春の穏やかさを感じる「桜の葉」で、カルボナーラと桜香る抹茶を。|4月のハーブ・桜の葉

桜餅に用いられる「桜の葉」のあの独特な香りは、クマリンという成分によるもの。〈ハーブスタンド〉の平野優太さんは、桜の葉からクマリンを引き出す最良の方法を研究しています。馴染みある植物も、加工によって、全く違う表情を見せるから面白い、と平野さん。身近なハーブの可能性を紐解く連載「ワンモア・ハーブ」第18回は、桜の葉について。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 提案/平野優太・北山詩織(HERBSTAND) 料理/阿部匠海

桜の葉

桜は、種類が多くあります。観賞用として一般的に知られているのは、ソメイヨシノだと思いますが、食用や香料として活用されている代表的な品種は、大島桜です。

大島桜は、伊豆大島に自生していた野生種。桜餅に使われている品種ですね。桜は今、世界中で食材としても注目されている植物のひとつですが、それは、あの特徴的な香り成分・クマリンに、誰しもが春を感じるからでしょう。

クマリンには、鎮静作用とリラックス効果があります。ただし、生のままでは、あの香りはあまり感じられません。桜餅に塩漬けにした葉を使うのもそのためで、塩の作用で細胞が破壊されることでクマリンが引き出されるんです。桜の花の塩漬け茶も美味しいのですが、僕たちは塩味ではない春のお茶を作りたいと考えました。そこで塩漬け以外の香りの引き出し方を考えて、自然界の落ち葉に着目したんです。

落ち葉は、人為的な発酵よりもはるかに複雑なプロセスを経て変化します。山に行って桜の落ち葉をバリバリ砕くと、想像通りクマリンが感じられたんです。ただし、それはよくも悪くも土っぽいニュアンスだった。ピュアなクマリンの香りを追い求めてたどり着いたのが、冷凍と解凍を順番に行い、葉の細胞を壊す方法でした。

森の落ち葉も、寒い夜には凍り、昼間の太陽で解凍されます。その工程に着想を得て、最終的には熱加工し、お茶として完成させました。

人は食用として活用しますが、実は自然界でクマリンは毒素なんです。桜は眠りについて無防備になる前に、秋に葉を落として、クマリンで自分の身を守っている。そんな植物の摂理の巧妙さに思いを馳せながら、お茶を作っています。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
桜と海老のカルボナーラ

ー材料ー

桜ペースト

桜の葉(塩漬け) 30g
油 150g

カルボナーラ(2人前)

海老 頭付き4尾
卵黄 2個
チーズ 30g
生クリーム 100g
桜ペースト 40g
塩 適量
水 茹でに使う
大島桜の乾燥葉 適量
乾麺パスタ 200g

ー作り方ー

塩漬けの桜葉を水に漬けて、軽く塩抜きをし、葉の根元の芯を取る。

オイルと攪拌して、桜ペーストを作る。今回はオリーブオイルと米油をブレンドして使用。サラダ油でも可。

チーズ、卵黄、生クリームを合わせてカルボナーラソースを作る。

フライパンで殻付きのまま海老を炒め、水を入れて煮出す。茹で上がったパスタを入れてカルボナーラソース、桜ペーストを入れて合わせる。皿に盛り付けたら、ドライの桜葉を散らして完成。

一般的にイメージする食材としての塩漬けの桜にも、やはり利点は多くあります。葉を一番いいタイミングで収穫して保存することができますし、塩漬けならではのうまみが出る。今回はそのうまみを生かすべく、豚の塩漬け・グアンチャーレの代わりに、桜の塩漬けを使ったカルボナーラを作ります。クマリンはバニラなどにも含まれる成分なので、クリーム系のものにも非常に合う。今回は色味を合わせて海老を使っていますが、入れなくても十分美味しい。卵黄は使っていますが、ベジタリアンの方でも食べられるカルボナーラです。

●「飲む」
抹茶 桜葉仕立て

―材料―(2人分)

大島桜の葉 3g
抹茶 4g
湯 約150ml

大島桜の葉に湯を注ぎ、香りが立つまで抽出する。

桜葉を抽出したお湯で、抹茶を点てる。

ローズマリーの水出し茶で抹茶を点てる方法からインスピレーションを受け、今回は桜の葉の香りを抽出したお湯で、抹茶を点てます。抹茶に限らずこの重ね茶的な手法ならば、それぞれ抽出方法が違う茶葉を合わせて楽しむことができます。いっぺんにお茶を淹れるよりも、それぞれ最適な方法、ジャストなタイミングを選ぶことができるのが、最大の利点です。大島桜はクマリンの含有量がとても多く、春らしいリッチな味わいになります。塩漬け桜葉に比べると、少し青さも残っているので、桜と同時によもぎのような風合いも感じられるかもしれません。

4月のハーブスタンドの様子

4月の富士北麓は、ようやく春の気配が感じられる季節になりました。やわらかな陽気のなかで、野草や山菜、春の花々が一斉に芽吹きはじめ、景色も少しずつ色づいてきました。