「ととのう」って結局、何? サウナがもたらす真の健康効果。
サウナがもたらす本当の健康効果とは? サウナが定着してきた今こそ、科学的に正しいサウナの知識を身につけて、サウナライフをエンジョイしよう!
取材・文/井上健二 撮影/今津聡子 イラストレーション/林田秀一 監修/加藤容崇 撮影協力/91°SAUNA
初出『Tarzan』No.914・2025年11月6日発売

教えてくれた人
加藤容崇(かとう・やすたか)/日本サウナ学会代表理事。慶應義塾大学医学部特任助教。北海道大学医学部卒業。ハーバード大学医学部附属病院などを経て現職。専門はがんゲノム医療とがん早期発見技術開発だが、サウナをはじめとする健康習慣の科学的な解析を第二の専門と定める。医学博士。
初心者でも安心。科学的に正しいサウナの入り方。
近代的なサウナが日本で普及したきっかけは、1964年の東京オリンピックだったとか。その後何度かのブームを経て、2010年代半ばから現在までブームが進行中。温泉などの入浴施設やジムなどには、サウナを併設するところも増えてきた。
サウナにハマるサウナーが急増する一方、正しい知識がなく、間違った入り方をしている人も多い。さらに、「熱さを我慢するのが苦手」とか「“ととのう”とか意味がわからない」といった理由で敬遠する人も少なくなさそう。
サウナは熱さの我慢比べ大会なんかではない。きちんと活用すれば運動に匹敵する威力を発揮してくれるから、いつまでも食わず嫌いでいるのはもったいない話。
サウナを日々の暮らしに取り入れて、その恩恵を得るのに必要なのは、科学的に裏付けられた真っ当な入り方の追求。その重要性を説く第一人者が、日本サウナ学会代表理事の加藤容崇医師だ。
365日サウナに入る生粋のサウナーで、日本で初めてサウナ効果を科学的に解剖した著作を書いた加藤医師とともに、サウナの御利益と賢い利用法をひもとこう。
サウナの基本的な入り方

この順番を守ることが大切。サウナ室ではなるべくヒーターから遠い場所の下段からカラダを慣らす。坐り方は、あぐらか体育坐りだと全身が均一に温まる。水風呂は16〜18度で20〜60秒ほど。外気浴は椅子に坐って5〜10分休む。
サウナのおもな健康効果とは?
サウナの健康効果は多種多様。ここでは2点に絞って解説する。
まず、交感神経と副交感神経からなる自律神経が、短時間で大胆に切り替わる。熱いサウナ室も冷たい水風呂も刺激強めなため、交感神経が優位に。続く外気浴では副交感神経が一転優位となり、このメリハリで自律神経が整う。
次に、サウナではカラダの深部の体温が上がり、数々のポジティブな作用をもたらしてくれる。
深部体温が38度以上になると、熱刺激でヒート・ショック・プロテイン(HSP)というタンパク質が細胞から分泌される。HSPは細胞をストレスから守り、疲労回復をアシストするのだ。
上がった深部体温は1時間半〜2時間かけて徐々に落ち、サウナ前よりも下がる。ヒトは深部体温が下がるタイミングで寝入りやすいので、就寝時刻の1時間半〜2時間くらい前にサウナに入ると入眠しやすく、睡眠の質も上がる。
「浴槽入浴でも深部体温は上がり、HSPも分泌されます。でもサウナは水風呂と外気浴というクールダウンを挟んで段階的に深部体温が上がり、入浴のような水圧もかからないため、入浴より負担なく深部体温が上がるのです」
「ととのう」を医学的に説明してみると?

ランナー以外にランナーズハイがわからないように、門外漢にいまいちピンと来ないのがサウナで「ととのう」という感覚。「ととのう」とは、医学的にはどう説明できるのだろうか。
「サウナ室→水風呂では、交感神経が優位になり、興奮状態となってアドレナリンが分泌されます。その後、外気浴で休んでいると、副交感神経に切り替わり、リラックスできます。でも、体内にはアドレナリンはまだ残っている。それにより、副交感神経でリラックスしているけれど、アドレナリンによって覚醒して脳のパフォーマンスは高くなっている。これが〝ととのう〟という状態です」
一方、頭がボーッとしてフラフラになることを「ととのう」と誤認しないように注意。
「サウナ室で意識が飛びそうになるのは、熱中症による熱失神の疑いがあります。そして水風呂を出てフラフラするのは、脳の血流が低下している証拠です。前者は熱いサウナ室で長時間辛抱しすぎることや水分不足、後者は15度未満の冷たすぎる水風呂に長く入ったりすることがおもな原因。いずれも間違った入り方です」
サウナは我流ではなく、他の記事で紹介している安全な入り方を遵守して楽しもう。
自律神経とアドレナリンの変化から「ととのう」を探る。

