酒場探訪40年で培った健康ルール。太田和彦さんの肝臓ケア。

連夜盃を重ねる左党は、ただ無頓着に飲んでいるわけではない。肝腎膵を思いやり、休肝日や量、食べ方を工夫しながら酒を楽しむ。酒場探訪40年、太田和彦さんが実践する独自のケア習慣に迫る。

取材・文/松岡真子 撮影/加藤新作

初出『Tarzan』No.916・2025年12月11日発売

太田和彦_晩酌画像
Profile

太田和彦(おおた・かずひこ)/1946年生まれ。グラフィックデザイナー、作家。40歳で日本酒に開眼。各地の酒場の紀行文を執筆する居酒屋探訪のパイオニア。著書は『居酒屋百名山』『大人の居酒屋旅』(共に新潮社)など多数。

週1回のアルコール休暇で、ココロと肝臓の機嫌を取る。

太田さんのケアメソッド
  • 毎週日曜を休肝日に
  • 家飲みは“こなから”で
  • ハシゴ酒の日には漢方薬を服用

口開けどきに店に向かい、いつもの席で燗酒を静かに味わう。太田和彦さんの酒場スタイルはかれこれ40年続く。盃を傾けながら書き留める描写には、酒と肴の魅力だけでなく、その土地が育んだ歴史や文化も息づく。そんな探訪記は左党の金字塔として愛されてきた。

ただ、毎晩飲み歩くとなれば肝臓のことが気になる。どうやって健康を維持しているのだろう。

「20年ほど前から週1の休肝日を設けています。当初は2日にしていたけれど、酒が飲めないストレスで些細なことでもイライラしてしまって。それでは元も子もないので、断つのは日曜のみにしました。1日だけなら頑張れるし、空けた月曜の酒のうまいことといったら。週6で酒場を回っていたのは60代までで、79歳のいまはもっぱら自宅での晩酌が中心です」

煮穴子と小肌と日本酒の写真

今宵の肴は煮穴子950円と小肌700円。太田さんが通う荒木町の〈酒肴 タキギヤ〉は、約20種の純米酒を揃える名店だ。木枯らし吹く夜は、日本酒のコクと旨味に身を委ねたい。

太田邸の“宴”も実に興味深い。

「22時開始の2部構成。第1部は生ハムやグラタンをつまみにビール500mLを。第2部のメインはもちろん、熱燗。刺し身やキュウリの出汁醬油がけと“こなから(2合半程度の酒)”を嗜みます。昔からほろ酔いになるのに、ちょうどいい量だといわれていますしね。これを守りたくて、晩酌は遅めのスタートにしています。そうして船を漕ぐ0時半にはお開きに。もし19時からテーブルについていたら、一晩で5合は飲むはず。さすがに2日で一升瓶を空にするのは負担が大きいです。“こなから”なら4日かかるので、じっくりと違う銘柄が楽しめます。アテはほとんどがタンパク質。炭水化物は昼に食べる。一緒にじゃこをまぶしたサラダ、自家製糠漬け、お浸しと、野菜もたっぷり摂っています」

3か月に一度は検診も受ける。

「HbA1c値が少し高いので、大好きな米は茶碗半量、パスタは80gと、酒以外で糖質を減らす努力をしています。4km程度の散歩も日課です。幸いにも、肝臓の数値に異常はありません」