ついにここまで来た!テクノロジーと融合したツボ治療の最前線。
ツボ治療はここまで来た。VRが脳を刺激し、触れずに効かせる。東洋医学は、いまテクノロジーと融合する。
取材・文/井上健二 イラストレーション/mrsn 取材協力/伊藤和憲(明治国際医療大学鍼灸学部学部長・教授、鍼灸博士)
初出『Tarzan』No.919・2026年2月12日発売

教えてくれた人
伊藤和憲(いとう・かずのり)/明治国際医療大学鍼灸学部学部長・教授、同大学院鍼灸学研究科大学院研究科長・教授、附属鍼灸施設臨床部長。著書に『はじめてのトリガーポイント鍼治療』『トリガーポイントマップ』(共に医道の日本社)など。
触れていないのに効く?VRによる仮想ツボ療法の登場。

2025年の大阪・関西万博で話題を集めたのが「バーチャル鍼灸院」。VRゴーグルを着け、鍼治療を受ける場面をバーチャルで体験できる企画が好評だった。この試みは、鍼灸治療の未来を開く可能性を秘める。脳には、見たものを自らが体験したように感じるミラーリングという性質がある。
「自分と似た人が鍼灸治療を受けているシーンをVR技術などでリアルに再現できれば、実際に鍼を打たなくても、ミラーリングにより打ったときに近い効果が得られることも考えられるのです」(明治国際医療大学・伊藤和憲教授)
VRなどを駆使した仮想ツボ治療の技術が確立されれば、カラダが不自由で鍼灸院まで足を運べない人たちや、近くに鍼灸院がない過疎地などで大いに重宝されそう。
ツボの下にはセンサーがある?ピエゾレセプターで「歪み」も捉える。

皮膚には、外から加わる多様な変化を感知するためのセンサーが用意されている。なかでも2010年に発見されたのが「ピエゾレセプター」。これまで未知だった触覚の受容体であり、ツボ押しによる「歪み」を検知している。
ピエゾ(Piezo)とは、ギリシャ語で「圧迫する」という意味。押して皮膚を歪ませると反応が起こり、信号を幅広く受け取るポリモーダル受容器であるツボにもピエゾからの情報が入力される。
「新しく見つかったレセプターなので、脊髄でのゲートコントロールへの関与や脳での作用などは、これから明らかになるでしょう」
ちなみに2021年、このレセプターの発見者2人にはノーベル生理学・医学賞が贈られている。
未病をデータでつかまえる?『YOMOGI+』と『COMO』。

東洋医学で大事なのは、日々の暮らしを健康的に整える「養生」。
「養生を重視して、病気になる手前、つまり未病の段階でツボ押しなどの東洋医学を取り入れられたら、本人の自然治癒力を活かしてより効果的な治療が行えます」
そのために伊藤先生らが開発したのが2つのアプリ。患者本人が体調や食事、歩数などから自らの健康状態を把握・管理できる『YOMOGI+』と、治療院向けの電子カルテアプリ『COMO』だ。
リリースして5年が経ってデータも少しずつ蓄積し、両者をリンクさせながらディープラーニングを重ねて進化を続けている。今後はこうしたITの助けも借りながら、未病レベルでより積極的に漢方を活用する時代がやってくるのだろう。


