教えてくれた人
大鳥精司(おおとり・せいじ)/千葉大学大学院医学研究院整形外科学教授、同大学副学長兼任。同大学医学部附属病院長。日本腰痛学会理事長。椎間板性腰痛を主題に慢性腰痛治療に関する研究に従事。脊椎手術の先駆者でもある。
8割以上が経験。腰痛はなぜ起こるのか?
日本人男性の不定愁訴のトップはもう何十年もの間、腰痛の無双状態。一生のうち8割以上の人が腰痛を経験するともいわれている。
このうち、椎間板ヘルニアなど画像診断で病名がつく腰痛は少数派。病名のつかない「非特異性腰痛」と呼ばれる慢性腰痛が多数派だ。以前は非特異性腰痛は雑に原因不明とされたが、現在は筋・筋膜性腰痛など原因の特定が可能に。
千葉大学医学部附属病院病院長の大鳥精司さんは次のように言う。
「一般的な腰痛は加齢で腰が曲がり筋肉内の緊張が高まる、筋肉量自体が減る、座りすぎの生活などの要因で起こります。脊柱起立筋や多裂筋、広背筋などの筋肉で生じる微小な炎症が腰痛の正体のひとつ。腰や背中を覆う胸腰筋膜に多く存在する神経が炎症による痛みを感知すると考えます」(大鳥さん)
こうした腰痛はある意味幸運。自助努力で改善の余地がある。

腰痛3大タイプの特徴とは?
慢性腰痛の代表的なタイプは下の3つ。腰を前に曲げるときに痛みが生じるタイプ(A)、腰を後ろに反らせたときに痛みが出るタイプ(B)、カラダを動かしたときに痛みを感じるタイプ(C)に分かれる。
「もうひとつ、加齢で脊椎が変形して腰痛が生じるタイプもありますが、こちらは非常に高齢になってから増えてくる腰痛なので今回は運動療法の効果が出やすい3つの腰痛タイプをご紹介します」
あなたが今抱えているその腰痛、3つのうち、どれに当てはまるかをまずは特定。続いて下のタイプ別エクササイズで改善を目指してほしい。
A.前屈でイタッ!のタイプ。
お尻と太腿裏の筋肉が硬くなり、骨盤が後ろに傾いた状態。骨盤の動きが悪く、前屈時に腰に大きな負担がかかる。

【痛みが出やすい動作】
しゃがみ込む/床に置いた荷物を持つ/洗面台で顔を洗う/料理をする/食器を洗う
B.後屈でイタッ!のタイプ。
骨盤や股関節の前側の筋肉が硬くなり骨盤が前傾。反り腰で腰まわりが緊張しているのでさらに反ると痛みが生じる。

【痛みが出やすい動作】
洗濯物を干す/吊り革に摑まる/高いところの物を取る/背伸びをする/踵の高い靴を履く
C.動くとイタッ!のタイプ。
腹部の深層筋が弱く、体幹の力が抜けて姿勢をキープできない状態。すべての動作の負荷が分散できず腰に集中。

【痛みが出やすい動作】
椅子から立ち上がる/ベッドから起き上がる/寝返りを打つ/階段を下りる
3つのタイプ別・腰痛対策で弱点克服。
それでは、タイプ別に弱点を克服するエクササイズを実践していこう。
前屈タイプは後方に傾きがちな骨盤をリセットし丸まった背中を伸ばして背骨の動きを取り戻す。後屈タイプは縮こまった胸郭を広げ、体幹を鍛えて腰椎の反りを改善。動くと痛いタイプはドローインで腹圧を高め、捻る動作で腹のアウターの筋肉を養う。
「画像診断ができない一般的な腰痛には残念ながら特効薬は存在しません。重篤な場合を除いた対策としては、運動療法しかないと考えてください。痛みに囚われすぎたり誰かに治してもらおうと受け身になるのではなく、自ら動いて治すという心意気が大事です」
どれも短時間で行える運動。隙間時間を使って毎日実践を。
A.前屈でイタッ!のタイプ。
骨盤を前後に傾ける(10回)

- 椅子に浅く腰掛けて両足を腰幅に開く。両腕は胸の前でクロス。

2.背すじを伸ばして骨盤を起こした姿勢から、お尻全体を椅子の座面に押し付けるようにしながら背中を丸め、骨盤を後傾させる。これを交互に繰り返し。
胸を開閉させる(左右各10回)

- 床に横向きに寝る。タオルを頭の下に敷いて頭の位置を固定。両腕を揃えて前に伸ばし、両脚は揃えて膝を曲げる。

2.そのまま片手を天井から逆サイドに向かって弧を描くように開いて上体を捻り、胸を大きく開く。逆も。
背骨の曲げ伸ばし(10回)

- 四つん這いの姿勢を取る。両手の掌は肩の真下、両膝は股関節の真下に来るように床につく。

2.おヘソを天井に引き上げるイメージで背中を丸めたら、次におヘソを床に近づけ、鎖骨を正面に向けるつもりで背中を反らす。
B.後屈でイタッ!のタイプ。
両手でバンザイ(10回)

- 床に仰向けになり両膝を立てる。両足は腰幅に開く。両手を下腹部の上で組む。

2.両手を組んだまま天井から頭上へと大きく弧を描くようにして引き上げる。腰と床の間に隙間ができないように注意。元に戻って繰り返し。
対角線伸ばし(左右各15秒)

- 床に四つん這いになる。両手の掌は肩の真下、両膝は股関節の真下で床につく。

2.左腕と右脚を同時にまっすぐ前後に伸ばす。このときカラダがねじれないよう腹筋にグッと力を入れる。腰が反らないよう注意。逆も。
C.動くとイタッ!のタイプ。
下腹部を凹ませる(3〜5回)

- 床に仰向けになり、両足を椅子の座面に乗せる。鼻から息を吸いながらお腹を膨らませる。このとき背中と床の間に隙間を作る。

2.口から息を吐きながらお腹を凹ませて背中を床にぴったりつける。この繰り返し。
斜め腹筋(左右各10回)

- 床に仰向けになり両膝を立てる。片手は体側から離して床につけ、姿勢を安定させる。反対側の手を真上にまっすぐ伸ばす。

2.上半身を捻りながら床から起こし、真上に上げた手を反対側の膝の外側に向かって突き出す。逆も。