歯が痛い、欠けた、詰め物が取れた!こんな時はどうするのが正解?

時と場所を選ばずに、突然やってくる歯のトラブル。ズキズキ痛い、腫れるなど不安や心配は尽きないもの。そんなトラブルのさまざまな原因と対策を知って、恐れず正しく対応しよう。

編集・取材・文/オカモトノブコ イラストレーション/ハザマチヒロ 取材協力/倉治ななえ(テクノポートデンタルクリニック院長)

初出『Tarzan』No.913・2025年10月23日発売

歯のSOS
教えてくれた人

倉治ななえ(くらじ・ななえ)/テクノポートデンタルクリニック院長 。日本歯科大学客員教授、日本フィンランドむし歯予防研究会副会長などを兼任。歯科先進治療と併せてフィンランドで予防歯科研修も継続的に行う。著書に『図解 むし歯・歯周病の最新知識と予防法』など。

突然の激痛が…考えられる原因は?

ズキズキと響くような、ツラ〜い歯の痛み。こうした痛みはそもそも、1.神経の痛み、2.歯周組織の痛み、3.歯根膜の痛みのいずれかに起因する。そして、いわば真空カプセルのように密閉状態にある組織の中で炎症が起きて硫化水素などのガスが発生したり、微細な毛細血管が膨れ上がって痛みが発生するのだ。

始まりはちょっとした違和感や鈍痛だったとしても、慢性の症状がある日を境に急性化し、突然の激痛に襲われるケースも多い。そうなる前に歯科医院によるX線などの専門的な検査を受けて、早めの対処を心がけよう。

歯髄炎(しずいえん)|歯の痛みレベルはナンバーワン。むし歯の進行が神経を死滅させる。

原因は、放置したむし歯が主な原因。むし歯を進行させる細菌が歯の神経(歯髄)に直接触れることで急性の炎症を引き起こし、夜も眠れないほどの激痛となる。

何とか根性で乗り切って痛みが消えたとしても、それは神経が壊死した証拠。感染した細菌はそのまま歯髄に停滞し、さらに放置すると慢性の「根尖性歯周炎」に移行していく。

治療と対策は、いったん死滅した歯髄が回復・再生することはなく、神経を取り除いて根管を密閉する治療が行われる。とはいえ神経を取った歯は構造的に脆く、寿命も短くなるため、むし歯はできるだけ早期に治療するのが鉄則。

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)|細菌が歯根の先へと広がって周辺組織に炎症を引き起こす。

原因は、歯髄内の細菌が歯の先端(根尖)から逸脱し、歯周組織に炎症が広がった状態。最も一般的な原因は、むし歯の放置により壊死した歯髄で増殖した細菌による炎症。

また、過去の根管治療(神経を取り除く処置)が不十分で細菌が残っていたり、何らかの理由で根管内に細菌が増殖するなどで、時間が経って症状が表れる場合もある。

炎症が急性化すると歯茎が腫れ、膿が溜まって痛みを生じたり、さらに膿が顎の骨を伝って顔面や副鼻腔へ炎症が広がり、重症化するケースも。

治療と対策は、神経(歯髄)を完全に取り除き、根管内を洗浄・消毒して密閉する根管治療を行うのが基本。改善しない場合は、歯茎を切開して感染した組織を除去する外科的処置も検討される。

歯茎の腫れ|炎症を抑えつつ、免疫力を高める生活が再発予防のカギに。

原因は、歯茎が腫れる根本的な原因は、むし歯と歯周病の大きく2つ。死滅した歯髄から炎症が広がって歯茎が腫れるのは上記の「根尖性歯周炎」で説明した通り。さらに慢性の歯周病が急性化した炎症に加え、両者が合体したケースも見られる。

治療と対策は、炎症を抑える治療では抗生剤や消炎剤を服用するほか、化膿がひどい場合は切開して膿を出す処置を行う。予後はむし歯や歯周病の原因となるプラーク対策を徹底的に。

また再発予防には、免疫力の向上が不可欠。痛みが落ち着いている場合は入浴などで血流改善とリラックスを心がけ、栄養バランスの取れた食生活もマストに。

肉や魚、大豆などのタンパク食材は健康な歯周組織を作る。歯根膜を構成するコラーゲンが豊富な鶏手羽は特におすすめだ。カルシウムの吸収を高めて歯を丈夫にするビタミンDはきのこ類に、ビタミンKは小松菜など青菜に多い。イチゴなどの果物にはビタミン類のほか、歯にいい天然の甘味料キシリトールも含まれる。