サウナ室と水風呂で交感神経が優位になり、アドレナリンが分泌される。アドレナリンの血中濃度が半分になるまでおよそ2分かかる。外気浴で副交感神経が優位になり、血中にアドレナリンが残っている状態が「ととのう」ということ。
出典/『医者が教える究極にととのうサウナ大全』(ダイヤモンド社)
メタボ気味の人ほどサウナーになるべきだ。
健康診断でC判定(要経過観察)がちらほら出てくる40代以降のメタボ世代は、食事や運動といった生活習慣の見直しに加えてサウナをプラスするのが吉。
メタボとは、動脈が硬く詰まりやすくなる動脈硬化の危険因子。動脈硬化を放っておくと、心筋梗塞などの心臓病や脳卒中が起こりやすい。その点、サウナに継続的に入っていると血管が柔らかくなり、心筋梗塞のリスクが半分以下になるという研究がある。
メタボのなかでも動脈硬化を悪化させやすいのが、高血圧。その予防には何より減塩すべきだが、塩分はなかなか減らしにくい。
「ところが、サウナで汗をかくと溜まった塩分が一緒に出る。日本人の大半は塩分過多で、1日3gほどの減塩が求められますが、サウナに1時間入るとちょうど3g前後の塩分が排泄されます」
加えて血中のコレステロール値の異常も動脈硬化の引き金だが、運動だけでは下がりにくい総コレステロール値は、サウナを併用すると下がりやすくなるという。
ただし、医師により高血圧症、脂質異常症などの診断が確定しているなら話は別。サウナに入っていいか、その際の留意点などを主治医に必ず確認後に利用しよう。
サウナはマインドフルネスである。

5秒でも暇があると、反射的にスマホに目を走らせる人は多い。スマホ経由でSNSなどから絶え間なく流れ込む情報に振り回されていると、脳は休まる暇がなく、心理的な疲労が蓄積する。
食事中でもトイレ中でもスマホを手放さない人もいるけれど、サウナ中はスマホから離れられる貴重な時間。注目を奪うために巧妙に作られたアテンションエコノミーに翻弄されることなく、自らの内面にアクセスしてじっくり対話できる。
そう考えるとサウナは、過去にも未来にも惑わされず、「今ここ」に集中できるマインドフルネスそのもの。瞑想やヨガと同じように心が穏やかになり、ストレスが軽くなってくる。
なかでもサウナを推奨したいのは、情報処理能力に優れており、複数のタスクを同時に難なくこなせるいわゆる“シゴデキ”タイプ。
「シゴデキの多くは、無意識に外部の情報ばかり重視する“外部志向的思考(EOT)”に陥りやすい。すると、肝心の自分の感情に向き合えず、対人関係に支障をきたす“アレキシサイミア(失感情症)”を招きやすい。アレキシサイミアは8人に1人以上いるとされます。サウナで自身と静かに向き合う時間は、アレキシサイミアのリセットにも有益でしょう」
トレーニングにも上手に活用できる。
ジムにサウナが併設されている場合もある。そんなところでは、運動前後にサウナを積極的に活用すると、ジムライフがより充実する(ちなみに加藤先生もジムのサウナを日々活用しているとか)。
運動前のサウナはウォーミングアップの代わりになる。筋肉は温度(筋温)が高い方が働きやすいから、サウナで筋温を上げてからだと運動はスムーズに行える。
運動後のサウナは、疲れたカラダをケアしてくれる。第1に、前述のように生じたHSPが疲労回復を促す。第2に、筋肉の血流が盛んとなり、疲労の原因物質が押し流される。リカバリーに欠かせない酸素の供給も増えるから、疲れは一層軽くなりやすいのだ。
サウナが習慣になると、体力アップにつながる可能性もある。
サウナ室では心拍数は安静時の2倍程度になり、血液を押し出す心臓のポンプ機能が70%ほど上がるという報告がある。全身持久力(スタミナ)を左右する“心肺”機能のうち、“心”=心臓の働きがアップすると期待できるのだ。
また、猛暑を控えた5〜6月にサウナで汗をかいておくと、汗腺の機能が活性化するなどして、カラダが暑さに慣れる「暑熱順化」が促される。それは夏場の運動時などの熱中症予防に役立つ。
サウナ浴の回数と汗のかきやすさ

90度、相対湿度5〜15%のサウナを15分×3セット行った場合の変化。5回までは発汗量が右肩上がりになることがわかる。その後は汗をかく量も落ち着いてくる。
出典/Isotopes Environ Health Stud. 2015; 51(3)439-47
サウナの都市伝説Q&A
サウナで減量できるってホント?

サウナで痩せられるというのは、悪しき都市伝説。そもそも太っているのは、無駄な体脂肪が溜まりすぎた結果。サウナ中は汗をドバドバかくが、決して体脂肪が燃えているわけではない。
サウナ後の計測で体重が減っているとしたら、それは汗をかいて脱水しているだけ。水分を摂れば体重も元通りだ。
「それを嫌がり、水分補給を怠ると脱水を起こして危険。海外のボクシング協会には、サウナで減量した選手を失格と定めているところもあります」。
ただ体脂肪で太っているわけではなく、余計な水分でむくみ太って見えていることに不満がある人は、サウナで血流を促して余分な水分を出せば、不満解消につながる。
サウナでデトックスできるの?

サウナでたっぷり汗をかくと爽快だから、毒素や老廃物が排泄されてデトックスされたような気分になる。でも、汗とともに出るのは余分な塩分くらいのものであり、重金属のようないわゆる毒素や老廃物が放出されるわけではない。気分の話と現実はしっかり分けて考えるべきだ。
美容界隈では、デトックス説と似た話で「毛穴から汗が噴き出す」とか「毛穴に詰まった皮脂が溶け出す」といった俗説もある。本当だったら嬉しい限りだが、どちらも真っ赤な噓。
汗が出るのは汗腺であり、毛穴ではない。また毛穴の皮脂がサウナの熱で溶けることはなく、溶けやすい皮脂はサウナに入らずとも常時溶け出しているのだ。



