温泉を愛する著名人21人が選ぶ、至極の温泉スポット。
温泉にまつわる質問を投げかけると、十人十色の温泉地が。それもそのはず、日本のみならず世界にも多様な温泉があり、その楽しみは泉質に眺望、宿と食事などさまざまに及ぶからだ。スポーツ選手・お笑い芸人・温泉ライターなど、温泉をこよなく愛する21人に、至極の温泉についてアンケート調査を行った。
取材・文/河合萌花 イラストレーション/竹田嘉文
初出『Tarzan』No.914・2025年11月6日発売

1.放送作家・小山薫堂さん|そこに湯があるから、私は温泉に入りたくなる。
小山薫堂(こやま・くんどう)/1964年生まれ。放送作家、脚本家。映画『おくりびと』、熊本県のPRキャラクター「くまモン」など、多数の番組・プロジェクトを成功に導く。自身の提唱した「湯道」は2023年に映画化。
なぜ私が温泉に入るのかと問われれば、登山家の山登りと同じで、そこに湯があるから入るんです。
特に温泉の効果を感じるのは、湯に入った翌朝の目覚め。当然、入った日のうちに肌がスベスベになるのも感じますが、それ以上に、睡眠の深さがまるで違う。
日本には全国各地に温泉という素晴らしい入浴施設が多数あって、私はこれからも、この世界で類い稀なる生活文化を突き詰めていきたい。その精神と様式を突き詰めてゆく「道」を「湯道」と名付けました。
2.俳優・観月ありささん|景色の楽しめる時間に、その土地を存分に味わう。
観月ありさ(みづき・ありさ)/1976年生まれ。幼少期から子役モデルを始め、女優、歌手として活躍。ドラマ『週末旅の極意』では全国の温泉宿を訪れ、入浴シーンも話題に。バラエティ番組では秘湯や混浴風呂への興味も明かした。
温泉は昔から好きで、心がリフレッシュできるのはもちろん、カラダの血行促進や、美肌にとってもいいと感じます。
ひとたび温泉地に行くと、楽しみがたくさんありますよね。泉質や温泉宿の料理ももちろん、その土地ならではの自然や風土などが感じられることも魅力です。
好きな泉質は硫黄。白く濁った湯や、硫黄を感じる温泉が好きです。入浴する時間帯なら、午前中か夕方。景色が楽しめるくらいに明るい時間帯が好きですね。
3.『テルマエ・ロマエ』作者・ヤマザキマリさん|地球を体感し、“癒やし”という恩恵に与る場所。
ヤマザキマリ/1967年生まれ。漫画家・文筆家・画家。過去に温泉リポーターをしていた経験が土台となった漫画『テルマエ・ロマエ』がヒット、2010年マンガ大賞受賞。現在も『続テルマエ・ロマエ』(集英社)を連載中。
温泉がカラダに良いことは、古代時代から知られていたことです。そして個人的には、温泉に浸かっていると地球が「生きるのは大変だけれど、癒やしてあげるから頑張れ」と言ってくれている気がして。そうやって地球を体感できて、“癒やし”という恩恵に与っている気持ちになれるからこそ、温泉が大好きなのかなと感じています。
泉質は何でも好きですが、硫黄泉の匂いは特に大好き。アロマ効果があるので、硫黄の匂いのする岩塩を机の上に置いて仕事をしています。
4.市民ランナー・川内優輝さん|合宿地も転居先も「温泉」基準で選んでしまう。
川内優輝(かわうち・ゆうき)/1987年生まれ。2018年、地方公務員時代に東京マラソンで日本人トップを記録。ボストンマラソンで優勝し、19年にプロに転身。現在はあいおいニッセイ同和損害保険所属のプロランナー。
温泉に浸かっていると、心が安らぎ幸せな気持ちになります。特に冬の寒いレースや練習を終えた後の温泉は最高です。
今もきつい練習を行った後は温泉での交代浴が欠かせませんし、故障中は毎日のように入りに行くこともあります。たとえ海外遠征であっても、帰国後すぐに日帰り温泉へ行くようにしているほどです。
合宿地選びの際も、温泉があるかは重要な要素。実は結婚して転居する際にも、「近所に温泉があるかどうか?」を重視しました(笑)。
5.村上佳菜子さん|練習終わりの銭湯から、美味しいご飯の待つ温泉宿まで。
村上佳菜子(むらかみ・かなこ)/1994年生まれ、愛知県出身。2014年、四大陸選手権優勝、同年ソチ・オリンピック日本代表。引退後はプロフィギュアスケーターとしてスケートを続け、タレントや解説者としても活躍を広げる。