歯根膜炎(しこんまくえん)|感覚センサーの歯根膜に炎症が起きて痛みが発生。

歯と骨をつなぐ薄い膜組織に炎症が生じる歯根膜炎。むし歯菌や歯周病菌による細菌感染の場合は、抗生剤の服用などで炎症を鎮める処置が取られる。

また歯根膜は、嚙むときに歯を支えるクッションの役割を果たし、感覚受容器として歯応えを感じる敏感な部分でもある。以下のような物理的要因で血流が悪化して貧血状態になり、炎症や痛みが生じるケースも多い。

歯根膜炎になりやすい原因

1.食いしばり|歯に強い力が加わって歯根膜の血流が悪化。

マウスピースのイラスト

食いしばりのリスクから歯と歯根膜を守るためにもマウスピースはマスト。筋肉の硬直も要因となる(対処法は下記も参照)。

日常的に食いしばりや歯ぎしりがあったり、嚙み合わせが不安定になって歯に強い力が加わると、毛細血管とコラーゲン線維で構成される歯根膜の血流が悪化して炎症が起きる。

これらは非感染性の歯根膜炎で最も多い原因となり、強く当たる歯は削って高さを調整するが、マウスピースなどで食いしばりによる負荷を取り除く対策も重要。

2.食べカス|歯周ポケットに蓄積した食物繊維が激痛を引き起こす。

歯間ブラシのイラスト

予防と再発防止のためには、毎食ごとのフロスや歯間ブラシの使用を推奨。歯のカーブに沿って繊維を取り除く意識を持とう。

意外なところでは、歯周ポケットに入り込んだ食べカスが蓄積して歯根膜炎になるケースもある。歯が丈夫な人に起きやすく、ブラックトライアングルと呼ばれる歯と歯の間の隙間に細かな食物繊維が歯肉の奥深くに入り込んで、突然の激痛に襲われるのだ。

治療では拡大鏡を使い、麻酔をしたうえで繊維を1本ずつ取り除いていく。

3.筋肉の硬直|歪みにより嚙み合わせがズレて歯の一部に負担をかける。

枕が高いイラスト

枕が高すぎると首や顎まわりの筋肉に負担がかかり、嚙み合わせがズレる要因に。高さは4つ折りのバスタオル程度がベスト。

高すぎる枕、寝違えや悪い姿勢でのうたた寝、過度のストレス……。実はこれらも、歯根膜炎を引き起こす要因。全身でつながる筋肉が硬直して縮こまり、嚙み合わせがズレて歯の一部に負担をかけてしまうのだ。

対策としては、考えられる要因を取り除いたうえ、とにかく筋肉を緩めてリラックスできる環境を整えることが何より重要だ。

痛みの原因が歯ではない場合も!

歯に問題がなくても、痛みを感じるケースも実はさまざま。もし歯に原因が見当たらなければ、抜いたり削ったりする前に以下も疑ってみよう。

上顎洞性歯痛(じょうがくどうせいしつう)|副鼻腔の炎症が原因となって隣接する奥歯に痛みを感じる。

上顎洞性歯痛(じょうがくどうせいしつう)

原因は、副鼻腔を構成する上顎洞の炎症(副鼻腔炎)が原因となる痛み。上顎洞は奥歯の上にあり、特に加齢で骨が薄くなると、奥歯の痛みのように感じることもある。

治療と対策は、副鼻腔炎は風邪などでも引き起こされ、この場合の治療は耳鼻咽喉科が行う。反対に歯の炎症から歯原性の副鼻腔炎(歯性上顎洞炎)を起こすこともあり、この場合は歯の治療をしないと上顎洞の痛みは治まらない。いずれにしても、治療の際は両科の連携が必須に。

顎関節症や嚙み合わせの不調|さまざまな背景を考慮して痛みのリスク要因を取り除く。

原因は、口の開けづらさや痛み、開閉時の関節音などをともなう顎関節症。嚙み合わせの不調も一因とされ、これらが相互に影響して歯に痛みが生じる場合がある。

治療と対策は、顎関節症の要因は日常習慣から精神的要因まで多岐にわたるが、口を閉じたとき上下の歯を嚙み合わせるクセも大きなリスクに。その根本的な原因となる筋肉の緊張や顎関節を歪ませるクセを取り除く必要があり、大学病院などで専門の科を受診できればベスト。

