乱れた体内時計をリセット!“即起動”朝食のすすめ。

朝イチからギアを上げたいのに、カラダはスリープ状態。それ、もしかしたら原因は“体内時計のバグ”かも。乱れたリズムをリセットするカギは、朝食にあり!

編集・取材・文/川端浩湖 イラストレーション/moi.

初出『Tarzan』No.921・2026年3月12日発売

男性をサポートしてくれるバナナや鮭・パン・太陽などが周りで支えてくれている様子
教えてくれた人

柴田重信(しばた・しげのぶ)/愛国学園短期大学特任教授。早稲田大学名誉教授。広島大学医系科学研究科特命教授。薬学博士。時間栄養学、時間生物学の分野で世界的に知られる第一人者。

朝食は一日のパフォーマンスを上げる最強スイッチ。

「朝ご飯、ちゃんと食べてる?」なんて聞かれると、ちょっと耳が痛い……、そんな人もいるはず。ギリギリまで寝ていたい、食事の準備が面倒くさいなど、朝食をキャンセルしてしまう理由はさまざまだろう。しかし、時間栄養学の第一人者である柴田重信さんは「シャキッと一日を始めるために朝食はマスト」と断言する。なぜなら、朝食を抜くと調子が出ないのは気のせいではなく、体内時計がエラーを起こすからだ。

我々のカラダは、朝に目覚めて活動し、夜に休むというリズムで動いている。この生活リズムを支えているのが体内時計だ。睡眠や覚醒だけでなく、体温、血圧、ホルモン分泌、代謝といったほぼすべての生理機能はこの仕組みによってコントロールされている。その土台になっているのが、全身の細胞に備わる「時計遺伝子」。つまり、生まれたときからカラダに刻み込まれているのだ。

では、なぜ一日のスタートに朝食はマストなのか。

「朝食の重要な役割は、末梢の各臓器にある体内時計、いわゆる末梢時計に“朝”というシグナルを送ること。カラダに取り込まれた栄養素には、体内時計にスイッチを入れる働きがあるのです」

食事の刺激が末梢時計を動かすカギ。

実は体内時計は24時間仕様ではない。これ、重要なのに意外と知られていないことだ。我々の内なる時計は、約24.5時間で回っている。このわずかな時計のズレを放置せず、朝のうちにリセットすることで一日の質が変わる。

リセットには2つのルートがある。一つは「光の刺激」。目から入った太陽や照明などの光が網膜を通じて脳の視床下部にある視交叉上核に届き、そこにある「主時計」に“朝”を伝達する。この刺激は、自律神経やホルモンを介して胃や腸、肝臓、筋肉、血管、皮膚など全身に存在する「末梢時計」へも伝わっていく。

そしてもう一つが「食事の刺激」だ。こちらは視交叉上核を介さずに、「末梢時計」にダイレクトに“朝”を伝えることができる。光が“脳の朝スイッチ”なら、朝食は“全身の朝スイッチ”。両方が揃ってカラダは初めて完全な朝モードになる。朝食、侮るなかれ。

太陽の刺激と食事の刺激で体内時計を表した様子

【主時計】

脳の視交叉上核にある生体リズムの司令塔。光の刺激で朝を認識する。太陽の光が最強。大脳皮質や海馬など、視交叉上核以外の脳にある体内時計は「脳時計」と呼ばれ、末梢時計と同じ仕組みで働く。

【末梢時計】

胃、腸、肝臓、血管、皮膚などそれぞれの部位で働く現場責任者。食事の刺激で朝を認識する。

朝食を抜くと末梢時計がズレて時差ぼけ状態に。

朝食を抜くとどうなるか。体内時計への影響を裏づける研究(下図参照)を見てみよう。

体内時計は食事時刻の影響大!

