
別府の蒸し湯は狭いスペースに横たわるタイプだが、それ以外にもユニークな蒸し湯も。
「〈杖立温泉〉では、高温の温泉の蒸気を利用し、箱の中に入って穴から首だけ出して蒸気に浸かる特殊な入浴法“箱蒸し風呂”があります」(北出さん)
湯に浸かるだけが温泉じゃない。
1.〈竹瓦温泉〉別府・砂湯|歴史ある銭湯の中で発汗必至の砂湯に埋もれる。


歴史ある建物は町のシンボル。
唐破風造りの屋根が特徴の別府のシンボル的存在。スタンダードな温泉の他、明治の創設時以来受け継がれている砂湯が体験できる。浴衣を着て砂に埋められること15分、カラダの芯から温まる新体験に驚くはず。1,500円。大分県別府市元町16-23。WEBサイト
2.〈別府温泉保養ランド〉別府・泥湯|広大な混浴温泉できめ細かな泥にまみれる。
別名、紺屋地獄。適度な噴気と腐植粘土層とミネラル地下水の三拍子が揃った条件で湧く珍しい泥湯。入湯感覚はぬるいが水に比べて熱保有度が5倍と高いため、負荷が少なくカラダを温めることができる。1,500円。大分県別府市明礬5 紺屋地獄。WEBサイト
3.〈純和風旅館 泉屋〉阿蘇・箱蒸し湯|箱の中に収まって熱い蒸気をじっくり浴びる。
杖立温泉と呼ばれるこの界隈の名物は蒸し風呂。そこにひと工夫凝らしたユニークな入浴法がこれ。檜で作られた箱の中にある椅子に腰かけてフタを閉め、首から下を全身じっくり蒸し上げる。800円。熊本県阿蘇郡小国町下城4179。WEBサイト
4.〈鉄輪むし湯〉別府・蒸し湯|ほの暗い石室の中で薬草の芳香に包まれる。
小さな木戸の向こうにある8畳サイズの石室には“石菖”という食欲改善や鎮痛効果のある薬草が敷き詰められている。温泉の熱で温められた石菖の上に横たわる入浴法。心地よい芳香でリラックス効果は抜群。700円。大分県別府市鉄輪上1組。WEBサイト
いい香り〜。なんだか眠くなってきた。小さい木戸をくぐって入ります。
5.〈ひょうたん温泉〉別府・打たせ湯|高みから降り注ぐ瀧にただひたすら打たれる。


別府の中心地にあり、さまざまな温泉体験ができる一大温泉施設。その中でも人気を誇る瀧湯(打たせ湯)。男湯に19本、女湯には8本の瀧湯が備えられ、その水圧によって肩や背中などの凝り解消に有効と好評。1,080円。大分県別府市鉄輪159-2。WEBサイト
体験|温泉地で広がる+αのアクティビティ5選。
温泉の周辺で特別な体験をするとより健康効果が望めることは、何度も触れた通り。最後は温泉+アクティビティが体験できるスポットをご紹介しよう。
「温泉成分による効果だけでなく、森林や海辺など自然環境によってもカラダへの影響は変わります。標高1300mの場所にある〈法華院温泉山荘〉では、温泉との相乗効果でより健康増進や疲労回復にも繫がるでしょう」(北出さん)
「私も3時間かけて温泉まで登山をしました。その疲れも温泉ですっかり癒やされます」(八木さん)
同じ山でも、湯布院の〈塚原温泉〉ではほど近くで噴火口を見学できるというまたとない体験ができる。まさにホットスポットで元気をもらえる。
また、浸かるだけでなく飲んだり食べたり、温泉パワーを舌で味わう体験も九州ならでは。
「〈よいやな湧水〉では日本では珍しい中硬水の炭酸泉が飲めます。ミネラル豊富でまさに天然のサプリ。別府の〈縁間〉では温泉の蒸気で作った蒸しピザがもちもち食感でとてもおいしいです。〈わいた温泉〉周辺には蒸し場があり、自分で食べ物を蒸す体験もできます」(北出さん)
どれも元気が出るスペシャルな温泉体験。さあ、出かけよう。
1.〈塚原温泉 火口乃泉〉湯布院・火口見学|地球のエネルギーを間近で感じられる。
温泉が発見されたのは平安時代という歴史ある秘湯。温泉から坂道を上ること約5分で噴気が立ちのぼる噴火口が見学できる。地球のエナジーを感じた後に鉄分含有量も酸性度も日本トップクラスの温泉へ。500円〜。大分県由布市湯布院町塚原1235。WEBサイト
2.〈法華院温泉山荘〉大分・登山|登山の疲れを癒やす絶景と温泉が待っている。
標高約1300m、九州で最も高い場所にある温泉。創業約140年。元は寺院で、オーナーの弘蔵岳久さんは26代目の当主。登山口のバス停から徒歩約2時間の場所にあるので入湯は登山とセットだ。500円。大分県竹田市久住町大字有氏1783。WEBサイト
3.〈地熱観光ラボ 縁間〉別府・地熱体験|温泉の噴気を活用した体験メニューが人気。

経済産業省の地熱理解促進事業の一環として2015年にオープン。地熱エネルギーを生かした“温泉染め”などの工芸体験やピザなど“地獄蒸し”料理を堪能できる。貸し切り湯は2,500円。食事、工芸体験は別途。大分県別府市鉄輪字風呂本228-1。WEBサイト
4.〈天然炭酸水よいやな湧水〉大分・飲泉|豊かな山から湧き出す希少な天然炭酸水を飲む。
「よいやな」とは九重連山の黒岳に降った雨水が溶岩をすり抜けて盛大に湧き出る温泉水。火山性ミネラルが大量に含まれた硬水の炭酸水で、専務の大八木敬教さんによれば「天然の微炭酸が特徴です」。大分県由布市庄内町阿蘇野2099。WEBサイト
5.〈わいた温泉郷 豊礼の湯〉阿蘇・蒸し料理|温泉に入った後は蒸したごちそうに舌鼓。
温泉熱を利用した蒸し料理が楽しめる。食材は販売しているが持ち込みも自由。「一番人気はほくほくのサツマイモです」と、スタッフの日隈稔幸さん。宿泊や入浴施設の利用者は無料で蒸し器が使用可。熊本県阿蘇郡小国町西里2917。


