非歯原性歯痛(ひしげんせいしつう)|脳神経の誤作動で感じる痛みは歯を治療しても治らない。

原因は、歯には原因がないのに、脳神経のシナプスがいわば誤作動を起こして痛みを引き起こすもの。原因により多くの分類があるが、筋肉の痛みから来る歯痛(関連痛)、神経のどこかに障害が生じる神経障害性歯痛、頭痛が由来する神経血管性歯痛、心疾患に関連した心臓性歯痛、さらに精神疾患による歯痛などがある。

治療と対策は、原因を見極めるため、まず高度先進医療機関の受診を。そのうえで各専門科での治療が行われる。

強い衝撃を受けて歯がすぽんと抜けた。

牛乳などに浸して持参すれば元に戻せる可能性がある。

事故やケガなどの衝撃で歯がポロッと抜け落ちた……!そんなときもあきらめず、抜けた歯を歯科医院に持参すれば元に戻せる可能性がある。

ここでのポイントは、落ちた歯をタンパク質が豊富な牛乳や薬局にある生理食塩水に浸すか、なければ舌下に入れたまま、歯の根にある歯根膜の組織を生きたままの状態で持参すること。

真水につけるのは、浸透圧の関係で歯根膜が死滅してしまうためNGだ。ゴシゴシ洗ったり、紙に包むなどで乾かしてしまうのも絶対に避けよう。

歯根膜が生きている歯なら、元の場所に差し戻して1か月ほど固定すると、周囲の組織に歯根膜がつながって再生が始まる。ただし時間がたつほど再生しにくくなるため、処置を急ぐことも超重要。抜けてから30分以内であれば、元に戻せる確率はぐんと高まる。

一方で歯根の部分が折れた場合は元に戻すのが基本的に難しくなるが、まずは急ぎ歯科医に相談。自己判断であきらめないことが肝要だ。

抜けた歯を元に戻すには。

折れたを牛乳に入れるイラスト

歯根の表面を乾かさないようにするため、抜けた歯は牛乳か生理食塩水に浸して持参を。時間がたつほど付きが悪くなるので、できるだけ処置を急ごう。

プラスチックのシーネの解説図

歯を差し込んで隣の歯とつなぎ、プラスチックのシーネ(添え木)をかぶせて1か月ほど二重に固定。元の位置にくっついて完治するのは1年強ほどが目安。

歯が割れた、ヒビが入った。

進化した最新の歯科技術で歯根に入ったヒビも修復できる。

歯の外側にあるエナメル質の表面に浅いヒビが入るのは、よくあることで治療も不要。

問題は、歯に強い力が加わって歯根まで亀裂が入ること。そのまま長く放置して、原因が分かった時点で抜歯となるケースも多い。実際のところ、この「歯根破折」は歯周病とむし歯を除いて、健康な歯を失う最多の原因という報告もあるほどだ。

ただし最近では治療技術の進歩もあり、割れた歯でも修復・保存できる可能性がある。

ひとつはマイクロスコープを用いて微細なヒビを歯科用接着剤で埋めること。歯の寿命は短くなるが、歯根の状態によっては一度抜歯してから接着し、再び元に戻して固定する方法(再植法)もある。

炎症が広がったり、歯の空洞が大きすぎる場合などは、レーザー治療で破折部周辺の滅菌と免疫力の活性化を促し、歯周組織を蘇らせて歯を保存できるケースも。ただしこれらの実施施設はごく限られているため、担当の歯科医師ともよく相談してみよう。

歯根破折の接着保存治療(=再植法)。

歯根破折の接着保存治療(=再植法)

  1. 神経を取り除いたあと、歯根膜を傷つけないように抜歯。
  2. 接着剤でくっつける。歯茎の炎症、汚染物質は徹底的に除去。
  3. 取り出した歯を再び植立し、縫合して定着するまで固定する。