小さい頃から、スケートの練習終わりには家族で近所の銭湯に行くのが恒例でした。そんな思い出もあってか、私にとって温泉はすごく身近で好きな存在です。お湯に浸かると筋肉までほぐれる感覚があるし、ボディクリームがいらないくらいに肌がしっとりします。何より、温泉の宿ってご飯がとても美味しい! 豊かな自然に五感から癒やされ、せわしない日々から解放される意味でも、私にとって欠かせないリフレッシュです。
6.〈クマムシ〉長谷川俊輔さん|ストレスを洗い流し、湯上がりの最初の一杯に唸る。
長谷川俊輔(はせがわ・しゅんすけ)/1985年生まれ、埼玉県出身。2010年に佐藤大樹と〈クマムシ〉を結成。持ちネタから生まれた『あったかいんだからぁ♪』の楽曲は、第57回日本レコード大賞で特別賞を受賞した。
温泉がカラダに良いと感じるかと言えば、めちゃくちゃ感じます! 疲労が取れたり筋肉が和らいだりするのももちろんですが、僕にとってはストレス緩和が一番。自然に囲まれた景色を眺め、お湯が流れる音に耳をそばだて目をつぶるうちに、芯からホクホクの状態になる。これが究極の「あったかいんだからぁ♪」状態かもしれません。そして入浴後の食事は、いつもの何倍も美味しく感じます。最初の一杯は、やはり唸ってしまいますね。
7.〈たんぽぽ〉川村エミコさん|風呂なしアパートから始まったエミコと温泉のなれそめ。
川村エミコ(かわむら・えみこ)/1979年生まれ、神奈川県出身。白鳥久美子と〈たんぽぽ〉として活動。温泉好きが高じて資格を取得、現在は温泉ソムリエアンバサダー。湯めぐり番組『温泉タオル集め旅』(テレビ東京)にも出演中。
20代後半、風呂なしアパートに住んでいた時に銭湯に通い始め、そこから日帰り温泉に行くようになりました。温泉の周りには、その土地ごとの美味しいご飯やステキなお宿があるし温泉を愛する人たちと丸ごと触れ合える。一人で行っても思わずおしゃべりしちゃう、そんなコミュニケーションが大好きです。温泉に入った日はなぜか安心してぐっすり眠れることに気づいてからは、温泉の不思議にもハマり、温泉ソムリエの資格も取りました!
8.〈ティモンディ〉高岸宏行さん|カラダのケアに温泉は欠かせません。
高岸宏行(たかぎし・ひろゆき)/1992年生まれ、愛媛県出身。前田裕太と〈ティモンディ〉として活動する傍ら、2022年より〈栃木ゴールデンブレーブス〉に入団。野球選手としての一面も持つ。実は元熱波師。
温泉の魅力に気づいたのは、済美高校時代。当時の監督が暑熱対策や公式戦後のリカバリーとして温泉を取り入れていたことがきっかけでした。その時から「自分のカラダに合っているな」と感じていて、今に至るまでケアの一環として取り入れています。実は若い頃は新宿の〈テルマー湯〉で熱波師をしていました。シフトに入っていない日も、朝晩は必ずお湯に浸かりに行っていましたね(笑)。
ロケでお邪魔した温泉にも思い出深いところがたくさんありますし、プライベートでも温泉がある旅先を無意識で選んでいるかも。最近は練習や試合後のケアに、栃木の思川温泉に寄るのが日課です。温泉に入ると回復力が増して、「やればできる!」って気持ちが湧いてくるんです。
9.元サッカー選手・坪井慶介さん|温泉までの道のりも、街も、全てが“温泉”の一部。
坪井慶介(つぼい・けいすけ)/1979年生まれ、東京都出身。元サッカー日本代表。引退後はサッカー解説者、タレントに。温泉ソムリエの資格を持ち、公私ともさまざまな温泉へ出かける。
それぞれに個性があって、温泉に浸かるまでの道のり、浸かった後の帰り道、街の雰囲気を含めて、すべてが“温泉”の一部。日本にはロケーション含めて素晴らしい温泉地がたくさんあって楽しみが尽きません。
10.〈マヂカルラブリー〉野田クリスタルさん|「今、自分は休んでいる」と一番実感できる。
野田クリスタル(のだ・くりすたる)/1986年生まれ、神奈川県出身。村上と〈マヂカルラブリー〉を結成。2020年『R-1ぐらんぷり』優勝、同年コンビとして『M-1グランプリ』優勝。〈クリスタルジム〉発案者。
温泉はとにかくカラダに良い。特に忙しかった日々を乗り越えてからの温泉は最高で、浸かるたびに心身どちらも回復していくのを感じる。入浴中から「今、自分は休んでいる」と一番実感できる方法だ。
11.芸人・こいでまほさん|長野県出身、長野の温泉のことなら私に聞いて!
昼神温泉(長野県・下伊那郡)