朝食を抜いた時ととった時の末梢神経の影響グラフ

光は一定のもと、食事時間を遅らせるヒトを対象とした研究。メラトニンのリズムで評価した主時計は変化なし。皮下脂肪の時計遺伝子で評価した末梢時計は影響を受けた。

出典/柴田重信教授提供の資料から

まず、7時・12時・17時という理想的な時間帯〈朝食あり〉で食事を摂取。その後、一定期間を経て、12時・17時・22時という多くの人が陥りがちな時間帯〈朝食なし〉で食事を摂取した。その結果、朝食を抜いても「主時計」は動じないが、「末梢時計」は影響を受けて1〜1.5時間後退することが明らかに。

「主時計と末梢時計のリズムのズレ。この状態が“朝食時差ぼけ”です」(柴田さん)。

つまり、海外に行ったわけでもないのに、頭がすっきりしない、動きたくないなど、カラダの中は時差ぼけ状態になる。日中のパフォーマンスが上がらないワケだ。

問題はそれだけではない。

「昼と夜に食欲が増し、ドカ食いになりがちです。また、脂質を合成する遺伝子が活性化し、脂肪を溜め込みやすくなります。さらにエネルギー代謝や基礎代謝が低下し、体温も低めに。つまり、太りやすい状態になるのです」

体内時計に朝を教える目覚まし栄養素。

体内時計にスイッチを入れる代表的な栄養素と食材をピックアップ。明日からの朝食に役立てよう。

意識したい4つの栄養素。合わせ技で効果アップ。

朝食に何を食べるべきかを知っておけば、一日のパフォーマンスが変わるはず。柴田さんによると、体内時計を動かす主な栄養素は、炭水化物、タンパク質、水溶性食物繊維、魚油に含まれるDHA・EPAの4つ。

「これらの栄養素を朝食時にカラダに摂り込むことで、インスリンやインスリン様成長因子(IGF-1)が分泌され、時計遺伝子にシグナルが送られます」

単品ではなく、組み合わせて摂るとより効果的。旅館の朝食とまでは言わないが、主食+おかずを基本とする朝食を摂れば、朝モードへの切り替えは完璧だ。

炭水化物|ブドウ糖が豊富な主食を。
ご飯、パン、うどんのイラスト

〈食材例〉ご飯、パン、うどん、餅

体内時計を動かす力が強いのは、ブドウ糖を多く含む炭水化物。つまり、血糖値を上げ、インスリンが分泌されやすいものだ。健康のために避けるべきと思われがちだが、朝に限っては話が別。白いご飯はその代表格。クロワッサンよりは食パンを選びたい。

タンパク質|朝タンパクで安眠効果も。
卵、納豆、ヨーグルのイラスト

〈食材例〉卵、納豆、ヨーグルト、チーズ

卵、大豆製品、乳製品などのタンパク質を摂取すると、インスリン様成長因子(IGF-1)が分泌され、体内時計を動かす。さらに、タンパク質に含まれるトリプトファンは、夜にメラトニンに変わり睡眠の質を上げるため、体内時計を整える効果も期待できる。

水溶性食物繊維|朝に摂取するメリット大。
ゴボウ、海藻、バナナのイラスト

〈食材例〉ゴボウ、海藻、バナナ、リンゴ

水溶性食物繊維には、それ自体に体内時計をリセットする働きがある。さらに朝に摂ることで、便通改善やセカンドミール効果による血糖値の急上昇の抑制も期待できる。こうしたメリットを活かすなら、主食を麦ご飯やライ麦パン、胚芽パンにしてもいいだろう。

DHA・EPA|魚を食べるなら朝がお薦め。
ツナ缶、サバ、サケのイラスト

〈食材例〉ツナ缶、サバ、サケ

魚の油に多く含まれるDHA・EPAは生活習慣病を予防する食材として知られているが、インスリンの分泌を促して体内時計のリセットにも役立つ。なかでもマグロの魚油は効果大。朝から贅沢にマグロの刺し身もありだが、ツナ缶なら常備もできて手軽に摂れる。

忙しい人のための“即起動”朝食。

「朝食の準備をする時間がない」という人でも大丈夫。コンビニで揃う朝食で体内時計のスイッチをオンに!