歯の一部が欠けた・折れた。

欠けたパーツや樹脂を使って見た目も美しく修復可能。

歯の一部が欠けたり、折れたりする「歯冠破折」。この場合も欠けた歯のパーツがある場合は、持参すれば接着して元の歯を活かせる場合がある。欠けた部分が神経に届く場合は激痛を伴うものの、神経を取り除く処置(根管治療)を行ったうえで同様に接着することが可能だ。

これが難しい場合は、歯の色に合わせた白いプラスチック樹脂で修復できる。ただし耐久性は2〜3年程度と弱く、最終的に神経を取る処置が必要となる場合も。これに対し、自費診療ではあるがセラミック粒子を樹脂で固めた高品質のレジンを用いた「ダイレクトボンディング」では、天然の歯とほぼ同程度の高い強度で美しい仕上がりが得られる。

欠けた部分は鋭く尖って周辺を傷つけたり、むし歯にもなりやすいため、いずれにせよ早めの処置が望ましい。

親知らずが痛い。

一部でも露出して痛みがあれば将来のリスクも踏まえ抜歯を検討。

親知らずの痛みの原因で、まず挙げられるのが成長過程によるもの。他の永久歯に比べて成長が遅いため隣の歯を圧迫したり、全体の歯並びに悪影響を与えたりする。ただし、これは10代後半から30歳くらいまでの間のこと。

それ以後は親知らずが完全に埋伏していれば大きな問題はないが、たとえ一部でも露出していれば、それは常に口内細菌にさらされた状態にあるということ。磨きにくい部分のため、むし歯や歯周病による炎症のリスクも高くなる。また長年、放置したまま骨がもろくなる高齢期に感染が全身へ広がり、重症化しても抜歯が困難になるケースも少なくない。そのため、もし一度でも痛くなった親知らずがあれば、40〜50代までに抜歯を検討することが勧められる。

詰め物が取れた。

歯がしみる場合は詰め物をそっと戻して早めの処置を。

餅やキャラメルなどにくっついて詰め物が取れるのはよくある話。嚙む力が強すぎる場合や、歯との隙間にできたむし歯も原因としては多い。

詰め物が取れたらこれを持参し、何はなくとも歯科医院で早めの処置を。むし歯があれば、削って新しい詰め物を作り直す治療が行われる。

もし診察までに時間が空いたとしても、自己判断で詰め物を接着するのは厳禁。また詰め物を無理に戻して食事をすると、変形して使えなくなることも多いので要注意だ。

穴が開いたままで歯がしみる場合、食べカスがあれば楊枝などで丁寧に取り除き、食事中以外はそっと詰め物を戻して過ごすのも手。また厚手のガーゼマスクがあれば、息を吸うときに空気が温まって痛みが和らぐはずだ。痛みがあるのは神経が生きている証拠なので、いずれにしても早めの受診を心がけよう。

すぐ歯医者に行けないときの痛み対策4選。

歯の痛みが発生したら、すぐ歯科医院へ直行するのが基本。とはいえ夜間や休日などで難しい場合は、こんな方法で乗り切ろう!

1.合谷のツボを押す。

合谷のツボを押す

熱を排出する作用があるといわれ、歯の痛みをやわらげることでも知られる特効ツボ。手の甲で人差し指と親指の骨が合流するところからやや人差し指寄りにある。イタ気持ちよく感じる程度の力で5〜10分程度、反対側の親指で押す。

2.カラダを温めない。

お風呂やこたつに入ると、カラダが温まって痛みが強くなる。症状が落ち着いている場合はリラックスして免疫力を高めるためにも入浴はおすすめだが、炎症がひどくてズキズキ痛む時はシャワーにとどめておこう。

3.頰を冷やす。

頰を冷やす

氷水に浸したタオルをギュッと絞って頰全体を覆い、タオルが温まるまでじんわりと冷やす。炎症がある部分は血流が局所的に悪化しているため、冷却シートなどで長時間冷やし続けるのはNG。

4.鎮痛剤を使用する。

最も一般的な痛み止めは、薬局でも市販されているロキソニン。炎症を鎮めると同時に痛みをやわらげる消炎鎮痛剤として、処方薬にも広く用いられる。痛みが強いときの頓服薬として、よりシャープに効くのはボルタレン。痛みの程度によっては座薬も選択肢となるが、いずれも処方薬のため、必ず歯科医師の指示のもとで使用のこと。