温泉がこの世にあることが奇跡。こんなに気持ちよく、心地いいものって他にはないと断言できるくらい温泉が好きなんですが、昼神温泉が忘れられません。泉質や温度も含めてすべてが最高で感動しました。阿智村という場所は日本一の星空が見えるといわれていて、満天の星空と温泉を堪能できるなんて、ロマンチックすぎるし天国みたいな所です。こんなにも忘れられない温泉は他にはないです。
長野県下伊那郡阿智村智里、TEL/0265・43・3001(阿智☆昼神観光局)。施設により異なる。日帰り可能な施設あり。日帰り入浴施設〈湯ったりーな昼神〉は800円。アルカリ性単純硫黄泉。47.4℃(源泉)。
12.メガネブランドファウンダー・今泉 悠さん|温泉に入ればその土地を感じられる。
硫黄谷温泉 霧島ホテル(鹿児島県・霧島市)

とにかく広い。笑えるくらい広い浴場に、溢れるほどの湯量が圧巻です。また大浴槽の底は中央にかけて深くなっています。立ったまま浸かれる温泉も、なかなか珍しいです。自分なりの楽しみ方を見つけられる場所だと感じています。
鹿児島県霧島市牧園町高千穂3948、TEL/0995・78・2121。日帰り入浴11:00〜17:00、水曜日はメンテナンスのため内湯のみ。中学生以上1,200円。硫黄泉、明礬泉、塩類泉、鉄泉。40〜42℃。
13.旅雑誌編集者・加藤誠治さん|『まっぷるマガジン』シリーズなどを手掛けて32年。
湯宿だいいち(北海道・標津郡)

道東の原野と牧場の間をひたすら走った先にある秘湯、養老牛温泉にある。渓流沿いの野趣あふれる露天風呂、道東ならではの食材が光る料理と楽しみが多い。特別天然記念物「シマフクロウ」の姿が見られることも。
北海道標津郡中標津町養老牛518、TEL/0153・78・2131。年中無休。日帰り不可。宿泊料金は時期により変動。ナトリウム、カルシウム、塩化物硫酸塩泉。68℃。
14.イタリアンレストラン・小林秀徳さん|オーナーシェフ僕の食材探し旅のご褒美は全国の温泉。
鹿教湯温泉三水館(長野県・上田市)
草鍋最高! 秋のきのこ鍋も有名で美味しいのですが、都心で生活している我々にとっては、絶対に口にすることのできない鮮度の食材、水の清らかさに感動します。東京で食べられないものに出合えるのも温泉宿の魅力だと感じます。
長野県上田市西内1866-2、TEL/0268・44・2731。不定休、日帰り不可。2名1室利用時19,950円〜。単純温泉(低張性、弱アルカリ性、高温泉)。46℃。
15.トレーナー・神戸貴宏さん|湯に浸かる休息も、トレーニングのうち。
ほったらかし温泉(山梨県・山梨市)

〈こっちの湯〉と〈あっちの湯〉という2つの湯があります。軽く山を登ってから富士山を眺めつつ入る温泉は、絶景も相まって最高。芯まで温まって、カラダのほぐれる感覚がありました。
山梨市矢坪1669-18、TEL/0553・23・1526。日の出1時間前〜22:00(最終受け付け21:30)、年中無休。日帰りのみ、大人900円。アルカリ性単純温泉。38〜42℃。
16.文筆家・マッキー牧元さん|全国各地年間700軒を食べ歩き、浸かる。
ENOWA YUFUIN(大分県・由布院)