和食|目覚まし栄養素を摂りやすい。
納豆ご飯とコンビニおにぎりとお味噌汁のイラスト

納豆ご飯なら準備も手間なし。炭水化物&タンパク質を組み合わせて摂取できる最適な一杯。コンビニ飯なら、4つの栄養素をまとめてカバーできるツナおにぎり&味噌汁をチョイス。

「和食の献立はご飯と味噌汁におかずを組み合わせるので、自然と目覚まし栄養素が整いやすい」と柴田さん。特に魚を摂り入れやすいのが強みだ。しかしまずは、納豆ご飯や卵かけご飯からでも十分。炭水化物とタンパク質が揃えば体内時計はきちんと動き出す。コンビニを活用するなら、おにぎりやカップ味噌汁は心強い味方だ。

洋食|タンパク質を意識して摂り入れるべし。
ツナサンドやヨーグルトバナナのイラスト

ツナサンドならDHA・EPAを無理なく摂れる。ヨーグルトでタンパク質をさらに補給。炭水化物+タンパク質が摂れるチーズトースト。水溶性食物繊維を含むバナナで後押し。

朝はパン派という人も多いが、時間を優先するあまり、パンとコーヒーだけで済ませてしまうケースも。柴田さんが薦めるのは、そこにタンパク質を足すこと。食パンにチーズを乗せる、あるいはヨーグルトを組み合わせるだけで、「炭水化物+タンパク質」のコンビが成立する。水溶性食物繊維を含むフルーツをプラスすればさらによい。

こんな成分も目覚めに効く!

【ノビレチン】柑橘類の皮が体内時計に作用。

シークワーサー、カボスなどの柑橘類に含まれるポリフェノール。朝に摂るとコルチゾールやアドレナリンの分泌が増え、体内時計に働きかけると報告されている。果肉より果皮に多く、マーマレードのように皮ごと食べると効率的。

【カフェイン】朝のコーヒーで最高の目覚めを。

コーヒー、紅茶などに含まれるカフェインは、朝に摂ると末梢時計を朝型にリセットできる。逆に夜のカフェイン摂取は体内時計を遅らせ、生活リズムの夜型化を招くことが明らかになっている。よって、コーヒーは朝がベスト!

知っておきたい!朝食Q&A。

Q.起床後、朝食のベストタイミングは?

A.起床後1時間以内を目安に。

主時計と末梢時計のズレをなくすためには、起床後1時間以内に朝食を摂るのが理想。遅くとも2時間以内には食事を済ませたい。すぐに食べられない人は、白湯を1杯。胃を温めることで食欲が湧きやすくなる。

Q.朝食による血糖変動が気になります!

A.朝食を抜く方が血糖値に悪影響。

朝はインスリンの働きが高まる時間帯。朝食で血糖値が上がっても速やかに下がりやすい。一方で、朝食を抜くと次の食事で血糖値が急上昇しやすいデータも。血糖値が気になる人ほど、むしろ朝食を抜かないことが大切だ。

Q.朝・昼・晩の理想の食事配分は?

A.朝3:昼3:夜3+間食1が理想。

一日の食事量の配分は、「3:3:3」+間食1が理想的。だが現実は、朝2:昼3:夜4+間食1と夜に偏りがちだ。3食を均等にするためには、夜の炭水化物をちょっと我慢して半分減らし、その分を朝食に回そう。

Q.朝食に菓子パン&ケーキはアリ?

A.朝食習慣の入り口になればOK。

甘い菓子パンやケーキも、毎日でなければ“あり”。何も食べないより、朝食を摂るきっかけになるほうが大切だ。ただし糖質や脂質が過剰になりやすい点には注意。習慣になってきたら、少しずつ内容を整えていきたい。

Q.朝食抜きをそろそろ卒業したい!

A.カフェオレ1杯から始めよう。

「食べる」のが難しい朝は、「飲む」という選択も。コーヒーに牛乳と砂糖を加えてカフェオレにすれば、炭水化物+タンパク質+カフェインが揃う。バナナスムージーやゼリー飲料などを摂り入れるのも一案だ。