12月のハーブ_モミ|ワンモア・ハーブvol.2

「日々の暮らしの中に、もっと気軽にハーブを取り入れてほしい」と〈ハーブスタンド〉の平野優太さんは言います。身近にある草木も使い方を知れば、見方が変わるはず。平野さんに季節のハーブとその使い方を訊く連載の第二回はクリスマスツリーのイメージの強いモミについて。

取材・文/村岡俊也 撮影/ナタリー・カンタクーゾ 料理/阿部匠海(Stage)

モミ

私たちは普段、富士吉田の森で、密集した木々を枝打ちや剪定を兼ねて収穫しています。さらに地元の林業組合が山林管理のために間伐をして、ゴミとなってしまう枝葉を引き取って、資源として活用する事もあります。間伐で森に光が入り、新たに木々が芽吹く。今回のモミも、その循環の一部として収穫されたもの。

日本各地、特に寒い地域に自生しているモミですが、北欧では食材として活用する文化があります。燃やしたり燻したりして、お肉などの食材への香り漬けなどに使います。モミのお茶がスーパーで売っていたり、デンマークのレストランでもモミなどの針葉樹の新芽はお料理によく活用されているそうです。フランスにはモミの新芽を漬け込んだサパンというリキュールがあったり。

モミと略称される物の中にはウラジロモミやトウヒなど品種もいくつかあり、柑橘香以外にパッションフルーツなどトロピカルな香りをもつ品種もあり、それぞれ香りの個性も違います。

こんなふうに使ってみるのはどう?

●「食べる」
モミとグレープフルーツのティラミス

―材料―

モミシロップ
・水200g
・砂糖(好みの物)100g

・モミの葉50g

ティラミス
・グレープフルーツ1
・モミシロップ100g
・クリームチーズ100g
・モミシロップ30g
・生クリーム200g
・砂糖20g
・粉糖(適量)
・乾燥モミの葉
・スポンジ 

ボールに生クリームに砂糖を入れて八分立てにホイップする。別のボールでクリームチーズにモミシロップを加え、ゴムベラで滑らかになるまで混ぜる。ふたつを合わせたベースクリームを作っておく。

1.モミシロップを作る。水、モミの葉を鍋に入れて沸騰させ、極弱火にして5分ほど。火を止めて砂糖を溶かして、茶漉しで葉を取り除いて冷やす。そのモミシロップにグレープフルーツを漬けておく。

2.器の形に切り取ったスポンジにモミシロップを染み込ませる。

3.器の底にスポンジを敷く。

4.漬けたグレープフルーツを並べる。

5.ベースクリームの順に重ねていく。

6.乾燥モミの葉をミキサーでパウダー状にし、同量の粉糖を混ぜたモミパウダーを振りかける。完成。

モミは柑橘系、特にグレープフルーツと非常に香りの相性が良く、生クリームなど乳製品とも相性がいいです。モミシロップさえ作っておけばティラミス以外にも、様々なお菓子に応用を効かせる事ができます。

ティラミスは市販のスポンジを使えば手軽に作れます。モミを使う事で普段のティラミスとはまったく違い一口食べると口腔内が森林浴をしているような感覚になると思います。12月、クリマス・ケーキとしても最適です。

●「使う」
お香

―材料―
・ドライにしたモミ10g
・タブ粉(針葉樹の脂でも代用可能)

1.ドライにしたモミの葉を枝から外す。手でこそぐように。

2.すり鉢などで粉状にする。

3.少しずつ集めた松脂を入れて固める。つなぎとして、タブの木の樹皮を粉末状にしたタブ粉でも代用できる。

4.ほんの少し水を混ぜる。

5.手で三角錐に成形し、乾いたら完成。

植物は燃やすと同じような印象になりがちですが、モミのお香はシングルオリジンでも、穏やかですが特徴ある香りが広がります。まるで森の中にいるような鎮静作用が感じられるはず。

防虫、消臭効果もあるので、空間を浄化したい時に、例えばセージと同じようなニュアンスで使ってもいい。100%植物オンリーで、人工的な香りに敏感な人でも大丈夫。レストランではお香はタブーとされていますが、モミならば自然で素朴な香りなので違和感なく、使われていたりします。まさしく、森を感じる素材です。

12月のハーブスタンドの様子

例年に比べて長い秋キノコのシーズンがいよいよ冬がやってきました。常緑は 葉を落として森は静けさを増しますが、冬芽を出す植物もいて、生命感が失われることはありません。