チベット人シェフが腕を振るう料理が絶品。ホテルを始める2年前から土地を耕し、自社畑で野菜を育てることから始めているため、特に野菜料理が抜きん出ています。宿は由布院のてっぺんにあり泉質も最高で、部屋の温泉の眼下には雲海が広がることもあり、雲海を見ながら湯に浸かれる。景色の素晴らしさには感動しっぱなし。季節による食材の違いや、デザインの異なる複数の客室など、2回目以降も楽しめる工夫に溢れています。
大分県由布市湯布院町川上丸尾544、TEL/0977・28・8310。日帰り不可。弱アルカリ性単純温泉。63.8℃。
17.旅雑誌編集者・佃 雄二郎さん|『まっぷる』編集部、温泉調査歴28年。
湯元長座(岐阜県・高山市)

奥飛騨の北アルプスの山間にあり、ロケーションが素晴らしいです。建屋の佇まいや設えも、まるで昔話に出てきそうな雰囲気。露天や内風呂、大浴場など複数あるお風呂は、どの季節に訪れても唯一無二だと感じられます。
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地786、TEL/0578・89・0099。不定休。日帰りは予約制で可(大浴場のみ)。宿泊は28,600円〜。単純泉、ナトリウム炭酸水素塩泉。49.4℃と67.7℃の源泉。
18.温泉ライター・高橋一喜さん|4000超の温泉を訪ねた湯処案内人。
栃尾又温泉(新潟県・魚沼市)

3軒の宿が寄り添うように立つ、小さな温泉地。宿泊客は3つの共同浴場を利用できます。特徴は、約35℃というぬるめの源泉が加温されずに使われていること。いわゆる「ぬる湯」ですが、1時間くらいじっくりと浸かることで、ラジウム温泉成分による効果を肌から存分に感じられ、カラダの芯までしっかり温まります。不調を抱える湯治客も多く訪れる温泉地で、温泉水を飲むこともでき、“カラダにいい温泉”だと思います。
新潟県魚沼市上折立。不定休、日帰り可(11:00〜13:00)※完全予約制(予約は公式HPより)。1泊2食付き18,370円、日帰りは1,100円。単純弱放射能泉(低張性、弱アルカリ性温泉)。約35℃。
19.温泉ジャーナリスト・植竹深雪さん|湯を巡り、湯に浸かり、湯を伝える。
壱岐リトリート 海里村上by 温故知新(長崎県・壱岐市)

温泉成分の基準値がとても高い超高濃度温泉。そのお湯の持つポテンシャルが最大限に活かせるよう、しっかり温泉が管理されているのも魅力です。また料理も抜群に美味しく、非の打ち所がないお宿です。
長崎県壱岐市勝本町立石西触119-2、TEL/0920・43・0770。無休、日帰り不可。2名1室利用時、1泊2食付き、1名当たり48,000円〜。ナトリウム塩化物泉。42℃前後(源泉69℃)。
20.芸人・コンプライアンス 小松崎さん|東京の温泉を語らせたら止まらない系芸人。
武蔵小山温泉 清水湯(東京都・品川区)

創業が大正13年と歴史のある銭湯ですが、平成19年にリニューアルをして、外観も内観も非常に綺麗。見た目は温泉旅館のような、立派な銭湯です。黒湯と黄金の湯という2種類の天然温泉があり、露天風呂も楽しめます。何より東京で550円という銭湯価格で温泉に入れるという、手軽さが最高です。さらに風呂上がりは、1階の休憩スペースでお酒を飲めます。キンキンに冷えたジョッキに自分で注いだビールをぜひ味わってほしいです!
東京都品川区小山3-9-1、 TEL/03・3781・0575。12:00〜24:00(日曜日は8:00〜24:00)、月曜日定休。日帰りのみ、550円。塩化物ナトリウム強塩温泉、重炭酸ソーダ泉。40℃。
21.温泉ビューティ研究家・石井 宏子さん|年間200日、国内外の温泉を旅する。
百年ゆ宿 旅館大沼(宮城県・大崎市)

自家源泉は赤湯と呼ばれる紅茶色の東鳴子温泉。純度の高い「ナトリウム-炭酸水素塩泉」で、植物由来のモール成分もたっぷり。肌をなめらかにととのえ、カラダの芯まで温めて、凝りや痛みを緩めて、夜はぐっすり眠れます。宿には8つの温泉があり、2種類の源泉を別々の湯船で入ることができるので、一つのお宿にいながら温泉三昧。せっかくなら宿の裏山にある貸切露天風呂まで、存分に味わってほしいです。
宮城県大崎市鳴子温泉赤湯34、TEL/0229・83・3052。水曜定休、日帰り不可。1泊12,980円〜。ナトリウム-炭酸水素塩泉。源泉温度65.2℃(湯船での利用温度は40〜42℃に調整)。





























